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January 09, 2015

ベルギーの韓国人『はちみつ色のユン』

 韓国の国際養子がいろいろと問題になってるとは知らなかった。

●ユング『はちみつ色のユン』(鵜野孝紀訳、2014年DU BOOKS、2800円+税、amazon

はちみつ色のユン

 出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。

 本書は、2013年の文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を授賞したアニメーション作品『はちみつ色のユン』の原作マンガ、なのですが、制作過程はもっと複雑。

 著者のユングは1960年韓国生まれの男性。五歳で養子としてベルギーの両親にひきとられ、長じてBD作家となりました。自伝マンガとして本書のうち第一章、第二章を刊行。そしてその部分をアニメーションとして制作し、自身が母国・韓国を訪れるシーンを実写として撮影。2012年ドキュメンタリー/アニメーションとして映画化しました。

 そして、韓国訪問部分をマンガの第三章として描き加え、完成させたBDが本書です。

 韓国では朝鮮戦争以来、孤児が増加し、さらに1970年代からは産業化、都市化が進み、同時に未婚の母が増加。1960年代に7000人、1970年代に4万8000人、1980年代には6万5000人の孤児が海外養子として海を渡ることになりました。

 この背景には、未婚の母に厳しい韓国社会の風土と、韓国政府の人口抑制計画があったようです。日本でも労働力が過剰であった第二次大戦前には、国策として海外移民政策がありました。韓国では第二次大戦後も「移民法」によって海外移民が奨励された時期があり、国際養子も国の監督下で公式になされたものでした。

 もちろんその後この政策は反省期にはいっていますが、統計によると2001年になっても一年で2400人の海外養子縁組がなされているとはちょっと驚いた。

 著者/主人公はストリートチルドレンであったところを警官に保護、施設に収容され、5歳でベルギーに渡ります。父母と四人兄妹の家族にひきとられた主人公は、ブリュッセル郊外に住むことに。本書の原題は『肌の色:はちみつ色』で、実際に主人公の身上書に記してあった言葉です。

 本書の第一章は主人公が13歳になるまで。幸せで不幸な子ども時代。現在でも著者自身が迷っていて総括できない。ヨーロッパに住むアジア人は、やはり異分子扱いを受けてしまいます。

 第二章はハイティーンになった主人公の青春彷徨が描かれます。知り合いの国際養子たちの自殺率は高い。記憶にない実母の面影を求めますが、母に、国に捨てられたとの想いがわきあがる。

 主人公は19歳で日本に旅行します。ただしそこからもう一歩、韓国まで脚をのばすことはありませんでした。彼が母国を訪れるのは、ドキュメンタリー撮影のため、42歳になってからです。この年月は長くかつ重い。

 第三章で主人公はやっと韓国を訪れます。しかし何かが解決するわけではなく、悩みはつきません。

 国際養子という存在、韓国の社会事情についてもベルギーの日常生活についても、知らないことばかりでいろいろと勉強になりました。

 作品としては不満なところもあって、わたしは絵にノレませんでした。頭が大きく首は細く、かなり戯画的な絵柄で、背景は描き込みをしない。わたしがBDに求めている最大のものは絵の魅力なので、そこがもひとつ。

 あと、人物が仮面をつけたり、過去の自分と対話したりする演出もちょっとね。

 ただしそういう部分をおぎなってあまりある事実の重みと、主人公の苦悩が胸をうつ作品でした。

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Comments

一方でフランスでは、緑の党の上院議員や現政権の文化大臣に、
韓国からの養子という出自の人がなっていますね。
アジア系を養子に迎える親には、
教養がありリベラルな層もいるようです。

Posted by: un_roi_seul | January 10, 2015 at 07:01 AM

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