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December 04, 2014

マンガ特装版という黒い罠『3月のライオン』

 マンガの単行本に「特装版」というものが始まったのはいつだったでしょう。多くはどうでもいいオマケがついていて、かつてわたし、まちがってタオルつき特装版を買ったことがありました。ええーい、くやしいったら。

 最近は特装版はもうアタリマエの存在になってしまって珍しくも何ともありません。ただし特装版のほうが早く発売され、何のオマケもついてない通常版は週遅れで発売、ってどうよと思うところはあります。

 しかしまあそれもすべては出版不況が悪いのです。少しでも付加価値をつけて何とか買ってもらおうという戦略。わたしはマンガ以外のオマケは必要としないので特装版は基本買いませんが、作家の習作とかを見かけるとすっごく惹かれちゃって、買ってしまったものもあります。

 そういうのは読者の選択なんですからしょうがないのですが、こういう特装版にはちょっと納得いかない。何かというと、羽海野チカ『3月のライオン』10巻の特装版でありますっ。

 人気マンガ作品、羽海野チカ『3月のライオン』10巻と、人気バンド「BUMP OF CHICKEN」がコラボ。

3月のライオン (10) [BUMP OF CHICKEN]CD付特装版 (ジェッツコミックス)

●コラボのサイトはコチラ

『3月のライオン』10巻特装版を買えば、「BUMP OF THE CHIKIN」のCDがついてきます。このCDには5分37秒の楽曲「ファイター」が収録されていて、ジャケットを iPhoneやアンドロイドと連動させれば、『3月のライオン』主役の桐山が登場する5分57秒のアニメーション・プロモーションビデオが見られる仕様となっています。

 このPVはなかなかいい感じ。バンプはメビウスの原画を使用したビデオをコンサートで使用したこともありましたし、なかなか目が離せない。

 とまあ、ここまでは良しとしましょう。通常版が486円+税、特装版が1296円+税。一曲CD+PVが、810円+税。ファンなら納得できる価格と考えて買うのかな。

 しかーし。

 このコラボにはもうひとつありまして、羽海野チカ『3月のライオン』スピンオフマンガというのが制作されています。

 ところがこのスピンオフマンガ、電子配信された楽曲「ファイター」を税込250円でダウンロードしたひとしか読めないのですね。しかもこれ、読めるのは2015年5月31日までの期間限定。さらに50回という回数制限あり。

 つまり。

 バンプファンは『3月のライオン』CDつき特装版を買えと。羽海野チカファンはバンプの楽曲を電子で買ってスピンオフマンガを読めと(期間限定だけど)。

 ということは、バンプと羽海野チカの両方のファンは、CDつき特装版を買った上でバンプの楽曲を電子で買ってスピンオフマンガを読めと、そういうわけですな(期間限定だけど)。これをしてしまった購買者には、手もとにはCDと電子楽曲がダブって存在することになります。

 ううーん250円とはいえ、ダブりを奨励するムダづかいだなあ。おそらく、ともに不況のマンガ業界と音楽業界がなんとか売り上げを伸ばそうとする企画だと思いますが、消費者を増やそうとするのじゃなくて、同じ購買者が支出する金額を増やそうとするのはどうよ、という話ではあります。

 マンガファンとしては、きっと『3月のライオン』スピンオフマンガは将来的に別の単行本に収録されるでしょうから、そこまで待てばいいのですけどね。

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Comments

グノシーで紹介されていたのでブログを拝見しました。
今回のこの漫画・歌手もどちらものファンです。
今回のコラボは双方の想いから生まれ、出来上がったスピンオフ漫画と楽曲です。漫画に楽曲をのせた特装版をつけたのは、漫画を読んだインスピレーションから作られた楽曲だから。この漫画のために作られた楽曲を漫画につけることはとても自然なことかと思います。
それは筆者様がご覧になったPVが物語っているはずで、今までこちらの漫画を読んでいらっしゃるのであれば上記のような文章は出来上がらないのではないでしょうか。
作者のtwitterでも細かいコラボに関する情報を発信しており、上辺だけのビジネス論をおっしゃられるのは勝手ですが、まるで両者を侮辱するような書き方をされるのはファンとして気に触ったのでコメントさせていただきました。失礼致します。

Posted by: admin | December 05, 2014 at 10:19 PM

「ネット環境にないがアナログでマンガを読んでて大ファンである」
「ネット環境にないがプレイヤーでCDを聴いてて大ファンである」
というユーザーを、「誰しもネット環境にあるのが当たり前」ではないのだということを忘れないようにしたいと思います。
もちろん、情報の発信側にも忘れないでいてほしいものです。

Posted by: 陽 | December 06, 2014 at 03:59 PM

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