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January 27, 2014

紙か電子か『ナナのリテラシー』

 フィクションとしておもしろく、ルポルタージュとしておもしろく、メタ的におもしろい。

●鈴木みそ『ナナのリテラシー』1巻(2014年KADOKAWA/エンターブレイン、650円+税、amazon
●同キンドル版1巻(2014年鈴木みそ、税なし400円、amazon

ナナのリテラシー 1 (ビームコミックス) ナナのリテラシー1

 書影左が紙の本、お値段は650円+税。書影右はキンドル版で、ご存じのとおりアマゾンの電子書籍は日本国に税金を払っていませんので税抜きじゃなくて税なし、さらに価格設定がお安く400円となっております。

 この二冊、発行/発売が異なってて、紙の本がKADOKAWA/エンターブレインから。キンドル版は、著者本人「鈴木みそ」が販売しています。

 書影イラストは、著者の本としてはめずらしく美少女+花が散るバックという、なんてあざといんでしょ、と驚くようなデザイン。ねらってるな。それはそれとして、発行/発売元が違うのに同じデザイン。さて、なぜこういうことになってるのか、というのが本書の内容であります。

 主人公は飲んだくれのろくでなしながら天才コンサルタント山田仁五郎と、学校では並ぶもののない秀才女子高生七海(ななみ)。このふたりがコンビを組んで、混迷の現代日本ビジネスシーンに切り込みます。

 彼らの最初のミッションは、出版不況で売れなくなった中堅どころのマンガ家「鈴木みそ吉」を、電子出版を利用していかに再生させるか……!?

 とまあ昨年、キンドル版マンガ電子書籍で一発大当たりをとった著者による、虚実ないまぜの物語。

 まずは現代日本の出版状況の分析、そして電子出版の立ち位置を語り、これだけでも感心しちゃうのですが、さらに本書のすばらしいところは、実際の処方箋を提示するところ。出版社用と作家用、二種類があります。

 その薬は関係者にとってはきわめて苦く、飲みにくいものですが、わたし、うんうんとうなづいちゃいましたね。出版に興味のあるひとなら必読でしょう。

「鈴木みそ吉」はまず、電子出版権を出版社から取り戻す交渉を始めます。ここでエンターブレインが太っ腹な態度を見せる。実際に本書は、エンターブレインが紙の本、著者本人が電子書籍を同時に、しかも同じデザインで出版してるわけです。価格はもちろん電子書籍が安い。これも実験だなあ。

 さて、ひるがえって読者としての自分はどうかといいますと、キンドルでけっこうマンガ買ってます。手軽に買えちゃうし、場所をとらないのが最大の利点。

 ただしキンドルペイパーホワイトでは画面が小さくて、さすがにマンガを読む気になりません。だからおもにiPadのキンドルアプリで読んでます。しかしうちの初代iPadの液晶では、これがけっこう目が疲れるんですよー。最近のiPadは改善されてますかね?

 というわけで、わたしは本書を紙の本で読みました。電子出版の実験を描いた実験的電子書籍が出版されたというのに、それを買わず、いずれなくなる(かもしれない)紙の本(しかも価格は高い)で読むという、おれはバカかもしれない。この矛盾した感じも含めて、いろいろとおもしろく楽しい本でした。

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January 20, 2014

アメコミ邦訳は今どうなっているのか:マーベル編

 わたし、文章を書くときはいつも、食卓に資料となるマンガを積み上げて、ノートパソコンでぱちぱちやってるわけです。ところが風邪をひいてしまい、同じ食卓で勉強するセンター試験前の娘にうつすべからず、というわけでしばらく寝室に追いやられてました。

 じゃあこの際、というわけで積ん読になってた邦訳アメコミをずっと読んでました。アメコミ原書は少しだけしか持ってなくって、邦訳中心に読んでるうすいファンですが、邦訳されてるマーベル関連は全冊読了。いや多い多い。

 おそらくこの数年こそ、アメコミが史上もっとも多く邦訳されている時期です。とくにヒーローものアメコミ邦訳は映画公開と連動していて、映画公開→邦訳、映画公開→邦訳のパターンとなっていますから、アメコミヒーロー映画が流行している現在、邦訳が増えているのも当然でしょう。

