古き革袋に新しき酒『私を連れて逃げて、お願い。』
松田洋子の新作は、犯罪に巻き込まれた若き男女がクルマで日本各地を逃げるお話の第1巻。
●松田洋子『私を連れて逃げて、お願い。』1巻(2015年エンターブレイン/KADOKAWA、640円+税、amazon)
犯罪+若き男女+クルマ+逃避行。おお懐かしや、70年代テイスト全開です。アメリカン・ニューシネマってこういうの多かったよなあ。日本の映画やTVドラマでもいっぱいマネされてたような気がします。主人公たちはたいてい「自由」を求めて「破滅」へ向かったりするわけです。
しかし本作は松田洋子作品だから、おそらくはそうはなりません。
松田作品の特徴のひとつは全員、どこがが欠落している人間ばかりが登場するところ。
本作の男性主人公は、イケメンであることを除けば何のとりえもない役者のタマゴ。頭はからっぽで、ただテレビに出ることだけが望み。一方の女主人公は、女子大にになるまで同居する祖父母の過干渉を受け入れてきた結果、自己をなくして、肥満して、自分を迎えに来る王子様を待っている。痛い。
男は強盗殺人事件に巻き込まれ、警察に追われることになりますが、家出してきた女とクルマで東に向かいます。痛いカップルがくりひろげる痛い話、
なのですが、松田作品のもうひとつの特徴、登場人物全員が饒舌なので、本作はかろうじてコメディとして踏みとどまります。
松田作品の登場人物たちは全員、自身、他者、状況について、その本質を明らかにするべく、タブーを無視してあらゆることをしゃべり続けます。これは登場人物が幼児であっても同様。『秘密の花園結社リスペクター』や『薫の秘話』『まほおつかいミミッチ』なども、すべて饒舌によってコメディとして成立しました。
『ママゴト』は、一部が欠落した人間たちが饒舌に語り合いながら家族となるお話でした。本書にも似たような構造があって、逃避行の果て、彼らはほんとうに恋人同士になれるのか。夜の海を見に行ってロマンチックな気分になるどころか、ゴミだらけでまっ黒で、いやーな気分になっちゃうのを平気で描けるから松田洋子はスゴイ。
うーん先が読めない期待作であります。











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