アメコミ邦訳は今どうなっているのか:マーベル編
わたし、文章を書くときはいつも、食卓に資料となるマンガを積み上げて、ノートパソコンでぱちぱちやってるわけです。ところが風邪をひいてしまい、同じ食卓で勉強するセンター試験前の娘にうつすべからず、というわけでしばらく寝室に追いやられてました。
じゃあこの際、というわけで積ん読になってた邦訳アメコミをずっと読んでました。アメコミ原書は少しだけしか持ってなくって、邦訳中心に読んでるうすいファンですが、邦訳されてるマーベル関連は全冊読了。いや多い多い。
おそらくこの数年こそ、アメコミが史上もっとも多く邦訳されている時期です。とくにヒーローものアメコミ邦訳は映画公開と連動していて、映画公開→邦訳、映画公開→邦訳のパターンとなっていますから、アメコミヒーロー映画が流行している現在、邦訳が増えているのも当然でしょう。
しかし実際に邦訳アメコミの読者数が増えてるかどうかはよくわかりません。日本ではコアなファンだけが買い続けてるという噂を聞いたことがあるし、スーパーマンが始まってから70年、スパイダーマンですら50年ですからね。実際のところ延々と続くストーリーに、新規読者が途中参入するのはちょっときびしいのは確か。
でもそこを何とか乗り越えられれば。山のようなキャラクターがくりひろげるこまごましたストーリーと、ヒーロー世界を横断するクロスオーバーと呼ばれる大事件がからみあいながら進んでいくアメコミ特有のダイナミックな展開。これは日本マンガに存在しないものなので、すごく魅力的なんですけどね。
んで、マーベル。
最近マーベルを邦訳しているのは、主にヴィレッジブックスですが、小学館集英社プロダクションからも関連するコミックスが発売されてるから両方チェックが必要です。現在は「ハウス・オブ・M」(原書で2005年)と呼ばれるクロスオーバー以後のお話が邦訳されてます。(以下、書誌データを書くのがめんどうなので書影だけ。書影クリックでアマゾンに飛びます)
その起点となる「X-MEN/アベンジャーズ:ハウス・オブ・M」では、ある日突然世界が改変されて、「イフ」の物語が大規模に展開される世界になってしまいます。世界はマグニートーの一族とミュータントに支配され、スパイダーマンはスポーツマン兼俳優で、キャプテン・アメリカは普通の老人。
この「イフ」世界も、ヒーローたちのどつき合いで解決して、もとのストーリーラインに戻ります。
ところが「ハウス・オブ・M」事件で世界中のミュータントが激減してしまい、とくにX-MENたちは大騒ぎ。これが「X-MEN:デッドリー・ジェネシス」です。
「ハウス・オブ・M」以前のX-MENを描いた「アストニッシングX-MEN:ギフテッド」と「アストニッシングX-MEN:デンジャラス」も読んでおいたほうがいいと思いますが、残念ながら今は入手困難となってます。
いっぽうのアベンジャーズ。旧アベンジャーズは「ハウス・オブ・M」事件で解散しちゃってますが、ニューアベンジャーズとして新メンバーで再結成。このお話が「ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト」「ニューアベンジャーズ:セントリー」「ニューアベンジャーズ:コレクティブ」の三冊。
そうこうしている間に、新しいクロスオーバーが始まります。これが「シビル・ウォー」。内戦のことですね。ヒーローを政府に登録する超人登録法をめぐってヒーローたちが対立し、ヒーロー内戦に突入。どつき合いで解決をめざします。「シビル・ウォー」と「ニューアベンジャーズ:シビル・ウォー」が発売中。
じつはこれ以外にヴィレッジブックスからは、予約通販の形でシビル・ウォー関連コミックスが発売されてました。「ロード・トゥ・シビル・ウォー」「アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー」「キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー」「アイアンマン:シビル・ウォー」「ウルヴァリン:シビル・ウォー」「パニシャー・ウォージャーナル:シビル・ウォー」「シビル・ウォー:X-MENユニバース」の七冊。どれもおもしろかったけど、アマゾンではムチャな古書値付けがされてますねー。
