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September 26, 2014

いつも前衛『ドミトリーともきんす』

 その出版が事件となることがあります。寡作の、しかもいつも新しい顔を見せてくれる大家の作品がそれで、日本人作家なら高野文子とか一ノ関圭とか。

 で、高野文子の新作。

●高野文子『ドミトリーともきんす』(2014年中央公論新社、1200円+税、amazon

ドミトリーともきんす (コミック)

 えー、マンガで描かれたブックガイドです。紹介される本は、科学者の書いた随筆や一般啓蒙書で、講談社学術文庫やみすず書房、ちくま学芸文庫、岩波文庫などの本です。

 ドミトリーともきんすは小さな下宿屋。自然科学を学ぶ学生たちが住んでいます。彼らは若き朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹の四人。寮母のとも子さんと彼女の娘、幼いきん子さんが、彼らと交流しながらその著作を紹介する、という趣向。

 それにしても、科学者としてビッグネームである彼らの書く文章が、なんと詩的であることか。最後のほうに湯川秀樹による「詩と科学」という文章が収録されていますが、これがすばらしい。

 そしてこの文章を紹介する最後の一編には、「くり返し模様による平面分割」が使用されています。エッシャーが得意としたアレですね。物理学者の書いた文章の紹介に数学を応用した絵を使うという超絶技法。

「ともきんす」の名は、物理学者ジョージ・ガモフの書いた一般啓蒙書「トムキンスの冒険」からとられたものです。このうちの一編をマンガ化した『球面世界』が冒頭に収録されていますが、これも直線をゆがませた曲線で描いたエッシャーの絵を思い浮かべさせる。

 ラストに収録されているのは『Tさん(東京在住)は、この夏、盆踊りが、踊りたい。』です。

 これは新津松坂流しという「踊り」を、マンガで表現した作品です。いや美的に見せるのが目的じゃなくて、これを読めば実際に身体や手足を動かして音楽に合わせて踊れるようになる、というとんでもない実験作品。学習マンガじゃなくてこれをやっちゃうんだからなあ。

 高野文子は安住しない。いつも前衛に立ってどんどん変化するからすごい。

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Comments

はじめまして

いつも読ませてもらってます。

驚くべき読書量とプロ以上の分析力にいつも感嘆しています。

さて、「ドミトリーともきんす」に関して、高野文子おそらく初めてのラジオインタビューが公開されています。

TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」ホームページのポッドキャストから聞くことができます。

もしもう知っていたなら、よけいな投稿ですみません。

Posted by: taro | November 23, 2014 at 05:24 PM

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