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February 10, 2015

魔物をおいしくいただく『ダンジョン飯』

 ひねくれたファンタジーを得意とする著者の新作は、ひねくれたグルメファンタジー。

●九井諒子『ダンジョン飯(めし)』1巻(2015年KADOKAWA、620円+税、amazon

ダンジョン飯 1巻 (ビームコミックス)

 この文章を書いてる2015年2月9日現在で、アマゾンのカスタマーレビューがなんと104件。それなのに「一時的に在庫切れ、入荷時期は未定」という入手困難な大人気作品。

 初版初冊が2015年1月27日発行、わたしが書店で買った初版2冊が1月30日発行。初版あまり刷ってなかったな。というか電子書籍で買えということか。出版元も予測していなかったらしいヒットは、他に類のない新しい作品だからこそでしょう。

 舞台は地下ダンジョン。登場人物は勇者(♂)、魔法使い(♀)、鍵師=盗賊(♂)、ドワーフ=調理人(♂)の四人パーティ。つまりこれはゲーム、ウィザードリィやドラクエの世界です。オープニングで主人公たちは「リレミト」でダンジョンから地上に脱出します。

 しかし勇者の妹がドラゴンにとらわれダンジョンに取り残されてしまった。パーティは勇者の妹をとりもどすためダンジョンに再挑戦します。しかし金もなければ食料もない。そこで。

 彼らは狩った魔物を食べながら階下に進むことになります。ジビエですな。いかに魔物をおいしくいただくか。そのレシピはどうあるべきか。メニューはこういうの。

「大サソリと歩き茸の水炊き」
「人喰い植物のタルト」
「ローストバジリスク」
「マンドレイクとバジリスクのオムレツ」
「マンドレイクのかき揚げと大蝙蝠天」

 圧巻は「動く鎧のフルコース」で、

「動く鎧のドワーフ風炒め」
「動く鎧の蒸し焼き」
「動く鎧のスープ」
「焼き動く鎧」

 動く鎧なんか、からっぽのヨロイなんですから、これのどこを食べるかというすばらしいアイデア。魔物というより、未知の生物とヒトの向き合いかたを描いている。

 とはいえ、ゲテモノを食べるのはちょっとコワイ。本作でも魔法使いが魔物食いをすごくいやがってて笑えます。ゲームですから「死」の意味は軽い。「二年前に初めて死んだ」「初めての死亡だったから」とかいう表現が出てきますが、これもお気楽に読めていい感じ。

 軽い作品でありながら、底にはヒトと食の深い関係が描かれてます。さてラスボスであるはずのドラゴンはどのように料理されるのでしょうか。

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February 03, 2015

10年目のトリアッティ

 当ブログを本来のレイアウトで読まれているかたは、右のサイドバー、その上の方を見ていただくと、「特別企画:遠くから遠くまで」という記事へのリンクがあります。

 これは、白土三平『忍者武芸帳 影丸伝』の主人公・影丸の有名な言葉「われらは遠くからきた。そして、遠くまでいくのだ………」のモトネタをさがす、という主旨の記事です。2005年から2006年にかけて数回にわたって書いたもので、興味を持ったかたから多くのコメントをいただきました。

「遠くから遠くまで」は、パルミロ・トリアッティの言葉からとられたイタリア共産党のスローガンであり、複数の日本人がこの言い回しを使用していました。ただしその後のインタビューで、白土三平自身が、あれはゴーギャンの絵のタイトルを修正したもの、と証言しており、それなりのオチがついたのでありました。

 しかし1950年代の日本で、「遠くから遠くまで」は時代の気分を表現する言葉として、あちこちで使用されていたことも確かなことです。わたしとしては調べたり書いたり、いろいろとおもしろい体験をさせていただきました。

 ただひとつ、トリアッティがいつ、どこでこの言葉を言ったのか、これがつきとめられなかったのが心残りでした。

 そこへ。

 先日、長門裕介氏からメールをいただきまして、あの言葉は1947年9月26日、イタリア下院でのトリアッティの演説であると教えていただきました。おおっ。

 長門氏からは、これを報道する翌9月27日の新聞コピーも送っていただきました。

 トリアッティの演説。

Veniamo da molto lontano e andiamo molto lontano! Senza dubbio! Il nostro obiettivo è la creazione nel nostro Paese di una società di liberi e di eguali, nella quale non ci sia sfruttamento da parte di uomini su altri uomini.

 長門氏の訳によりますと、

われわれはとても遠くから来てとても遠くへと行く。間違いなく。私たちの目指すところは誰が誰に対しても一切の搾取を行わない自由で平等な社会である祖国を作ることだ。

となります。そうだそうだ、これですよ。こっちのフルバージョンこそ、影丸が言いそうな言葉じゃないですか。

 記事を書いてから10年。今になってこういうことがわかるとは。いろいろと感慨深いですねえ。ほんとうにありがとうございました。

 で、わたしもひさしぶりに「Togliatti, Veniamo」で検索してみると、あーらあっさりと「Wikiquote」の「Togliatti」のページにたどりついちゃった(イタリア語ですが)。

 このページの中ほどに、

Veniamo da molto lontano e andiamo molto lontano! Senza dubbio! Il nostro obiettivo è la creazione nel nostro Paese di una società di liberi e di eguali, nella quale non ci sia sfruttamento da parte di uomini su altri uomini. (dal discorso Per la sfiducia al IV Governo De Gasperi, Assemblea Costituente, 26 settembre 1947, in Discorsi parlamentari: 1946-1951, Camera dei deputati, 1984)

という記述があって、10年前にわたしがさがしていたことがここにさらっと書いてあるじゃないですか。「Wikiquote」はWikipediaが別バージョンとして運営しているもので、有名人の発言、有名作品からの引用、諺を集成しようとするプロジェクト。

 わたし10年前も「Togliatti, Veniamo」で一所懸命検索してたんですけどね、当時はイタリア語のサイトがぱらぱらっとヒットするだけで、欲しい情報にはどうしてもたどりつけなかったのですよ。いやーここ10年、インターネット上にはどんどん情報や知識が蓄積されてますなあ。

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