 しかし実際に邦訳アメコミの読者数が増えてるかどうかはよくわかりません。日本ではコアなファンだけが買い続けてるという噂を聞いたことがあるし、スーパーマンが始まってから70年、スパイダーマンですら50年ですからね。実際のところ延々と続くストーリーに、新規読者が途中参入するのはちょっときびしいのは確か。

 でもそこを何とか乗り越えられれば。山のようなキャラクターがくりひろげるこまごましたストーリーと、ヒーロー世界を横断するクロスオーバーと呼ばれる大事件がからみあいながら進んでいくアメコミ特有のダイナミックな展開。これは日本マンガに存在しないものなので、すごく魅力的なんですけどね。

 んで、マーベル。

 最近マーベルを邦訳しているのは、主にヴィレッジブックスですが、小学館集英社プロダクションからも関連するコミックスが発売されてるから両方チェックが必要です。現在は「ハウス・オブ・M」(原書で2005年)と呼ばれるクロスオーバー以後のお話が邦訳されてます。(以下、書誌データを書くのがめんどうなので書影だけ。書影クリックでアマゾンに飛びます)

X-MEN/アベンジャーズ ハウス・オブ・M

 その起点となる「X-MEN/アベンジャーズ:ハウス・オブ・M」では、ある日突然世界が改変されて、「イフ」の物語が大規模に展開される世界になってしまいます。世界はマグニートーの一族とミュータントに支配され、スパイダーマンはスポーツマン兼俳優で、キャプテン・アメリカは普通の老人。

 この「イフ」世界も、ヒーローたちのどつき合いで解決して、もとのストーリーラインに戻ります。

 ところが「ハウス・オブ・M」事件で世界中のミュータントが激減してしまい、とくにX-MENたちは大騒ぎ。これが「X-MEN:デッドリー・ジェネシス」です。

 「ハウス・オブ・M」以前のX-MENを描いた「アストニッシングX-MEN:ギフテッド」と「アストニッシングX-MEN:デンジャラス」も読んでおいたほうがいいと思いますが、残念ながら今は入手困難となってます。

 いっぽうのアベンジャーズ。旧アベンジャーズは「ハウス・オブ・M」事件で解散しちゃってますが、ニューアベンジャーズとして新メンバーで再結成。このお話が「ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト」「ニューアベンジャーズ:セントリー」「ニューアベンジャーズ:コレクティブ」の三冊。

X-MEN:デッドリー・ジェネシス (MARVEL) ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト ニューアベンジャーズ:セントリー (MARVEL) ニューアベンジャーズ:コレクティブ (MARVEL)

 そうこうしている間に、新しいクロスオーバーが始まります。これが「シビル・ウォー」。内戦のことですね。ヒーローを政府に登録する超人登録法をめぐってヒーローたちが対立し、ヒーロー内戦に突入。どつき合いで解決をめざします。「シビル・ウォー」と「ニューアベンジャーズ:シビル・ウォー」が発売中。

シビル・ウォー (MARVEL) ニューアベンジャーズ:シビル・ウォー (MARVEL)

 じつはこれ以外にヴィレッジブックスからは、予約通販の形でシビル・ウォー関連コミックスが発売されてました。「ロード・トゥ・シビル・ウォー」「アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー」「キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー」「アイアンマン:シビル・ウォー」「ウルヴァリン:シビル・ウォー」「パニシャー・ウォージャーナル:シビル・ウォー」「シビル・ウォー:X-MENユニバース」の七冊。どれもおもしろかったけど、アマゾンではムチャな古書値付けがされてますねー。

 さて、シビル・ウォーはキャプテン・アメリカの投降で終わるわけですが、逮捕されたキャプテン・アメリカが暗殺されてしまうお話が、上下巻の「デス・オブ・キャプテン・アメリカ:デス・オブ・ドリーム」「デス・オブ・キャプテン・アメリカ:バーデン・オブ・ドリーム」。

