魔物をおいしくいただく『ダンジョン飯』
ひねくれたファンタジーを得意とする著者の新作は、ひねくれたグルメファンタジー。
●九井諒子『ダンジョン飯(めし)』1巻(2015年KADOKAWA、620円+税、amazon)
この文章を書いてる2015年2月9日現在で、アマゾンのカスタマーレビューがなんと104件。それなのに「一時的に在庫切れ、入荷時期は未定」という入手困難な大人気作品。
初版初冊が2015年1月27日発行、わたしが書店で買った初版2冊が1月30日発行。初版あまり刷ってなかったな。というか電子書籍で買えということか。出版元も予測していなかったらしいヒットは、他に類のない新しい作品だからこそでしょう。
舞台は地下ダンジョン。登場人物は勇者(♂)、魔法使い(♀)、鍵師=盗賊(♂)、ドワーフ=調理人(♂)の四人パーティ。つまりこれはゲーム、ウィザードリィやドラクエの世界です。オープニングで主人公たちは「リレミト」でダンジョンから地上に脱出します。
しかし勇者の妹がドラゴンにとらわれダンジョンに取り残されてしまった。パーティは勇者の妹をとりもどすためダンジョンに再挑戦します。しかし金もなければ食料もない。そこで。
彼らは狩った魔物を食べながら階下に進むことになります。ジビエですな。いかに魔物をおいしくいただくか。そのレシピはどうあるべきか。メニューはこういうの。
「大サソリと歩き茸の水炊き」
「人喰い植物のタルト」
「ローストバジリスク」
「マンドレイクとバジリスクのオムレツ」
「マンドレイクのかき揚げと大蝙蝠天」
圧巻は「動く鎧のフルコース」で、
「動く鎧のドワーフ風炒め」
「動く鎧の蒸し焼き」
「動く鎧のスープ」
「焼き動く鎧」
動く鎧なんか、からっぽのヨロイなんですから、これのどこを食べるかというすばらしいアイデア。魔物というより、未知の生物とヒトの向き合いかたを描いている。
とはいえ、ゲテモノを食べるのはちょっとコワイ。本作でも魔法使いが魔物食いをすごくいやがってて笑えます。ゲームですから「死」の意味は軽い。「二年前に初めて死んだ」「初めての死亡だったから」とかいう表現が出てきますが、これもお気楽に読めていい感じ。
軽い作品でありながら、底にはヒトと食の深い関係が描かれてます。さてラスボスであるはずのドラゴンはどのように料理されるのでしょうか。
Recent Comments