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June 09, 2015

通俗にしてウエルメイド『サーガ』

 エンタメ系のアメコミで、ここ数年、最も注目されてる作品がついに邦訳。

●ブライアン・K・ヴォーン/フィオナ・ステイプルズ『サーガ』1巻(椎名ゆかり訳、2015年小学館集英社プロダクション、1800円+税、amazon

サーガ1 (ShoPro Books)

 出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。けど惜しかった、本が届く四日前に、自分で買っちゃってました。さらに、すでに英語版も持ってたりするのですね。

 とまあ、それほど楽しみにしてた作品です。アメリカアマゾンでは第1巻のカスタマーレビューが500超ついてますが、この数は、フランク・ミラー/デビッド・マツケリー『バットマン:イヤーワン』と同レベル。アイズナー賞も獲ってるしベストセラーだし、やっぱ注目作でしょう。

 1巻部分のお話はいたってシンプル。宇宙最大の惑星ランドフォールには背中にハネが生えてる種族が住んでる。いっぽうその衛星には頭にツノが生えてる種族が住んでます。このふたつの勢力による戦争は、銀河全体に広がっています。

 そんな中、ハネ人の女兵士アラーナとツノ人の男兵士マルコは恋に落ちる。ふたりの間に子供が生まれるシーンがオープニングです。そこに現れる両陣営からの追っ手。新生児を連れた彼らの逃避行のゆくえは……!?

 あらまあ、なんて通俗なんでしょ。

 ならば本書が称揚される部分は何かというと、キャラクターのデザイン的および人格的造形の魅力につきます。主人公の男女は性格が男前で単純にかっこいいっす。彼らを追う賞金稼ぎの女性は、クモ(八本脚のアレです)体型であるのに、いかに色っぽくかつ凶悪であることか。

 もひとりの賞金稼ぎ(♂)は、いかにもアウトロー・ヒーローらしく、弱きを助け強きをくじくタイプ。歓楽惑星のクリーチャーたちはエロエロ。ハネ人の上位に位置する貴族階級のプリンス・ロボット四世というキャラ(頭がテレビという造形)はEDに悩んでます。主人公たちを助ける幽霊の少女は、下半身が切断されて腸が見えたりしてますが、これがまたかわいいんだ。

 1巻のラストではマルコにかつて婚約者がいたことが明かされ、アラーナの前に突然マルコの両親が現れます。ホームドラマだなあ。今後も主人公たちの逃避行アクションと並行して、愛だの恋だの家族だの、というようなお話が、ちょっとグロでエロだけどスタイリッシュな絵で描かれるはずです。

 SFとしては、宇宙の存在を脅かすような展開にはなりそうもありませんが、展開と描写がウエルメイドで楽しい。7月末には2巻が発売予定です。刮目して待て。

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