 このエピソードで重要な役割を果たすのが、死亡したと思われていたキャプテン・アメリカの元相棒、バッキー。今はウィンター・ソルジャーを名のっています。順番からいって「キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー」から読んだほうがわかりやすいでしょう。

キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー (ShoPro Books) デス・オブ・キャプテン・アメリカ:デス・オブ・ドリーム (MARVEL) デス・オブ・キャプテン・アメリカ:バーデン・オブ・ドリーム (MARVEL)

 さてスパイダーマン。この時期にはメリージェーンと結婚してるし、シビル・ウォーのおかげで世間には正体がばれちゃってました。そんなとき、メイおばさんが狙撃されてしまう。

 そこでスパイダーマンは悪魔と取り引きします。おばさんは生き返り、世間はスパイダーマンの正体を忘れてしまう。その代わり、メリージェーンとは結婚してないことになって…… もうなんつうか究極のちゃぶ台返し、すべてをなかったことにして、ニューエピソードの始まり。この「スパイダーマン:ワン・モア・デイ」にはさすがに驚いた。こんなのありかよ。

 以下、新規まき直しで、「スパイダーマン:ブランニュー・デイ」1・2・3巻、「スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ」「スパイダーマン:エレクション・デイ」と続きます。

スパイダーマン:ワン・モア・デイ (ShoPro Books) スパイダーマン:ブランニュー・デイ 1 (ShoPro Books) スパイダーマン:ブランニュー・デイ 2 (ShoPro Books) スパイダーマン:ブランニュー・デイ 3 (ShoPro Books) スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ スパイダーマン:エレクション・デイ (ShoPro Books)

 ハルクはシビル・ウォーに参加してませんでした。まあハルクが出てきたら、一瞬で戦争終わっちゃいそうですからね。そのときハルクがどこにいたかというと、宇宙のある星に追放されてたのです。

 そのハルクがシビル・ウォー後に宇宙から帰ってきて、アイアンマンたちに復讐の大戦争を仕掛けるのが、「ワールド・ウォー・ハルク」。当然ながらどつき合いです。

 シビル・ウォーの結果、超人たちの政府側リーダーとなったのは超人登録法を支持したアイアンマンでした。シビル・ウォー後、権力を手にしたアイアンマンの苦悩の戦いを描いたのが、「アイアンマン:エクストリミス」「アイアンマン:ホーンテッド」の二作。

ワールド・ウォー・ハルク (MARVEL) アイアンマン:エクストリミス (MARVEL) アイアンマン:ホーンテッド (MARVEL)

 シビル・ウォーで二派に別れたヒーローたちは、その後も政府側ヒーローとアンダーグラウンドのヒーローに別れて対立を続けます。アベンジャーズもふたつできちゃう。

 アイアンマンが組織したのがマイティ・アベンジャーズ。「マイティ・アベンジャーズ:ウルトロン・イニシアティブ」「マイティ・アベンジャーズ:ベノム・ボム」の二作が邦訳されました。

 アンダーグラウンドのアベンジャーズは「シークレット」アベンジャーズとして日本に行ったり。「ニューアベンジャーズ:レボリューション」と「ニューアベンジャーズ:トラスト」。

マイティ・アベンジャーズ:ウルトロン・イニシアティブ (MARVEL) マイティ・アベンジャーズ:ベノム・ボム (MARVEL) ニューアベンジャーズ:レボリューション (MARVEL) ニューアベンジャーズ:トラスト (MARVEL)

 この過程で変身能力を持つスクラル人が地球侵略を企てていることが明らかになります。アベンジャーズの主要メンバーとしてスクラル人が潜入している。それはいったい誰だ……!? というわけで、またクロスオーバー「シークレット・インベージョン」。

シークレット・インベージョン (MARVEL)

 クライマックスは、地球のヒーロー・悪役全員が協力して宇宙からの侵略に対抗するというわくわくするシーンです。敵のスクラル人も地球ヒーローの姿に変身してますから、まあわかりにくいこと。これもどつき合いで決着がつきます。

 この結果、アイアンマンは失脚。彼に代わって権力を握ったのは、宇宙人との戦いで功績があったグリーンゴブリンことノーマン・オズボーン(これまで何度も死んで何度も生き返ってます)であった……! その後の物語が「スパイダーマン:アメリカン・サン」。←イマココ

