« 手塚治虫が翻訳した「スーパーマン」 | Main | ミロ・マナラのバカエロマンガ『ガリバリアーナ』 »

October 10, 2013

1968年のまんが道『男の条件』

 マンガに関するお話のはずなのに、タイトルが「男」とはこれいかに。

●川崎のぼる/梶原一騎『男の条件』(2013年集英社、1500円+税、amazon

男の条件 (復刻版コミックス)

『巨人の星』のコンビによるマンガ家マンガの復刊です。

 あいかわらず初出を書いてないんだよなあ。『男の条件』は「少年ジャンプ」が創刊された年、1968年10号から連載が始まりました。まだ月二回刊の時代ですね。次の11号では、永井豪『ハレンチ学園』と本宮ひろ志『男一匹ガキ大将』が同時に連載開始されます。

 『男の条件』の連載終了は一年後の1969年19号。翌20号からジャンプは月二回刊から週刊になります。川崎のぼるはすぐに『どうどう野郎』という『いなかっぺ大将』タイプのギャグマンガの連載をはじめています。

 この時期、川崎のぼるは空前の売れっ子マンガ家でした。週刊少年マガジンの『巨人の星』は、大リーグボール1号と2号が登場するという最高に盛り上がってたころ。

 週刊少年サンデーでは『アニマル1』から『歌え!!ムスタング』への移行時期。この二作は終了即連載開始、どころの話ではなく、六週間にわたって二作同時連載というムチャなことをやってます。働かせすぎ。

 さらに月刊の「少年ブック」に『スカイヤーズ5』、小学館の学年誌には『いなかっぺ大将』を連載。

 これにジャンプの『男の条件』や『どうどう野郎』が加わるのですから、川崎のぼるが「吐きながら仕事をしていた」という噂はホントだったかもしれません。筆圧強そうだし。

 で、そういう当代一の人気マンガ家によって描かれた「まんが道」が『男の条件』。原作を担当した梶原一騎節、全開の作品であります。なぜ「まんが道」のタイトルが「男」なのかというと、これはもう梶原一騎だから、としかいいようがなくて、ちょっとこじつけっぽい。

 8人以上のアシスタントがいる人気マンガ家、青山春夫の仕事場を訪れた旋盤工見習いの少年、旗一太郎。彼は写実的な絵に関しては天才で、バーのゆかに自分の血で旋盤機械を描いてみせる。一太郎は青山の仕事場で出会った、実力はあるが売れないマンガ家・男谷草介を師と仰ぎ、ふたりで壮絶な「まんが道」を歩いてゆくことになる……!?

 熱血、友情、恋、貧乏、売血、紙芝居、ライバルの陰謀、大出版社と貧乏出版社、とまあ、いろいろとてんこ盛りの作品。ただし、良いヤクザと悪いヤクザの抗争はノイズだなあ。いらない。

 本書では梶原一騎、あるいはこの当時のマンガ編集者が現状をどう考えていたかがわかります。結局、彼らの理想とするモデルは佐藤紅緑「あゝ玉杯に花うけて」などの戦前の少年小説なんですね。

 編集者のこういうセリフがあります。

「現代の少年少女たちにとって むかしの小説にとってかわるべきまんがの 質のわるさ 安っぽさ 魂のひくさ」

 これがこの当時、一部の現状認識として共有されていたのでしょう。では梶原一騎の理想とするマンガはどういうものであったか、これが本作に実例として出てきます。タイトルは以下。

●男の花道:旋盤工が主人公の熱血友情感動マンガ
●おれたちの旗、下町行進曲:下町の少年たちが主人公の生活マンガ
●青春よ 風にさからって歩め:ヤクザの息子をモデルにした紙芝居
●非情の街:社会生活に敗北しドヤ街に転落した青年が、非情さを身につけて実業界で成功する話。
●ある無名まんが家の戦い:主人公の自伝マンガ。

 うーん、いかにも梶原一騎的、なのかな。意外にも永島慎二が選びそうな題材のような気もします。『柔道一直線』で決別し、相いれなかったはずの梶原一騎と永島慎二は、もしかすると同じ方向を向いていたのかもしれません。

 じつはわたしこの時期のジャンプ、リアルタイムでずっと読んでたので、絵も含めてずいぶんすみずみまで覚えてました。とくに川崎のぼる絵が絶品。背景や自然描写は写実的なのにデザイン化されてて、好きだなあ。

 ちょっと驚いたのは川崎のぼる、てっきりGペン派だったと思ってたのですか、作中にはカブラペンしか出てきません。そうだったのか。

|

« 手塚治虫が翻訳した「スーパーマン」 | Main | ミロ・マナラのバカエロマンガ『ガリバリアーナ』 »

Comments

>彼らの理想とするモデルは佐藤紅緑「あゝ玉杯に花うけて」などの戦前の少年小説

BSマンガ夜話で「梶原一騎の源流は戦前の少年小説だ」みたいな言葉を聞いたような気がします。

Posted by: トロ~ロ | October 11, 2013 09:34 AM

いつも楽しくROM拝読しております。
「あゝ玉杯に〜」が「巨人の星」に及ぼした影響については、以前から考えていることがありまして、僭越ながら一筆。
伴宙太の苗字の由来は「あゝ玉杯」の生蕃ではないか、と。
セイバンという音の響きもさることながら、資産家の跡継ぎ息子にしてバンカラという点も似ています。
また、「竜馬がゆく」の影響も見逃せません。
飛雄馬にしっかり者の姉がいるのは「竜馬」に倣ったのでしょう。
「巨人の星」のリメイクである「侍ジャイアンツ」では先祖返りして、主人公が土佐出身になりました。
長々とすみません。では、失礼いたします。

Posted by: 神無月仏滅 | November 12, 2013 12:32 AM

 こちらでは、ごぶさたしています。

>作中にはカブラペンしか出てきません。そうだったのか。

 ゼブラのニュームのかぶらペンです。細い線はペンを裏返しにして描いてました。アシスタントが。

Posted by: すがやみつる | November 12, 2013 02:17 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 1968年のまんが道『男の条件』:

« 手塚治虫が翻訳した「スーパーマン」 | Main | ミロ・マナラのバカエロマンガ『ガリバリアーナ』 »