劇場型投票
ジャンプのマンガを例に挙げますと。
一般人の投票による「ダ・ヴィンチ」のマンガランキングでは、週刊少年ジャンプ、あるいは少年ジャンプ系のマンガ(ヤンジャン除く)は、『ワンピース』『暗殺教室』『銀魂』『黒子のバスケ』『ナルト』『ハイキュー!!』『ジョジョリオン』『こち亀』『スケット・ダンス』『トリコ』とまあ、50作中10作も選ばれてます。
これがジャンプの実力、なのでしょう。有効回答数4619通、1ジャンルにつき3作までの投票が可(小説なども含みますのでマンガだけの投票が何通かは不明)という大規模アンケートですね。
これに対して発売中の「オトナファミ」2014年2月号では、全国書店3000店のアンケート(1店3作)によるマンガランキングを実施してます。これによると、少年ジャンプ系のマンガは『ワンパンマン』『暗殺教室』『食戟のソーマ』『ハイキュー!!』『ガンマ』と、50作中5作。
大規模アンケートによるベストテンなのにこの違いは何。挙げられている作品そのものが違います。これこそ読者と書店員の知識と好みの差ですが、立場の差もあるはず。
読者のほうが挙げるのは買ったマンガ、読んだマンガですが、書店員が挙げるのは売りたいマンガ、売れつつあるマンガ。そのぶん、ブックガイドという側面が強くなるわけですね。
転じて『このマンガがすごい!2014』では、少年ジャンプ系のマンガは、オトコ編20作中2作、『暗殺教室』と『ワンパンマン』だけになります。これが多いか少ないか。
「ダ・ヴィンチ」や「オトナファミ」の記事は記名投票とはいえ、雑誌にすべての投票者の投票行動が載るわけではないので匿名であるともいえます。ところが『このマンガがすごい!』のような本になると、投票者がどういう作品に票を投じたのかがすべて明らかにされます。これは投票者にとって、全世界への自分の意思表明となります。当然それは観客を意識した「劇場型」の投票行動というべきものになるんじゃないかな。
選者となるひとは自分が期待されてる役割を演じようとする。『このマンガがすごい!』なら、劇画狼さんなんかがそう。トンデモエロ劇画が専門の劇画狼さんが、ジャンプ系作品を挙げるとは誰も思っていないし、実際にそうはならないでしょ。もちろん自分の好みや見識が最初にあるのですが、そういう「劇場型」の側面はきっとあるはず、だと思うのですよ。
いやいや、人の話にしてはいけませんね。わたし自身が、この劇場型投票をしている。でもって、わたしもアンケートに参加させていただいた「フリースタイル」の「このマンガを読め!」が発売されました。じつをいいますと、前号が出たのが11月末だったので、この号が年内に発売されるとは思ってなかった。
「フリースタイル」になりますと、少年ジャンプ系はベスト50作中1作、『暗殺教室』のみとなります。その他の結果も他誌のベストテンとはひと味違った結果となっております。これもケレンたっぷりに選んだ結果です。読んでやってください。
●「フリースタイル」25号「特集:THE BEST MANGA 2014 このマンガを読め!」(2013年フリースタイル、888円+税、amazon)
●『このマンガがすごい! 2014』(2013年宝島社、500円+税、amazon)
●「オトナファミ」2014年2月号(2013年KADOKAWA、657円+税、amazon)
●「ダ・ヴィンチ」2014年1月号(2013年KADOKAWA、562円+税、amazon)
あ。今年からダ・ヴィンチもオトナファミもKADOKAWAの雑誌になってる!
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