スパイダーマン:アメリカン・サン (ShoPro Books)

 これでやっと原書の2009年まで。たった四年間のおおまかなストーリーラインを紹介するだけでこのボリューム。いやアメコミはおもしろいけどタイヘンだ。

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January 03, 2014

普通の中国人は何を考えて生きてきたか『チャイニーズ・ライフ』

 現代中国人の自伝的物語といえば、どうしたって文化大革命と毛沢東を批判的に描いたベストセラー、ユン・チアン「ワイルド・スワン」を思い浮かべてしまうのですが、これはどうか。

●李昆武/フィリップ・オティエ『チャイニーズ・ライフ 激動の中国を生きたある中国人画家の物語』上・下巻(野嶋剛訳、2013年明石書店、各1800円+税、amazon

チャイニーズ・ライフ――激動の中国を生きたある中国人画家の物語【上巻】「父の時代」から「党の時代」へ チャイニーズ・ライフ――激動の中国を生きたある中国人画家の物語【下巻】「党の時代」から「金の時代」へ

 タイトルどおり、ひとりの中国人の自伝マンガです。本書の成立過程がすこし変わってて、企画は中国在住のフランス外交官であるフィリップ・オティエ。李昆武は雲南省昆明の新聞社で美術記者として働いていましたが、知り合いのオティエから、平凡な中国人としての自伝マンガ執筆を依頼されます。

 全三巻がフランスで刊行されたのが2009年~2011年、タイトルは「ある中国人の人生」。英訳が2012年。中国本土で中国語訳(っていうのか?)が出版されたのが2013年1月になってから。

 本書は英訳本から邦訳されたもので、原著の全三巻を二巻にまとめています。ほとんどモノクロ、B5判ソフトカバーで上巻330ページ超、下巻360ページ超の長編です。

 原著の第一部が「父の時代」、第二部が「党の時代」、第三部が「金の時代」となります。

 著者は1955年生まれ。わたしと年齢そんなに変わりません。もし著者が日本に生まれてたら、「ウルトラQ」の放映が11歳のときです。

 著者の父は中国共産党幹部、といっても「主任」レベル。著者の幼年時の記憶は1958年から1962年までの大躍進政策時代から始まります。大躍進政策は中国政府が鉄鋼の大増産をめざしたもので、国民を熱狂の渦に巻き込んだらしい。

 鉄が混じっていそうな金属はすべて供出され溶かされます。「お母さん、幼稚園にも溶鉱炉ができたんだよ」「無数の溶鉱炉が作られ、まるで国全体が巨大な製鉄所になったかのようでした」

 当然石炭が不足するので、森林はすべて伐採されます。仏塔・寺院・時計塔の壁も壊されてしまう。そして同時期に大飢饉が中国を襲います。

 数千万人の犠牲者を出したこの時期の中国人の狂乱と悲惨が幼児である著者の目をとおして描かれる。これが本書の始まりです。

 そしてこれに続くのがさらに狂乱、1966年からの文化大革命です。著者は小学校の高学年、「造反有理、革命無罪」の直撃を受けた世代です。毛沢東語録を手に街を廻り、旧習をすべて悪として批判し、書画骨董を打ち壊し、公開の集会で教師を糾弾する。「ああ、自らを狂気に委ねることはなんと気持ちの良いことだろう」

 しかし共産党幹部である著者の父親が批判されることになり、状況は一転します。父親は再教育施設に収容され、残された母と著者、妹は苦難の生活を送ることに。

 17歳になった著者は人民解放軍に入隊、そして1976年に神格化されていた毛沢東が死亡。ここまでが第一部「父の時代」です。この時代の庶民の証言だけでも本書を読む意義はあるでしょう。

 著者の絵は筆とペンを併用してるようです。線に強弱を強くつけ、描写は写実ではなく人体や建物、自然物も変形させることで絵そのものに意味を持たせています。もっともお見事なのが人物の顔で、描かれたひとびとの人生のすべてが顔に出ている、というぐらいのデキ。

