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July 30, 2014

ホノオモユルの本棚マンガ全チェック

 TVドラマ「アオイホノオ」おもしろいなあ。これ、わたしだけの感想じゃないみたい。うちの妻と娘は原作マンガは途中で脱落したけど、TVドラマのほうは喜んで見てます。焔燃(ホノオモユル)役の柳楽優弥くんの、眉毛と演技の濃さが気に入ったらしい。

 TVドラマが原作マンガよりも優れているところは、天才・庵野秀明によるアニメや実写作品がいかに主人公をうちのめしたか、それを映像で(コピー作品にしても)まざまざと見せてくれるところ。この部分に関しては、マンガはかないません。

 1980年前後の時代考証や細部も楽しい。まるで出崎統アニメみたいな演出とか。ちょっと違和感あるのは、あの時代、若いお姉さんはまだ茶髪にしてなかったし、ファッションは「ハマトラ」いうてやねえ…… とかいいながら見てましたら、やかましいっと家族に怒られたので、以下ブログに書くことにします。

 第一回にはホノオモユルの部屋にある本棚がちらちらと登場します。1980年ごろのマンガ家志望者の蔵書という設定。

 ひとの本棚を覗くのは楽しいものです。それはある意図を持って集められたもので、フィクションに登場する背景であっても同じこと。で、わたしが確認できた本(ただしマンガ単行本だけ)を全解説。(以下画像はテレビ画面をカメラで撮影したもの。引用のつもりです)

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●少年マガジンコミックス版『あしたのジョー』1巻~22巻。

 まず目をひくのがこれ。B5判雑誌形式の総集編『あしたのジョー』です。雑誌連載後、新書判コミックスより早く出版されたので、これで集めた人も多かったでしょう。紙が悪いので、しばらくするとインクがウラににじんでしまい長期保存には向きません。『あしたのジョー』連載終了は1973年なので、ホノオはわざわざ実家から持ってきたのか?

 ただし惜しいのが最終23巻が欠品。ホノオくんはジョーが真っ白に燃え尽きるシーンを持っていないことになります。ダメじゃん。

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●ながやす巧/松山善三『その人は昔』

 新書判ですがカラーページが多いという逸品。これも1970年代前半の作品ですね。

 続いて今はなき朝日ソノラマのサンコミックスが並んでます。

●石森章太郎『新・黒い風』1巻/全2巻
●松本零士『ミライザーバン』1・3巻/全3巻
●ジョージ秋山『ザ・ムーン』1~3巻/全6巻
●石森章太郎『闇の風』1・2巻/全2巻
●石森章太郎『ワイルドキャット』3巻/全3巻

 サンコミックスはマニアックなラインナップで人気でした。ホノオくんのマンガコレクションの特徴は、コンプリートをめざさないところ。全巻揃ってるのは『闇の風』だけ。欠けが多すぎです。途中で買うのやめても平気、どころか1巻は無視して途中の巻から買ってるし、2巻がなくて1巻と3巻だけ持ってるし。

●水島新司/花登筺『銭っ子』2~4巻/全5巻
●松本零士『スタンレーの魔女』『復讐を埋めた山』
●石森章太郎『イナズマン』2巻/全3巻
●横山光輝『鉄人28号』1巻だけ
●横山光輝『あばれ天童』1~4巻/全7巻

 大ヒット作『ドカベン』を無視して『銭っ子』を買ってるのは渋い。ただし、最初と最後が欠けてます。

 松本零士の名作、戦場まんがシリーズは、少年サンデーコミックスで全9巻。上の二冊はそのうち第1巻と第7巻にあたります。短篇集だからこういう集め方もありかもしれませんが、うーん、納得いかん。

●松本零士『銀河鉄道999』8冊

 さらに。ヒットコミックス版の『銀河鉄道999』は、左から7・8・9・10・7・10・5・6巻。おおっと、ダブリが二冊も! 貧乏学生にとってはダブリはつらいと思いますが。

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●石森章太郎『章太郎のファンタジーワールド ジュン』
●石森章太郎『サイボーグ009 その世界』
●手塚治虫作品集(2)『ジャングル大帝』

『ジュン』と『サイボーグ009』はともに朝日ソノラマから出た豪華本。さすがホノオは石森に傾倒してますね。箱入りの文民社版手塚治虫作品集は全4巻でしたが、『ジャングル大帝』だけでも手もとに! というホノオの欲望が見えるようで楽しい。ただしこのころはすでに安価な講談社全集版がフツーに入手可能でした。

 それにしてもホノオくん、アニメの設定集などはともかく、キネ旬やアラン・ドロンの写真集なんかも買ってたのね。

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●石森章太郎『ロボット刑事』全3巻
●横山光輝『鉄人28号』カバーなし、巻数見えず。
●旧講談社漫画文庫版『巨人の星』17巻まで?

