若いBD『ブルーは熱い色』
夜は若く、彼女たちも若かった。
●ジュリー・マロ『ブルーは熱い色』(関澄かおる訳、2014年DU BOOKS、2200円+税、amazon)
出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。
2013年カンヌ映画祭で最高の賞となるパルムドールを受賞した映画「アデル、ブルーは熱い色」、これが2014年4月5日より日本公開されますが、本書はその原作となるBDの邦訳です。B5判よりちょっと小さい判型、カラーで150ページ超。
著者は1985年フランス生まれの女性。本書は商業出版処女作として2010年に発行されました。25歳のときの作品ということになります。アングレームでは大衆賞を受賞したそうです。ちなみに著者のブログがこちら。→http://www.juliemaroh.com/
テーマは女性どうしの同性愛です。主人公はクレモンティーヌという女性ですが、冒頭で彼女はすでに死んでいるらしい。彼女の恋人であるエマがクレモンティーヌの実家を訪れ、彼女の日記を読み始める……
日記は1994年、クレモンティーヌの15歳の誕生日から書き始められています。学校生活、ボーイフレンドとのうまくいかないセックス、そして恋人となるエマとの出会い。日記はクレモンティーヌとエマの愛と葛藤、そして友人たちや両親との軋轢を描いていきます。
絵が特別うまいわけでもなく、エピソードや構成が格段に優れているわけでもありません。しかしボーイミーツガールならぬガールミーツガールの物語を、チカラワザで描ききりました。まさに著者、そして登場人物たちの若さのたまもの。描き手が若くないと描けない作品もあるのですね。
作品も登場人物たちも未熟ながらみずみずしいなあ。わたしは大昔の虫プロ「COM」に掲載されてた日本のマンガを思い出しちゃいましたよ。
女性どうしのラブストーリーは、ふたりの世界においては男女のそれと何も変わるところがありません。しかし違うのは社会から浴びせられる視線。ふたりの物語は悲劇に終わります。
日本マンガにないBDとしての仕掛けは色の使い方。「現在」はフルカラーですが、「日記」の中の世界はモノクロ。ただし青の部分だけには色を置いている。
そしてエマは髪を青く染めていますから、彼女だけがモノクロ世界から浮きあがる。これがタイトルの意味となっています。ぜいたくな色の使い方ですねえ。
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