« マンガの視点・人称の話:『惡の華』と『聲の形』 | Main | 傑作。だが認めん。『逢沢りく』 »

November 08, 2014

エロマンガの黄金期『美少女マンガ創世記:ぼくたちの80年代』

 80年代に活躍した美少女マンガ家たちへのインタビュー集。

●おおこしたかのぶ『美少女マンガ創世記:ぼくたちの80年代』(2014年徳間書店、1800円+税、amazon

美少女マンガ創世記: ぼくたちの80年代 (一般書)

 著者よりご恵投いただきました。ありがとうございます。じつはすでに自分で買ってましたので、居間のピアノの上に二冊が並んで積み上げてある。表紙デザインがちょっとアレなので、家族からは白い目でにらまれてます。

 とはいえ、内容がエッチなわけではなく、まじめなインタビュー集です。エロマンガの歴史に関する本といえば、塩山芳明や永山薫の著作、米沢嘉博『戦後エロマンガ史』などがあるわけですが、本書は作家や編集者の証言を通じて80年代当時の空気を伝えてくれる、貴重な資料となってます。

 登場するのは、えびはら武司、山本直樹、ものたりぬ、大島岳詩、河本ひろし、浅井裕(あさいもとゆき)、浦嶋嶺至、みやすのんき、町野変丸、りえちゃん14歳、山野一、遠山光、田沼雄一郎、新貝田鉄也郎、ダーティ・松本、中島史雄、そして「漫画ホットミルク」編集者の斎藤礼子。

 すみません、わたしがリアルタイムで読んでたかたは、このうち半分以下ですし、当時の美少女マンガ誌もよく知りません。でもすごくおもしろかった。

 このインタビューは2011年から2014年にかけてなされたものですが、インタビュイーは1950年から1969年生まれ。いやあ、みなさんオッサンだなあ、って80年代本なのだからこれはあたりまえ。みんな自分の人生をきちんと総括できてるみたい。余裕があっていい感じの受け答えで、楽しい本になってます。美少女マンガ、というのがオタク文化と切り離せないということがよくわかって勉強になりました。

 ジャンルには勃興や衰退がつきものです。エロマンガ史においては70年代の「三流劇画」ブームがあり、その後それが「美少女マンガ」に置き換わり、さらにエロマンガそのものの市場的衰退へ(←イマココ)。これには原因があるはずですが、本書ではこれを比較的クリアに説明してくれています。

 もともと幼年者を対象にしていたマンガは、読者の年齢的成長とともに市場が拡大しました。読者が青年になり、マンガは青年向けの題材を扱うようになります。そこでセックスが大きなテーマとなるのは必然。従来から存在した艶笑エロマンガが青年向けに変化し「三流劇画」ブームが起こりました。ネーミングは自嘲的な「三流」ですが、内容は先鋭的なエロでした。

 その後、劇画からポップな絵柄の美少女マンガへの大転換がおこります。のちの「萌え」に通じる美少女マンガが、エロマンガ界も席巻することになる。美少女マンガの始祖は吾妻ひでおによる「ロリコン」。著者によるとそのさきがけは、山口百恵や薬師丸ひろ子、そして石川洋司の写真集であったと。

 この世の春を謳歌していた美少女マンガでしたが、1989年の宮崎勤事件をきっかけにオタクバッシングとエロマンガ規制が強まり、1996年に成年コミックマークという自主規制が始まります。

 その結果、エロ表現はむしろ過激になり、ジャンルとしては袋小路へ入ってしまい衰退へ。というのが本書の史観ですね。美少女マンガは日本の社会、文化的背景により始まり、宮崎事件という特殊な要因で終焉に向かった。著者=インタビュアーはもと美少女マンガ誌の編集者ですから、現場の感覚としてもそのとおりだったのでしょう。

 そして作品のエロ度=露出度がアップするとジャンルとしては衰退する、というのはイタリアのエロマンガが退潮したときもいわれたことなので、なるほど、と思います。

 ただし、イタリアのそれが家庭用ビデオデッキの普及と同時期であった=「エロマンガがエロビデオに負けた」とされているのに対して、日本では逆に(1)家庭用ビデオデッキの普及、(2)オタク文化の勃興、(3)美少女マンガブーム、の三者が同時に出現したのは、なぜなんでしょう。このあたり謎だなあ。

 でもって、さらにエロ見放題のインターネットによって、日本のエロ文化とエロ産業はずたずたに破壊されたと聞きます。さて、今後日本のエロマンガは、産業としても文化としても、どうなっていくのか。

|

« マンガの視点・人称の話:『惡の華』と『聲の形』 | Main | 傑作。だが認めん。『逢沢りく』 »

Comments

初めまして、いつも楽しく読ませてもらっています。

日本で家庭用ビデオデッキの普及、オタク文化の勃興、美少女マンガが時を同じくして
出現したのは、作者や読者の多くががアニメマニアだったせいかもしれません。

宇宙戦艦ヤマトのブームで顕在化したミドルティーン以降のファンが望んでいたエロと
言うのはリアル志向ではなく、アニメーション風のキャラクターが繰り広げる痴態で
あったということではないでしょうか。

いわゆる「ロリコンブーム」というのはマンガ、アニメ、リアルが複雑に絡み合って
いるため一方のメディアだけを見ていると分かりにくいのかもしれません。

あと、ネットのエロによっていち早く息の根を絶たれたものとしては「裏本」があります。

Posted by: 哲セ | November 14, 2014 at 09:48 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/38336/60620269

Listed below are links to weblogs that reference エロマンガの黄金期『美少女マンガ創世記:ぼくたちの80年代』:

« マンガの視点・人称の話:『惡の華』と『聲の形』 | Main | 傑作。だが認めん。『逢沢りく』 »