今度はイギリスだっ『ゴリアテ』
日本人は「ゴリアテ(英語読みでゴライアス)」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
アニメ「天空の城ラピュタ」に登場する空中戦艦? 『野田ともうします。』の主人公野田さんがしりとりで「りんご」の次に言ってしまうもの?
いやいや日本人でもダビデとゴリアテぐらい知ってますって(今、速攻Wikipediaで調べました)。ゴリアテは旧訳聖書に登場するペリシテ人。3メートルの身長をもつ巨人です。ユダヤとの戦争中、のちにユダヤの王となる若き羊飼い、ダビデに倒されます。このときダビデが使ったのが石投げ器。体の小さなものが、勇気と技で大きなものに勝つ、という寓話でもあります。
このゴリアテのエピソードを描いたマンガ。
●トム・ゴールド『ゴリアテ』(金原瑞人訳、2013年パイインターナショナル、1900円+税、amazon)
出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。
B5判でハードカバー、全二色。100ページ弱の日本の感覚でいうと中編です。原著は2012年発行。すでに英語以外の四言語に翻訳されており、本年さらにフランス語と日本語に翻訳される予定。
著者はスコットランド人でロンドン在住。本書はイギリス生まれのグラフィック・ノヴェルです。
著者トム・ゴールドはこういう絵を描くひと(→グーグルの画像検索結果)。シンプルで端正な絵ですね。
さて本来のゴリアテのエピソードでは、もちろんヒーローはダビデでゴリアテは巨漢の敵役です。しかし本書はゴリアテが主人公として描かれたマンガ。
ゴリアテはひとなみはずれた巨人ですが心やさしい人物。じつは戦闘より事務仕事のほうが得意だったりします。そういう彼が上司の計画でただひとり最前線に送り込まれます。
敵味方の中間点、エラの谷に40日間たたずむゴリアテ。彼は荒野に美を感じるようになり、捕獲され見世物になっていたクマが逃げるのを見て何を思うか……
というマンガになってます。戦場における正邪の相対性。これが旧訳聖書を題材に、静かな静かなグラフィック・ノヴェルとして再構成されました。
おそらくはこのエピソードを日本人より詳しく知っているキリスト教徒のほうが、いろいろ考えるところが多いのじゃないかな。
それにしてもこういう地味だけど優れた作品が日本語で読めるのも、最近の海外オルタナマンガ邦訳ブームのおかげ。ありがたいことです。
Comments
ミリタリ分野ではWW2でナチス・ドイツ国防軍が使用した、小型の有線誘導のキャタピラ駆動の動く爆弾兵器ですよね、ゴリアテ。
ノルマンディーとかワルシャワ蜂起で使用されたけれども、メカニズム的に脆弱(振動に弱い。お粗末。)で小銃の射撃でも壊せるくらいの装甲、鈍足、乗り越えられる高低差があまりに低い(12cm弱!)、有線が切れたらおしまい、と、役立たずで終わったようです。
でも、WW2末期のドイツ軍歩兵には人気があったとか。まあ自分が戦わなくていいですからね。壊れたら、「ううぬ、運が悪い!」とばかりに、さっさと退却できますし。
小よく大を倒すということで、本来はダビデと命名するべきところですが、ナチスにはユダヤ王の名前は付けられなかったらしい。
以上、ウィキペディアにお世話になりました。
無人誘導兵器って、いつの世の軍隊でも魅力的なんですねぇ。
でも敗戦国の、こういうトンデモ兵器って妙に頓珍漢なところが面白い。まあ当時は、とりあえず何でもかんでも必死だったんでしょうなぁ。日本の風船爆弾もしかり。
でも、ドイツ軍のゴリアテに、後方からの狙撃で即時に爆発するようなメカニズムが無かったのはどうしてでしょう?
敵陣まで行かなくても、せめて爆発ぐらいはねぇ。
せっかく高性能爆薬をたくさん積載しているのに。
与党幹事長の趣味っぽくなりました。
いや、失敬。
Posted by: トロ~ロ | March 26, 2013 02:07 AM