『巨人の星』は1970年代に出版されてた旧の講談社漫画文庫ですね。ただしこの旧版も全19巻なので、全巻揃いかどうかちょっとあやしい。

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●永島慎二『漫画家残酷物語』

 ホノオの机の向こうに一冊だけ挟まってるのがこの本。ただしこれがちょっと謎なんですよ。

 永島慎二の名作『漫画家残酷物語』はいくつかの版が出版されてきましたが、この時代に入手可能だったのは、新書判サンコミックス版全3巻と小学館文庫版全4巻だけだったはず。これ、どっちでもなさそうなんだよなあ。どなたかわかるかたがいらっしゃれば、教えてください。

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●横山光輝『バビル二世』1巻~
●大都社「コミックヒーロー ビッグヒーロー8大全科」
●秋田書店「別冊プレイコミック ビッグまんがBOOK 帰ってきたヒーロー特集号」

「コミックヒーロー」は、季刊雑誌の形で刊行されてた古いマンガのアンソロジー。手塚治虫『火の鳥』、赤塚不二夫『天才バカボン』、松本零士『光速エスパー』などが再録されてました。

「ビッグまんがBOOK 帰ってきたヒーロー特集号」のほうは新作。雑誌プレイコミックによる「帰ってきたヒーロー」という連載企画を一冊にまとめたもの。

 終了した過去のマンガヒーローがいろいろと登場して、帰ってきた伊賀の影丸とか、帰ってきたストップ!にいちゃんとか、楽しい企画でした。目玉作品は、石森章太郎による帰ってきたサイボーグ009と松本零士の帰ってきた宇宙戦艦ヤマト。こりゃホノオは買うよなあ。

●手塚治虫『鳥人大系』
●手塚治虫『紙の砦』
●手塚治虫『日本発狂』
●聖悠紀『忍者キャプター』巻数不明/全2巻

 手塚の三冊はすべて大都社版。ホノオくん、大都社ファンです。聖悠紀『忍者キャプター』はTV特撮番組のコミカライズ。

 まあホノオが持ってる単行本は、1980年ごろのマンガというよりおおむね1970年代マンガが多いですね。もちろんホノオは、「今」のマンガは雑誌で追っかけてるわけです。

     ◆

 さて、ホノオの本棚にないものを少々。まず少女マンガが見あたらない。1980年ごろ、萩尾望都ブームは一段落してましたが大島弓子は『綿の国星』連載中。

 さらに当時はいわゆる「三流エロ劇画」がブームでした。ひとり暮らしの大学生、しかもマンガ家志望者の部屋に「エロトピア」「エロジェニカ」「大快楽」の一冊ぐらいあってもいいと思うぞ。

 そしてマンガ史的に1980年代はニュー・ウェーブの時代。舞台が関西なんだから「漫金超」は持っててもいいよなあ。そしていしいひさいちも。

 雑誌なら、オルタナティブの雄「ガロ」は彼らにとってどうだったんだろ。あとSFとマンガがすごく近かった時代なので「スターログ」も読んでたのじゃないかしら。

(この項続く)

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July 20, 2014

似顔絵アメコミ『ダークアベンジャー』

 風邪をひいて寝込んでました。そういうときには積ん読になってるスーパヒーローものアメコミ邦訳をだらだらと読むのが習慣みたいになっちゃって、熱にうかされての読書が現実とフィクションの境をあいまいにしていい感じ。

●ブライアン・マイケル・ベンディス/マイク・デオダート『ダークアベンジャーズ:アセンブル』(御代しおり訳、2014年ヴィレッジブックス、2700円+税、amazon

ダークアベンジャーズ:アセンブル (MARVEL)