さて、シビル・ウォーはキャプテン・アメリカの投降で終わるわけですが、逮捕されたキャプテン・アメリカが暗殺されてしまうお話が、上下巻の「デス・オブ・キャプテン・アメリカ:デス・オブ・ドリーム」「デス・オブ・キャプテン・アメリカ:バーデン・オブ・ドリーム」。
このエピソードで重要な役割を果たすのが、死亡したと思われていたキャプテン・アメリカの元相棒、バッキー。今はウィンター・ソルジャーを名のっています。順番からいって「キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー」から読んだほうがわかりやすいでしょう。
さてスパイダーマン。この時期にはメリージェーンと結婚してるし、シビル・ウォーのおかげで世間には正体がばれちゃってました。そんなとき、メイおばさんが狙撃されてしまう。
そこでスパイダーマンは悪魔と取り引きします。おばさんは生き返り、世間はスパイダーマンの正体を忘れてしまう。その代わり、メリージェーンとは結婚してないことになって…… もうなんつうか究極のちゃぶ台返し、すべてをなかったことにして、ニューエピソードの始まり。この「スパイダーマン:ワン・モア・デイ」にはさすがに驚いた。こんなのありかよ。
以下、新規まき直しで、「スパイダーマン:ブランニュー・デイ」1・2・3巻、「スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ」「スパイダーマン:エレクション・デイ」と続きます。
ハルクはシビル・ウォーに参加してませんでした。まあハルクが出てきたら、一瞬で戦争終わっちゃいそうですからね。そのときハルクがどこにいたかというと、宇宙のある星に追放されてたのです。
そのハルクがシビル・ウォー後に宇宙から帰ってきて、アイアンマンたちに復讐の大戦争を仕掛けるのが、「ワールド・ウォー・ハルク」。当然ながらどつき合いです。
シビル・ウォーの結果、超人たちの政府側リーダーとなったのは超人登録法を支持したアイアンマンでした。シビル・ウォー後、権力を手にしたアイアンマンの苦悩の戦いを描いたのが、「アイアンマン:エクストリミス」「アイアンマン:ホーンテッド」の二作。
シビル・ウォーで二派に別れたヒーローたちは、その後も政府側ヒーローとアンダーグラウンドのヒーローに別れて対立を続けます。アベンジャーズもふたつできちゃう。
アイアンマンが組織したのがマイティ・アベンジャーズ。「マイティ・アベンジャーズ:ウルトロン・イニシアティブ」「マイティ・アベンジャーズ:ベノム・ボム」の二作が邦訳されました。
アンダーグラウンドのアベンジャーズは「シークレット」アベンジャーズとして日本に行ったり。「ニューアベンジャーズ:レボリューション」と「ニューアベンジャーズ:トラスト」。
この過程で変身能力を持つスクラル人が地球侵略を企てていることが明らかになります。アベンジャーズの主要メンバーとしてスクラル人が潜入している。それはいったい誰だ……!? というわけで、またクロスオーバー「シークレット・インベージョン」。
クライマックスは、地球のヒーロー・悪役全員が協力して宇宙からの侵略に対抗するというわくわくするシーンです。敵のスクラル人も地球ヒーローの姿に変身してますから、まあわかりにくいこと。これもどつき合いで決着がつきます。
この結果、アイアンマンは失脚。彼に代わって権力を握ったのは、宇宙人との戦いで功績があったグリーンゴブリンことノーマン・オズボーン(これまで何度も死んで何度も生き返ってます)であった……! その後の物語が「スパイダーマン:アメリカン・サン」。←イマココ
これでやっと原書の2009年まで。たった四年間のおおまかなストーリーラインを紹介するだけでこのボリューム。いやアメコミはおもしろいけどタイヘンだ。
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Comments
おおっと、今確認しました。完全に時系列をまちがえて記憶してました、これは申し訳ありません。
Posted by: 漫棚通信 | January 21, 2014 08:52 PM
「ハウス・オブ・M」と「ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト」~の時系列が間違ってますよ。
Posted by: 国立珠美 | January 20, 2014 10:14 PM