遺稿にして埋もれた名作『地上の記憶』
双葉社はいい本を出したなあ。
●白山宣之『地上の記憶』(2013年双葉社、1200円+税、amazon)
2012年に早逝した著者の遺稿集として編まれた短篇集です。安部慎一、泉晴紀、大友克洋、さべあのま、鈴木翁二、高寺彰彦、高野文子、谷弘兒、谷口ジロー、平田弘史、ほんまりう、山本おさむがメッセージやイラストを寄せていて、カバーデザインは大友克洋。
収録されているのは1979年から2003年までに描かれた短編五作。1979年『Tropico』はロベール・アンリコの映画「冒険者たち」みたいな、しゃれた感じの活劇。
2003年の『大力伝』は平田弘史のマンガ『怪力の母』を、別人を題材にしてリメイクしたような作品。絵や語り口も平田タッチに似せるというムチャをしてて、しかも成功しているのがすごい。
おどろいたのが2001年『ピクニック』。関ヶ原の戦いを「物見遊山」として見物する農民たちを描いた作品。おそらくこういう視点で描かれた時代劇は、小説、映画を含めて前代未聞じゃなかろうか。
そして1991年『陽子のいる風景』、1992年『ちひろ』にはやられた。山本おさむの解説にあるようにマンガで描いた小津安二郎映画。
説明的なセリフを完全に廃し、動線や漫符をできるだけ使わず、小さなコマにいたるまできっちりと背景を書き込む。日本を舞台にした典型的な日本マンガなのに日本マンガじゃないみたい。これ、描くのにすごく時間かかってるよなあ。
劇的なことは何も起こりませんが、この胸に迫る読後感はどうだ。この埋もれていた二作を読むだけでも本書の価値があります。ほんとに出版してくれてありがとう。
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Comments
白山宣之さんの娘さんのブログがありました。
父親の絵を紹介しつつ、静かに思い出を語る
味わい深い文章が印象的です。
http://chijounokioku.blog.fc2.com/
Posted by: ハリマ | February 03, 2013 09:35 AM
今日(2013/1/28)の「ののちゃん」で、キクチ食堂にロカちゃんのポスター貼ってありましたね。着実に活動を続けてるみたい。
Posted by: 漫棚通信 | January 28, 2013 10:51 PM
いしいひさいち先生のHPの四コマ漫画でロカちゃんの本名(漢字)が判明しました。
「吉川露花」でした。
Posted by: トロ~ロ | January 28, 2013 10:42 PM