 マーベルのアメコミ邦訳がどうなってるかといいますと、旧アベンジャーズ崩壊とハウス・オブ・M事件から始まる一連の(一連とはいってもいろんな事件が起こっては終わり起こっては終わり、ハンパなく長い長い)展開のウラに悪役宇宙人の関与があった! という真相が明らかになりまして、これが読者を驚愕させたわけです。いったい何年かけて伏線はってきたんだよっ。

『ニューアベンジャーズ:シークレット・インベージョン』『マイティ・アベンジャーズ:シークレット・インベージョン』の二冊でこれまでの謎解きがなされまして、これでやっと一段落。

『ダークアベンジャーズ』は新規まき直しの一冊。とはいっても、キャプテン・アメリカは死んでるし、アイアンマンは失脚しちゃったし。新生アベンジャーズを率いるのは、なんと、スパイダーマンの悪役でおなじみ、グリーンゴブリンこと、ノーマン・オズボーンです。映画にも登場してたから日本でも有名なキャラクターなんじゃないかな。

 書影中央の、アイアンマンみたいなシルエット、赤白青の星条旗カラーでふんばってるのが、ノーマン・オズボーン。集められたアベンジャーズメンバーは、ろくでなし、ビッチ、お尋ね者、食人鬼、精神を病んだヤツ、いやーおもしろいわ。

 彼らがそれなりに地球の危機に対処しようとしてるのが笑えます。

 で、本書でとくにおもしろいのが、作画担当のマイク・デオダートによる、本書の主人公ノーマン・オズボーンの造形。完全にトミー・リー・ジョーンズです。

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 日本マンガでも、ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』でトミー・リー・ジョーンズ対リー・ヴァン・クリフの似顔絵キャラ対決がありました。デオダートの絵はペイント系なのでもっと似せやすい。とはいっても、これで全編とおしてて、ちゃんとお芝居になってるんですよ。たいしたもんだ。

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 マーベルではサミュエル・L・ジャクソンがニック・フューリー役でマンガに登場したあと映画出演を果たしたことがあったりして、最近はマンガの似顔絵も肖像権的にきびしくなってるみたいですね。本作は2009年発表。トミー・リー・ジョーンズが出演した映画「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」の公開が2011年。やっぱ何か契約というかバーターがあったりして。

 でもマンガにおけるゲリラ的な似顔絵はオッケーにしてほしいなあ。歴史的にいっても、マンガってもともとそういうものなんじゃないか。かつて日本にも、嵐寛寿郎や片岡千恵蔵そっくりのキャラが活躍するマンガがあったりしました。

 本作には若き日のディカプリオそっくりのマーベルマンや、アンジェリーナ・ジョリーそっくりのロキ(なぜかこの時期、女性になってます)も登場してて、こういうのも楽しい。

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July 03, 2014

アル・フェルドスタインのテラー!ホラー!フィアー!

 今年の春にアル・フェルドスタインが88歳で亡くなったとき、日本のメディアからは完全に無視されてました。彼が30年にわたって編集していた「MAD」は、かつて日本の編集者やマンガ家も参考にしていた先鋭的な雑誌だったんだけどなー。雑誌ごとタイム・ワーナー/DCに買収されちゃった今もアメリカでは人気があるようですが、日本ではもう過去のものという扱いです。

 アメリカの大手メディアの死亡記事ではどれも、フェルドスタインが「MAD」の編集者であったことが強調されていましたが、アメリカン・コミックス史的には、フェルドスタインはEC社のビル・ゲインズとともにホラー・コミックスの大ブームを仕掛けた人物として知られてます。このブームが1954年のコミックス・コード制定の直接の引き金となり、その結果、これがコミックス規制の決定打となりました。

 つまりフェルドスタインはアメリカン・コミックスの光と影の体現者、みたいな存在。

 昨年発売された、アル・フェルドスタインの評伝があります。

●Grant Geissman『Feldstein: The Mad Life and Fantastic Art of Al Feldstein!』(2013年IDW Publising、amazon

Feldstein: The Mad Life and Fantastic Art of Al Feldstein!

 アメリカのマンガ編集者というのは、自身がマンガ家でありマンガ原作者でもあり編集者でもあり、というひとがけっこういます。マーヴェルの有名編集者スタン・リーなんかは、絵を描かない編集者件スクリプト・ライターで、絵ができたあとからセリフやキャプションを書き加えていたそうですが、ほんとか?