 第二部で主に描かれるのは著者の軍隊時代です。四人組が追放され、父親は党職に復帰します。著者も入党を希望しますが果たせず、軍隊の「生産基地」で牛の世話をする失意の日々。その後、絵のうまさが認められ、宣伝部門に所属し、共産党にも入党できます。

 1980年に除隊し、昆明の新聞社に美術記者として就職、そして父の死まで。

 第三部はがらっと変わって、現代中国のルポルタージュ。タイトルの「金の時代」のとおり、1982年鄧小平の改革開放政策以後、中国がいかに「金」本位の社会に変化したか。ある種、醜いとも思われる、それでも活力に満ちた中国人の姿が活写されます。

 第三部では、企画のフィリップ・オティエと李昆武との対立が描かれています。フランス人としては1989年の天安門事件に触れてほしい。外国からも注目される現代中国史の大きな事件だからです。

 しかし著者はそれを断ります。自分は事件のとき国境近くの辺境にいて何も知らない。知り合いで関係した人物もいない。個人的にもあの事件で苦しみを受けたこともない。

中国には秩序と安定が経済発展のためには必要で、その他のことは二次的な問題だという風に、わたし自身は考えている。

私たちの国は、20世紀を通じてあらゆる苦難と屈辱を味わった。侵略、略奪、不平等条約、内部分裂、軍閥間の争い。

私自身も、文化大革命、批判運動、階級闘争、干ばつ、飢饉、電力不足、極貧などを経験し、こうした考えは徐々に強い確信に変わっていった。

もちろん、いろいろな意見があるだろう。経済成長の前に人権が大事だというひともいる。私は、そんな論議は次の世代にまかせればいいと思う。言葉で言い表せないほどの苦しみを味わうことのなくなった世代に。

 このキャプションのバックに描かれた絵がちょっと複雑で、第一部の、文化大革命で失われた骨董品を悲しむ男の絵だったりします。つまり、ダブルミーニングなのかどうなのか。バブル期の日本をちょっと思い出しますね。

 本書の最終シーンは2009年大晦日の胡錦濤のテレビ演説です。中国の躍進に喜ぶ著者の姿が描かれて終わります。

 現在、中国と対立している日本の読者として、本書を批判するのはたやすいことです。大躍進政策や文化大革命のような政治的大失敗に関して国民の行動を忘却して、すべてごく一部の政治家のせいにしている。政府や権力に対する批判精神が足らない。人権や自由について考えるのを放棄している。

 しかしそれも含めて、すべてまるっと普通の中国人。それを描いたすぐれたマンガだと思います。

 本書の中国語簡体字版が2013年まで存在しなかったというのは「政治的に」どういうラストをむかえるのか、中国国内からも注目されてたのじゃないかな。

 本書の中国語版は、2013年の中国国際動漫祭で、第10回金龍賞中国漫画大賞を受賞しました。

 金龍賞は中国ではもっとも権威があるといわれているマンガ賞で、こういう賞はどこもそうなんですが、年度によって部門賞がいろいろと変化します。第9回までは最優秀少年漫画大賞とか最優秀少女漫画大賞、最優秀ユーモア漫画大賞などの賞はあっても、全体を統括するような大賞というのは存在しませんでした。

 つまり「中国漫画大賞」というのは本書が最初に受賞したのですね。だからといって他の娯楽マンガより売れてるかというとそうでもないらしいのが、こういうオルタナティブなマンガが世界的にきびしいところ。

 日本語版での最大の不満は表紙イラストです。カバー表4や、カバーをめくった本体表紙のイラストは原著と同じく、主人公が壁に中国共産党の宣伝絵画を描いているところなのですが、その壁は空白。

 日本語版表紙はモノクロなのでしょうがないのかもしれませんが、フランス語版や中国語版では、壁のイラストはカラーで、毛沢東やそれらしいいさましい絵が描かれてます。そして第三巻は「金の時代」にふさわしい絵が壁に描かれてて、これは作品のラストシーンにもつながります。

 逆に英語版はちょっとしょぼい書影イラスト。フランス語版書影と英語版書影も載せておきますね。

Uneviechinoise01 Uneviechinoise02 Uneviechinoise03 Achineslife

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