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October 30, 2016

マンガの自家コピー問題『アイアムアヒーロー』

 今のひとはあまり知らないかもしれませんが、ディズニーのアニメが、商業的にも作品的にもダメダメだった時代があります。

 長編アニメのリストを見れば、「ロビン・フッド」が1973年(日本公開はずっと遅れて1975年)、次の「ビアンカの大冒険」が1977年(日本公開はなんと1981年)です。この間、ディズニーアニメの商業的価値は地をはっていました。

 劇場公開時に「ロビン・フッド」を見に行ったわたしがいちばんあきれたのは(地方とはいえ、観客10人程度?)、同じ絵、同じ動きがくりかえし、違うシーンで出てくるところ。すでにTVアニメではあたりまえのテクニックだったのでしょうが、あのディズニーが、劇場用長編で、それをやるかー、という感想でした。

 ときは流れて2016年。花沢健吾『アイアムアヒーロー』21巻(2016年小学館、552円+税、amazon)について。

 いやもうなんだよこれは。

 同じアングルの同じ絵が、くりかえしくりかえし出てくる出てくる。本作では前巻、20巻の末あたりから頻発し始めます。

 コピー機を使用した作画上のテクニックですね。有名なのは神江里見/小池一夫『弐十手物語』で、週刊ポスト連載でしたが、連載一回ぶんに同じ絵がばんばん出てきます。

 こういう表現は、作画上の労力を減らすためになされるわけです。もちろんマンガを描く労力が、時間的経済的に見合わないために開発されたテクニックです。現代のマンガ制作においては許容される表現なのでしょう。だから制作者も編集者もこれをオッケーとしているわけで。

 ただし、わたし、これ引っかかりまくり。

 同じ絵が出てきても気にならずにどんどん読み進める読者もいるのでしょう。でも、わたしダメです。この絵はさっき見た、この絵もさっき見た。影の付け方を変えて、黒目の位置を変えても、おんなじ絵じゃんかー。

 そこが気になって気になって。まったく物語に没入できません。

 そもそもマンガというのは、19世紀にロドルフ・テプフェールが、同じ顔を複数のコマに描く、というところから始まったわけです。くりかえし同じ顔を描くことでマンガが成立しました。

 その後コピー機が発明され、赤塚不二夫がコピー機を使って『おそ松くん』の六つ子の顔を描く実験をしました。そして現在、コピー機はさらに進化して、数年前の絵ですらストックして使い回すことが可能になっています。

 マンガ表現というのはそれでいいのか、という根源的疑問以前に、すらっと読めないんだよなあ。

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Comments

更新を待っておりました。のぞゑのぶひさは手塚治虫文化賞(新生賞)を受賞した『神聖喜劇』(マンガ版)の中でわりと平然とコマのコピーをやっていて(しかもストーリー上結構重要なコマ)、最近は別作品である『敗戦悲劇』でも『神聖喜劇』で使ったコマのコピーをしていてちょっと驚きました。ぼくの場合は、『神聖喜劇』中でのコピーは気にならなかったけども、他作品にまで使うと違和感が生じます。

Posted by: 紙屋研究所 | October 31, 2016 09:54 AM

ココから更に悪い方にw
漫勉でも居直ってたし
http://togetter.com/li/220910

Posted by: 黄泉人知らず | October 31, 2016 12:59 AM

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