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December 27, 2014

年末マンガベストテン読み比べ

 毎年、年末に各誌で発表されているマンガベストテンが出そろってきました。

●『このマンガがすごい!2015』(2014年宝島社、520円+税、amazon
●『フリースタイル28 特集THE BEST MANGA 2015 このマンガを読め!』(2014年フリースタイル、888円+税、amazon
●『ダ・ヴィンチ 2015年1月号 BOOK OF THE YEAR 2014』(2014年KADOKAWA/メディアファクトリー、556円+税、amazon
●『エンタミクス 2015年2月号 コレ読んで漫画RANKING BEST 50』(2014年KADOKAWA/エンターブレイン、648円+税、amazon

このマンガがすごい! 2015 フリースタイル28 特集:THE BEST MANGA 2015 このマンガを読め! ダ・ヴィンチ 2015年 01月号 [雑誌] エンタミクス 2015年2月号 [雑誌]

 まず、ベストテンとは何なんでしょ、というところから。ベストテンは「賞」のようなモノだけど、「賞」とはちょっと違う。

 賞の選び方はいろいろです。ひとりの選者が選ぶこともあれば、数人の選者が合議で選ぶこともある。芥川賞や直木賞は合議制ですね。手塚治虫文化賞もそうか。

 ところが合議を廃し、純粋に投票だけで選ばれる賞もあって、アカデミー賞なんかその代表的存在ですね。

 いっぽうベストテンは、これはもう投票だけ。合議なんかはしない、というのが大原則でしょう。賞のほうがベストテンより権威がある、ということはなくって、映画方面では長らく、業界雑誌のベストテンである「キネマ旬報ベストテン」がもっとも権威を持っていた時代がありました。むしろ合議がないからこそ、読者から信用されたりもするわけです。

 マンガにおいては古くから小学館漫画賞、講談社漫画賞、文藝春秋漫画賞などが存在していました。しかし合議であることについての不信感は以前からささやかれていました。誰かがどこかで操作してるんじゃないのか? ベストテンが登場してくるのも当然、だったのかな。

 賞の目的は、優れた作品を顕彰することでそのメディアの進歩を促す、ことです。しかしもちろん、授賞による売り上げの増加という商業的な副産物もあります。ベストテンもこれは同様ですが、さらに読者はブックガイドとしての利用を期待している。

 じっさいにわたし、宝島社『このミステリーがすごい!』を初期からずっと買ってますが、純粋にブックガイドとして読んでます。ミステリについては全然くわしくないけどときどき読む、というタイプのわたしなどは、このミスのような本がないとちょっとつらい。

 ベストセラーを読めばいいじゃないか、といわれるかもしれませんが、ほんとのベストセラーはむしろ地雷であったりもします。マンガと違って読むのにけっこう時間がかかるミステリ小説で地雷を踏むと、立ち直れなかったりしますので。

 というわけでブックガイドという側面も見のがせないマンガの年末ベストテン、今年の傾向は。

     ◆

 まず雑誌「ダ・ヴィンチ」のベストテン。読者アンケート、さらにE-mailアンケート会員、全国書店員、ネットリサーチ会社のアンケート会員など。有効回答数が総4589通、いちジャンルにつき三作まで投票可、というシステムです。

 小説やエッセイも含まれてるので、マンガだけの投票総数は発表されてませんが、そうとうなビッグデータでしょう。

 しかしビッグデータだけあって単なる人気投票になってます。売れてる作品が上位に来るのは当然。第一位は昨年と同様『進撃の巨人』、二位が常連中の常連『ONE PIECE』ですから、驚きはありません。ブックガイドとしての実用性は限りなく低い。

 ただしマンガをまったく読まないひとにとっては、これでも役に立つのだと思います。ダ・ヴィンチでもマンガ以外のベストテンは、わたしも、へーこういうのが売れてるんだ、と勉強になりましたから。

 もうひとつのビッグデータ、「オトナファミ」改め「エンタミクス」の「全国3000店の書店員と選んだ コレ読んで漫画RANKING BEST 50」。3000店の書店員へのアンケート、三作品を選んでもらうシステム。これも投票数多い。

 一位が、昨年二位だった『七つの大罪』で、以下三位まで週刊少年ジャンプ連載作品が独占。今年に限れば、書店員、どれだけジャンプが好きなんだ、という結果です。

 ただし最大の問題点は、このランキング、昨年までは「書店員選ぶ」だったのが、今年は「書店員選ぶ」になっちゃってること。

「“2014年の良作”を全国3000点の書店員とエンタミクス編集部が選出」となってまして、つまり、編集部のアンケート結果操作が否定されていない。残念ながら信用できないベストテンはすでにベストテンではありません。

 こういうビッグデータは人気投票の意味はあっても、ちょっとそのメディアにくわしい読者にとってはもの足らない。そこで選者を少なくしたベストテン。今年の『このマンガがすごい!』オトコ編一位は『聲の形』。これは予想どおりでしたが、オンナ編の一位『ちーちゃんはちょっと足りない』には驚きました。ブックガイドはこういうふうに驚かせてくれなきゃね。

 限られた選者によるベストテンは、誰が何に投票したか、すべてわかるのがいいですね。『このマンガがすごい!』は基本五作を選ぶ方式で、選者は個人・グループなど、オトコ編が100人弱、オンナ編が70人。

 いっぽう、わたしもアンケートに参加させていただいた『フリースタイル』の「このマンガを読め!」の一位は、高野文子『ドミトリーともきんす』でした。選者49人中23人が選んでて、しかも三位以内に挙げたひとが14人もいるのですから、ぶっちぎりですね。わたしも票を入れさせていただきました。

 フリースタイルはひとり10作品を挙げる方式です。選者の平均年齢はきっとこっちのほうが高いと思います。

 ちなみにフリースタイルのほうで『聲の形』を挙げたひとは5人で12位。逆に『このマンガがすごい!』で『ドミトリーともきんす』に票を入れたひとは8人でオンナ編9位。どちらでも健闘してます。

 さて、もしこの四冊の雑誌すべてで、ベスト20あるいはベスト10にはいる作品があったとすれば、それが今年の代表作になるのかもしれない。

 というわけで調べてみましたが四つのアンケートすべてを制覇した作品はありませんでした。しかし、三つならあります。

●椿いづみ『月刊少女野崎くん』:このマンガがすごい!オンナ編5位、ダ・ヴィンチ8位、エンタミクス7位。
●大今良時『聲の形』:このマンガがすごい!オトコ編1位、フリースタイル12位、エンタミクス4位。
●ヤマザキコレ『魔法使いの嫁』:このマンガがすごい!オトコ編2位、フリースタイル11位、エンタミクス6位。
●田島列島『子供はわかってあげない』:このマンガがすごい!オトコ編3位、フリースタイル4位、エンタミクス16位。

 おお、意外にも『野崎くん』が三誌でベストテン入り。というわけで今年を代表する作品は、『月刊少女野崎くん』で決まり!?

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