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December 19, 2012

四十年前の投稿マンガ

 最近、顔から火が出るような体験をしたのでちょっと書いておきます。

 先日、実家の母から電話があったとき、「ヘンな葉書がきてるで」と。「なんやマンガがどうのこうのと」

 出版社から献本をいただくこともあるのですが、だからといってわたしの実家の住所が世間に知られているはずもなく。頭上にクエスチョンマークを浮かべながら、「また今度行ったとき渡して」としばらく放置していました。

 で、先週末にこの葉書を受け取ったのですが、この内容にぶっ飛んだ。葉書はかつて「ぐら・こん」関西支部長だった中島隆氏からのものでした。

 四十年前、虫プロが発行していた「COM」という雑誌があって、手塚治虫『火の鳥』などが連載されていました。そこのマンガ読者投稿欄のタイトルが「ぐら・こん」。この投稿欄からは多くのプロマンガ家が誕生したことで知られています。

 中島隆氏からの葉書によると、かつてわたしが「ぐら・こん」に投稿したマンガ原稿が返却されずに残っていると。でもって「ぐら・こん」ホームページというところに、その原稿のタイトルページ画像を掲載しているので連絡してくれ、とのことでした。

 どしぇー。

 いやいやいや、わたしもマンガ好きなので、そりゃ小学生時代にはつけペンで絵を描いたりしたこともありました。つけペンでは画用紙もモゾウ紙もケント紙も、すべて描きにくいことも知ってます。枠線を引くとけっしてまっすぐは引けないし、三回に一回は定規の下にインクが流れ込むことも経験してます。高校時代には同人誌(肉筆の時代ですな)にアメコミの模写イラストで参加したこともありました。

 ただし根性がないから、ストーリーマンガはすべて途中で投げ出してきました。お話をラストまで完成させたことは一回もないっ、と自信を持ってこれまで断言してきたのです。

 そんなわたしが「COM」に投稿していた? そんなバカな…… と「ぐら・こん」ホームページをのぞいてみると。

 いやー、全身から汗が吹き出た。顔から火が出た。いつ投稿したかまったく覚えてない。内容もまったくわからない。でもこれはわたしの絵だよ。

 恥を忍んで当該ページにリンクしておきます。

 投稿時期を計算すると、中学生のころか? 中二病という言葉があるように、中学生男子は人生でいちばんバカ、ということになっています。ですからわたしもまちがいなくバカでした。

 なんでしょこの「雪」とか「月」を使ったペンネームは。恥ずかしー。タイトルが地味すぎ。タイトルページの絵にまったく動きがなくてダメ。どう考えても多彩なエピソードにいろどられた楽しい作品のはずはなく、自意識過剰の観念的(しかも中学生が考えるカンネンテキね)なじとーっとした作品に違いない。恥ずかしー。内容ぜんぜん覚えてないけど。

 こんなものとは再会したくなかった。破って捨ててしまいたいっ。

 しかし多くのひとが関わって、わたしに原稿を返却してくれようとしているわけで、そういうわけにはいきません。ありがたいことなのです。

 葉書を出してくださった中島隆氏、「ぐら・こん」ホームページの主催者、さいとうてるひこ氏、霜月たかなか氏に連絡を取りました。

 霜月たかなか氏によりますと、わたしの原稿は、作品評を依頼されたあるマンガ家から「COM」が終了したのち編集部に返却されたものだそうです。元「COM」編集長の石井文男氏が長く保管されていたものを、「ぐら・こん」ホームページの好意で「たずねびと」欄に掲載していただいた、という経緯。

 原稿には当時のわたしの住所が記載されていたので、葉書で連絡を取ることができた、とのこと。みなさま、本当にありがとうございます。

 ご親切のおかげで過去の自分と対面することができます。破って捨ててしまいたいなんて言っててはいけませんね。

 しかしこの作品について、ここまで記憶がないとは。よほど忘れてしまいたい何か秘密でも隠されてるのかしら? じつを言いますと、なつかしい、うれしい、楽しみ、という感情よりも、見るのがこわい、恥ずかしい、どこかに隠れてしまいたい、という気持ちでいっぱいなのです。

 もうすぐ原稿とご対面できることになっていますが、そうなったらホントに破って捨ててしまいそうなので、見ないうちにこの文章をアップしておきます。あー。

     ◆

 さて「COM」についての本がまた出版されています。

●『ガロ/COM 漫画名作選 1巻 1964-1970』
●『ガロ/COM 漫画名作選 2巻 1968-1971』
(2012年講談社、各1280円+税、amazon

「ガロ」「COM」漫画名作選1 1964-1970 「ガロ」「COM」漫画名作選2 1968-1971

 「ガロ」と「COM」、同時代にライバルだった雑誌、両方から作品を選んだアンソロジー。1巻は大御所作家中心、2巻は(当時の)新進作家作品がずらっと並んでます。どちらも豪華なラインナップ。

 特筆すべきは、本書は雑誌から復刻されたものなので、マンガだけじゃなくて記事やコラム、出版広告なども見ることができるのです。当時の雰囲気がそのまま伝わるものになっていて、これは楽しい。みんながあの頃の雑誌を手に取れるわけじゃないので、歴史的にも意味があります。

 マンガがこれから勃興していこうという時代。その時代の匂いがわかる本になってます。

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Comments

ペンネームも絵もザ・中2病ですごく楽しめました。

Posted by: 紙屋研究所 | December 19, 2012 10:35 PM

からかうひとは、出入り禁止にしますよっ。

Posted by: 漫棚通信 | December 19, 2012 10:44 PM

きゃああああっ~~。

・・・これはもう竹熊さんのお父上の青春時代の創作を紹介されたとき以来の衝撃。

返却のおりには全頁掲載なんてことに…

脛に傷を持つ身としては、我が事のように、は、恥ずかしい。身悶える。

Posted by: トロ~ロ | December 20, 2012 12:54 AM

これはこれで当時のアマチュア漫画の貴重な歴史的資料だとおもいます。
当時漫棚さんが何を考えていたのか、誰に影響を受けたのか…など、
大変興味深い!全部読んでみたいです…。

Posted by: いっとうさい | December 25, 2012 11:00 PM

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