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October 03, 2013

手塚治虫が翻訳した「スーパーマン」

 以下の文章は『原作スーパーマン』という本の訳者あとがきの冒頭です。

映画からノヴェライズされた小説は、欧米でもそんなに珍しくはない。たとえば有名なクラークの『スペース・オデッセイ2001』は、あきらかにキュブリックの映画のための構成をもとに同時にノヴェライゼーションの企画をたてられたものであるが、キャッチフレーズとして映画で難解な個所は事前に本書を読めば納得できることを強調している。映画が映像的ノヴェルティを強調するなら、物語的興味は文章に委ねるほかなく、またこの映画ではある程度成功しているといってよかろう。

 著者はエリオット・マッギン Elliot S! Maggin というひと。アメコミの脚本家として知られてますが、本書は小説です。原著は「Superman: Last Son of Krypton」というタイトルで1978年に出版されました。

 もちろん1978年に大ヒットした大作映画、クリストファー・リーヴ主演の「スーパーマン」に合わせて出版されたものです。『原作スーパーマン』はその邦訳で、映画が日本公開された1979年6月に講談社から出版されてます。

 内容は映画原作でも何でもなくて、映画とは別ストーリーの小説。

 で、この本のおもしろいところは「手塚治虫・訳」であるところなんですね。表紙には著者の名よりも、手塚治虫の名が大きく印刷されています。

スーパーマン―原作 (1979年)

 奥付にもしっかりと「© Tezuka Production Inc. 1979」とコピーライトが。

 いやいやいや。いくら超人・手塚先生でも長編小説の翻訳は、時間的能力的に無理でしょう。もちろんゴースト翻訳者がいるはずです。

 で、冒頭の訳者あとがきになるのですが、この文体、手塚治虫の文章を読んだことのあるひとならわかると思いますが、どう考えても手塚自身の文章ではありません。

 小説本文だけじゃなくて、訳者あとがきもゴーストのかたが書いてるんですね。じゃこれは誰が書いたかといいますと、これはもうあとがきの最後にきちんと表明されてます。

私にとってはじめて翻訳者に名をつらねるなど、たいへんおこがましい出来ごとで、高名なSF翻訳者の先生がたには、顔もむけられないくらいである。本書も、ほとんどの部分、浅倉久志氏のご援助をいただいた。厚顔無恥な新米から、ベテランへ、心からお礼を申し上げたい。

 すごくかしこまった文章ですが、この部分、書いたのは手塚治虫か浅倉久志か。どっちにしてもちょっと笑ってしまう。SFの書誌関係のかたはこの作品も浅倉久志の翻訳書としてカウントしてあげてください。

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Comments

浅倉久志さんは、アーサー・C・クラークの翻訳が多かったと記憶しています。
「2001年宇宙の旅」の小説版はクラーク昨。
翻訳は浅倉久志さんじゃないかと思います。
論理的なかちっとした文体はクラーク作品に良く合います。

Posted by: トロ~ロ | October 03, 2013 09:12 PM

×クラーク昨
○クラーク作
訂正してお詫び申し上げます。

Posted by: トロ~ロ | October 03, 2013 09:13 PM

2001年宇宙の旅は伊藤典夫氏の訳では?
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11000.html

Posted by: N | October 03, 2013 11:18 PM

昔々読んだ講談社現代新書の「翻訳上達法」だったか「翻訳教室」だったかに、あとがきの謝辞で「大変お世話になった」と書いてあったら実際はそいつが訳してると明言されていたのを思い出しました。

Posted by: かくた | October 04, 2013 04:02 AM

>2001年宇宙の旅は伊藤典夫氏の訳

訂正してお詫び申し上げます。

Posted by: トロ~ロ | October 05, 2013 04:42 AM

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