何かすごいような気がするんですけど『少女よ漫画の星となれ』
業界マンガで、あるあるネタ、であるのは違いないのですが。
●松山花子『少女よ漫画の星となれ』(2014年双葉社、750円+税、amazon)
えー、マンガ家マンガでフィクション、四コマギャグマンガです。書影イラスト、表紙や裏表紙にあるギャグを書いておきますと、
「パクリではありません! オマージュです!」
「ええっ デビューしたければ編集長と一夜を共にしろと!? そんな…… 簡単なことで…!?」
「少年漫画で大事なのは いかに正当な理由で人を殺しまくれるかです!!」
「大丈夫 心の傷は… ネタになる!!」
「あれっ これ(1)ってあるのに続きは出ないんですか?」
まあそんな感じ。内部から、もひとつ。
大御所少女マンガ家のアシスタントとの会話。
「先生を踏み台にデビューする予定なんですか?」
「いえ私たちは純粋に先生の作品を愛し無私の心で先生の手足となり―― いつしかそのまま先生になり代わって名声と財産を受け継いでいこうと――」
マンガ業界に関するあれこれを、タテマエを廃してホンネだけで表現すると…… というギャグですね。
あるあるネタが楽しめたのでオッケーなのですが、本ブログで取り上げたのにはわけがある。お話全体の骨格がねー、何かスゴイ、ような気がする。
両親が離婚した主人公が、片親から特殊な育て方をされる。しかも成長した環境も特殊。ハイティーンになった主人公が初めて○○に出会い、その分野で天才的な能力に目覚めます。しかし性格が天然で、自分の能力に関しても無自覚。
業界のさまざまな奇妙なひとびととの出会いがあり、波瀾万丈の展開があっての出世スゴロク。そして出生の秘密が明らかにされたりしながら、運命に流されるまま天才性を発揮して、ついに海外雄飛。
無自覚な天才の奇妙な一生。思い浮かべるのは、「フォレスト・ガンプ」のようなゲージツ系ほら吹き映画とかそのたぐいです。
本書だって松山花子の古典的絵柄だからアレですが、ギャグを廃して、キャプションを多用して、BDっぽい絵柄で描けば、ほら、何やらりっぱな大長編作品に変身しそうな気がする。ギャグマンガの骨格は最先端の物語に通じているんじゃないかと感じた次第であります。
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