マンガ単行本 価格の謎
先日書店で以下の三点を見つけて、やったね、と喜んで買ってきたわけですが。
●高松美咲『スキップとローファー』7巻(2022年講談社、680円+税、amazon)
●山下和美『ツイステッド・シスターズ』2巻(2022年講談社、650円+税、amazon)
●泰三子『ハコヅメ』21巻(2022年講談社、660円+税、amazon)
いずれも楽しく読みました。が、以前から気になってたのがこの価格。この微妙な値段の違いはなんだろう。
出版関係の方にはアタリマエのことなのかもしれませんが、消費者としてはよくわからない。もちろん、でかい本は高い。ページ数が多くなると高い。装丁やデザインに凝ると高い。そして少部数の本は高くなる。こういうことはわかってますが、同時期に刊行された同じ出版社の同じB6判のマンガ単行本でこの差をつけてある理由は。
単純にページ数によるものかと思いましたが、これが違う。
『スキップとローファー』と『ツイステッド・シスターズ』を比較しますと、紙は同じものを使っているみたい。そして前者は176ページ、144グラムで680円。後者は192ページ、158グラムで650円。なんと、ページ数が多いほうが、安い。ページ単価は3.8円対3.4円。なぜかベテラン作家山下和美の方がお安くなっております。
さらに『ハコヅメ』はもっと特殊で、160ページ、169グラムで660円。これでも本の厚さは前二者と同じくらいです。触った感じでわかりますが、紙が厚い。だから本が重い。ページ単価は4.1円で格段にお高くなっています。
おそらく、もっとも発行部数が多いのは『ハコヅメ』。以下はわたしの邪推になるかもしれません。少部数の本が高くなるのは当然です。しかしベストセラーが安く設定されているわけではないらしい。むしろ、ページ単価を高く設定して、出版社は少しでも多く収入を得ようとしてるのじゃないかしら。
つまり、売れるマンガは努力しなくても売れるからページ単価を高くして出版社の収支に寄与してもらう。そうじゃない作品はページ単価を安くしてお得感を出して、販売促進につなげたい。
ちなみにわたし自身がもっともページ単価が安いと思ってるのがこれ。
●石森章太郎『サイボーグ009』1巻(1966年秋田書店サンデー・コミックス、当時220円、今は490円+税、amazon)
新書判コミックス黎明期のベストセラーにしてロングセラー。なんと今も現役、新刊で入所可能です。秋田書店すげー。この1巻は302ページで1966年の発行時に220円。当時としても納得のお値段でした。ページ単価は0.73円。新書判コミックスの発売が開始されてから、マンガのコレクター、そしてオタクが誕生したのです。
そして現在もっともページ単価の高いマンガはきっとこれです。
●エイドリアン・トミネ/長澤あかね訳『長距離漫画家の孤独』(2022年国書刊行会、4200円+税、amazon)
造本はまるきりモレスキンノートを模している凝りよう。168ページでこのお値段。ページ単価は25円となっております。
Comments