2015年アメコミ雑感
海外マンガ、とくに「スーパーヒーローもの、およびその周辺ジャンルのアメリカン・コミックス(以下アメコミと略します)」の出版点数がえらいことになってます。
現在のアメコミ出版は、主に小学館集英社プロダクションとヴィレッジブックスの二社から発売されています。本年1月には小学館集英社プロダクションから 『シン・シティ3巻』『アントマン:シーズンワン』『バットマン・インコーポレイテッド:ゴッサムの黄昏』の3冊に加えて『ミュータント・タートルズ大全』という大型本も発売。ヴィレッジブックスからは『DC:ニューフロンティア上巻』『シージ』の2冊が邦訳。
2月には『シャザム!:魔法の守護者』『クァンタム&ウッディ:世界最悪のスーパーヒーロー』『バットマン:リルゴッサム1巻』『ダークアベンジャーズ:シージ』『DC:ニューフロンティア下巻』の計5冊が邦訳出版されました。
3月も4月も発売予定が6冊。4月には30年前に発売されたちゃぶ台返しの古典、DCの『クライシス・オン・インフィニット・アース』も邦訳される予定ですし、ヴィレッジブックスから通販だけで販売されるマーベルのアメコミ邦訳も予定されていて、いやもうなんつーか、アメコミが数か月に一点しか邦訳されなかった冬の時代を覚えているかたもいらっしゃるでしょうが、隔世の感です。
邦訳アメコミは全部買う、全部読む、を続けていると、お金と時間がいくらあっても足りません。なんせ邦訳アメコミは1冊が1800円から3000円超とお高い。さらにアメコミそのものがさらっと読むことを許さない文法を持っているし、とくに日本人読者にとっては知らないキャラや過去エピソードが多すぎる。脚注や解説を読んでやっと納得できたりして、そこも含めてアメコミ読書ですが、そういう行為が楽しいか苦痛か、ここがアメコミ受容のわかれめですな。
で、アメコミ邦訳が増えてきたのには理由があって、第一はもちろんアメコミを原作とした映画が増えたこと。
映画公開やテレビ放映があるとアメコミが邦訳される、というサイクルは、これはもう歴史が示しているとおりです。今や日本でも、アイアンマンとかブラックウィドウとかラーズ・アル・グールとかいう名前が通じてしまう時代なんですから、アメコミを読んでみようというひとは少しは増えているのでしょう。
もひとつの理由は、日本の出版不況。邦訳アメコミは初版数千部で勝負しているようですが、これがけっこう堅調で、数千人のアメコミファンは高額な邦訳出版であってもそれにおつき合いしてきっちり買い続けているらしい(←わたしのことだ)。この出版不況下でも邦訳アメコミは出せばそれなりに商売になるので、途切れずに邦訳が続いているようです。これってうれしいというべきなのか。
これほどアメコミの出版点数が増えてきますと、いろんな作家に出会えて、これがたいへんうれしい。最近なら、ブルース・ティムのカートゥーン・スタイル(この場合のカートゥーンとは、アメリカの子供向けアニメーションを指してます)を踏襲したダーウィン・クックによる『ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン』と『DC:ニューフロンティア』が、ストーリーもアートもすばらしかった。これらの作品についてはまたいずれ。
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