 いっぽうで編集者として名前は出してるけど、実際には創作にはノータッチ、みたいなひともいて、アメリカのクライム・コミックスのブームをつくったチャールズ・バイロがそうだったらしい。

 アル・フェルドスタインは、絵も描くし、お話も書くし、編集もする、というひとでした。

 本書はでっかくて分厚いフェルドスタインの評伝ですが、文章の部分より写真や図版のほうが多い、という楽しい本。フェルドスタインは1946年に20歳でマンガ家として仕事を始め、アーチー・コミックス(高校生アーチーとその仲間の恋愛騒動を描いた長寿マンガシリーズ)のパチもんやロマンス・コミックスを描いていましたが、1950年、EC社の社長ビル・ゲインズのもとでホラー・コミックスを刊行します。

 EC社の三冊のホラー雑誌はこういうタイトル。「The Crypt of Terror」(クリプトは地下霊廟のことで、「恐怖の墓所」ですな)、「The Vault of Horror」(ヴォールトとは地下納骨所のことですからこれも「恐怖の墓所」だよなー)、そして「The Haunt of Fear」(ホーントは「よく出没するところ」という意味で「恐怖の巣窟」となります)。テラー、ホラー、フィアーで、恐怖ばっかりですみません。

 三冊の雑誌にはそれぞれ、「クリプト・キーパー(墓守りですな)」「ヴォールト・キーパー(これも墓守り)」「オールド・ウィッチ(年寄りの魔法使い)」と呼ばれる、不気味な魔法使いキャラクターがいて、彼らが読者に向かって語りかけるところからお話が始まります。「世にも不思議な物語」のタモリみたいなものですね。

 本書では「MAD」以降のいわば洗練された仕事よりも、1950年代初期の雑誌や作品を多く紹介しています。この時代の恐怖コミックス、犯罪コミックス、SFコミックス(SFといっても、怪物的宇宙人と美女、みたいなやつで、書影をごらんください)はどれもキッチュでグロな作品ばっかり。けっしてうまくない絵と扇情的ストーリー。しかし一度見たら忘れられず、記憶に残るマンガです。

 本書で読むことができる「Horror Beneath the Streets!」という7ページのマンガがあります。「The Haunt of Fear」17号(1950年)掲載。

 いつものとおり、オールド・ウィッチが大釜で魔法薬を煮ながら読者に語りかけるシーンから始まります。夜の出版社、ビルとアルはやっと仕事が終わり退社することに。「モダン・ラブ、やっと校了だ!」 深夜、電灯を消した会社の廊下を歩くふたり。不気味な雰囲気の中、ビルが新しい雑誌のアイデアを思いつく。「マンガでホラーを描くのはどうだろうか」

 夜の街を歩くふたりは、誰かにつけられているの気づきます。走って逃げるふたり。追う足音。行き止まりだ! しかしマンホールのふたが開いており、ふたりは地下の下水道に逃げ込みます。

 地上の足音は笑い声と共に去り、ふたりはマンホールのふたを持ち上げようとしますが、開かない。閉じ込められた! ふたりは地下の下水道をさまようことになります。

 アルが何か柔らかいものを踏むとそれは人間の死体! 壁が割れてビルが何者かの手で引き込まれる!

 下水道で迷ったビルは「クリプト・キーパー」に出会い、いっぽうアルも「ボールト・キーパー」に出会います。ふたりはそれぞれ自分を助けてもらうのと交換に、「クリプト」「ボールト」の名前で雑誌を出す書類にサインしてしまいます。

 そして深夜の街でふたりを尾行していたのはオールド・ウィッチでした。彼も下水道からふたりを地上に出すのとひきかえに、自分の雑誌を発刊してもらうことになったのでした。

「モダン・ラブ」は実際にEC社から出版されていたロマンス・コミックス誌。ビルとアルは、ビル・ゲインズとアル・フェルドスタイン自身です。本作品はシナリオも作画もフェルドスタインによるもの。

 同じような雑誌が三冊も発行されているのはなぜか。その理由を明らかにするために描かれたという、実在の作者たちが登場する何ともおバカなマンガ。稚気あふれた作品で、作者と読者の距離が近いのがなかなかいい感じでした。

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