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February 20, 2014

ふわふわでぽかぽか『彼女のカーブ』

 ジャケ買いというか表紙買いして正解!

●ウラモトユウコ『彼女のカーブ』(2014年太田出版、952円+税、amazon

彼女のカーブ (F COMICS)

 表紙イラストが裸の女の子でいっぱい、オビには「すけべでロマンティック」と書いてあるし、連載は「マンガ・エロティクス・エフ」だし。ということで、エッチに違いないと思って買ったのですが、それほどエッチじゃなかった。でも、買ってよかった。

 短篇集です。一応、女の子のやーらかいカラダの一部を描く、というテーマがあって、オッパイとか、二の腕とか、耳たぶとか、脚とかですね。それがタイトル『彼女のカーブ』の意味です。

 恋愛がテーマというわけでもなく、基本エッチじゃありません。どの作品も一種の会話劇で、日常のちょっとした謎やすれちがいが、会話の中で解決される。銭湯で出会う少女は幽霊なのか? 兄嫁はなぜあんなにわたしをイライラさせるのか? コンタクトを落としてメガネで外出することになった少女の一日の冒険は?

 前作『椿荘101号室』は、出てくる登場人物が奇人変人ばっかりなのはいいとしても、主人公もある種の奇人なので、読んでるとちょっと疲れる作品でした。それと対照的に、本書の登場人物は比較的普通のひとが多いので、共感できる、ほっとできる作品となってます。

 絵は描き込みを廃してさらっと描いたうまい絵。誰もが感じるように高野文子に似てます、というか、トビラ絵やトーンの使い方はわざと似せてる? 

 その絵とうまいダイアログが合わさって、ふわふわっとしててぽかぽかっとした気分になれる楽しい作品集でした。

椿荘101号室(1) (エデンコミックス) (マッグガーデンコミックス EDENシリーズ)

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February 13, 2014

バレエではすべてが美しい『ポリーナ』

 邦訳された前作『塩素の味』では、叙情をみごとに表現してみせてくれたバスティアン・ヴィヴェス。彼の邦訳第二作はバレエが題材です。

●バスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』(原正人訳、2014年小学館集英社プロダクション、1800円+税、amazon

ポリーナ (ShoPro Books)

 出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。

 著者は1984年生まれの新鋭です。本書は邦訳BDにはめずらしくA5判ソフトカバー。モノクロ200ページの長編で原著は2011年の発行。

 6歳のポリーナ・ウリノフは私立のバレエ・アカデミーに入学し、師となるニキータ・ボジンスキー(書影イラストのヒゲの男性)と出会います。彼はまわりから古いと批判されていますが、信念を曲げず生徒に基礎的動作を教え続けている。生徒たちは彼を恐れています。ポリーナはボジンスキーに共感と反発を同時に感じながら、彼に師事します。そして彼女はバレエ劇場の付属学校やコンテンポラリー・バレエ団などを経て、人間としてバレリーナとして成長していく……

 お話の舞台がワールドワイドで、ポリーナが住んでるはモスクワかサンクトペテルブルクのようです。彼女が引っ越しする先はウクライナのキエフかな。その他にベルリンやパリも登場します。

 『塩素の味』でもそうでしたが、本書でも最も驚かされるのはその絵。筆とペンの併用(あるいはフォトショップ?)で、さらさらっとクロッキーふうに描いた絵です。

 描き込みとは遠く、むしろいかに省略するかを追求した絵です。とくにダンスのシーンは背景がまったく描かれていません。いや思いきったものです。絵がうまいからこそできるワザですね。

 作品は絵とセリフだけで構成され、漫符や擬音はほとんどありません。日本マンガに慣れた日本人読者にとっては静かな静かな作品です。内面描写はキャラクターの行動と表情とセリフ、そして風景描写によってなされます。「心の声」やキャプションが廃されているのが新鮮。

 邦訳はつるりんとしたいい紙を使ってて、グレーの部分は網点じゃなくて、何といったらいいのかな、グレーの色を塗ってあるような印刷です。その結果、黒・白・グレーの画面から受ける透明感がすばらしい。

 師弟の関係を軸にした少女の成長物語、という側面と、絵・表現・印刷がマッチして、たいへん美しい作品となっています。バレエではすべてが美しい。

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February 04, 2014

吸血鬼殺人事件『白暮のクロニクル』

 どういうマンガが好きなのかと問われて個別のことはともかく、一般化して話すならこれはもう、魅力的なキャラクターがステキなストーリーをくりひろげるマンガ、であるわけですね。この二者のどちらが欠けても成功しない。

 ストーリー/プロットについてはマンガに限ってどうこういえるものではないのでおいといて、マンガにおけるキャラクターは特殊です。なんつっても、紙の上に描かれた線の集合であるところの何か、なんですから。しかもそれが複数のコマにわたって「演技」らしきものをくりひろげ、総合的にマンガのキャラクターとして認識される。これらを大きく含めてわたしたちはキャラクターとして受け入れています。

 ひとが演じる演劇や映画・テレビならキャラクターは「姿形」+「会話」+「演技」ですが、マンガなら「姿形」+「会話」+「作者の演出による演技らしきもの」となります。つまりすべては作者のコントロール下にあります。

 ということをふまえて、これはどうか。

●ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』1巻(2014年小学館、552円+税、amazon

白暮のクロニクル 1 (ビッグ コミックス)

 舞台は現代日本。ただし、わたしたちの住む世界とは少し違ってて「オキナガ」と呼ばれる長命者がひっそりと暮らしている世界。彼らの存在は完全に秘密というわけではなく、一般人にもそれなりに知られていますが、太陽光線に弱く、心臓に杭を打たれなければ死なない、まあ吸血鬼です。

 オキナガを保護管理しているのが厚生労働省。その日本で吸血鬼が被害者となる連続殺人事件がおこる。この犯罪にいどむのが、吸血鬼探偵・雪村魁と厚労省の新米職員・伏木あかりのコンビ……!?

 吸血鬼が犯人だったり被害者だったり探偵だったりするミステリやSFは、すでにいろいろあったりしますので、新味はありません。結局、いかに魅力的なキャラクターを創造できるか、いかに魅力的な謎を提出できるか、なんですよね。

 でもって本作。著者のつくるキャラクターたちのバカ会話がねー、『究極超人あ~る』以来の伝統芸のようなこのバカ会話が楽しくて楽しくて。やたらと背の高い厚労省職員、伏木あかりちゃんのつきだした唇の表現「ε」がかわいい。正義漢だし、好きだなあ。同僚かつ上司の久保園さんも、ハゲのくせにやたらとかっこいいいぞ。

 さらに本作では魅力的な謎が。1巻で形式上の犯人は指摘され、事件は表面上解決するのですが、その陰には12年ごとに殺人をおこす「羊殺し」と呼ばれるラスボスが存在するらしい。それは未年におこる猟奇殺人。おお、次の未年といえば、来年、2015年じゃないかっ。これは本書のカバーにもでかでかと描かれてます。

 とまあ、何やら仕掛けがいっぱいありそうなお話。カバーには何やらわけありらしい英文も書いてあって。

Passing through thousands of nights,
I keep on walking to let her soul rest in peace.
No matter how lonely it seems to be,
that is the way I live.

 適当に訳しておきます。こんな感じで、主人公の思いを書いているらしい。

彼女の魂よ安らかに
それだけを祈って幾千の夜をさまよってきた
いかに孤独であろうとも
それこそがわたしの人生なのだ

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