« November 2012 | Main | January 2013 »

December 26, 2012

書店員が世界を廻す

 タイトルは釣りです。

 さてマンガ系年末ベストテンも各社のものがそろって一段落。次にくるのは来年の「マンガ大賞」かな。

●「ダ・ヴィンチ」2013年1月号(2012年メディアファクトリー、467円+税、amazon
●「このマンガがすごい!2013」(2012年宝島社、476円+税、amazon
●「フリースタイル21号 特集:THE BEST MANGA 2013 このマンガを読め!」(2012年フリースタイル、888円+税、amazon
●「オトナファミ」2013年2月号(2012年エンターブレイン、657円+税、amazon

ダ・ヴィンチ 2013年 01月号 [雑誌] このマンガがすごい! 2013 フリースタイル21 特集:THE BEST MANGA 2013 このマンガを読め! オトナファミ 2013年 2月号 [雑誌]

 「ダ・ヴィンチ」のアンケートに答えたのは、E-mailアンケート会員+書店員+リサーチ会社のアンケート会員。つまり一般読者と書店員ですね。小説とかも対象なのでマンガに投票したのが何人なのかはわかりませんが、有効回答は4625通だからちょっとすごい。

 「本読みのプロ」としてマンガ系は6人のかたが参加してるけど、これも同様に集計されてるのかな? 大森望が海外文学として挙げた『闇の国々』はマンガとしてカウントされたのかどうか。

 多数の一般読者によるランキングですから、人気投票となってしまうのはしょうがないところ。男性誌コミックが一位『銀の匙』、二位『ONE PIECE』、三位『宇宙兄弟』。女性誌コミックが一位『ちはやふる』、二位『君に届け』、三位『夏目友人帳』というのはほんと順当。順当すぎて驚きはないです。

 「このマンガがすごい!」については先日書きましたが、オトコ編一位の『テラフォーマーズ』に関してはわたしまったくのノーマーク。「このマンガがすごい!」発売日の翌日には、新しいオビのついた『テラフォーマーズ』が書店に大量に平積みされてましたから、出版社も書店も、ブックガイドとして「このマンガがすごい!」のブランドをじゅうぶんに利用しているわけですね。

 さてフリースタイル「このマンガを読め!」の一位は『ぼくらのフンカ祭』。こちらのほうがしっくりくるのはトシのせいでしょうか。もひとつ本年、特筆すべきなのが『闇の国々』が四位に入ったこと。この種のベストテンで、海外作品がここまで高得点を得たのはおそらく初めてのことでしょう。海外作品の邦訳が増えたことももちろんですが、日本人読者の意識が変化してきたのかもしれません。

 また今年の「このマンガを読め!」は、選者が十作を挙げる方式に変更されました(昨年までは五作)。他のアンケートは三作とか五作ですから、この方式は結果にそうとう影響を与えたと思います。ちなみにわたし漫棚通信も「このマンガを読め!」のアンケートに参加して、自信の十作を挙げておりますのでよろしく。

 「オトナファミ」の「コレ読んで 漫画ランキング BEST 50」は、全国3000店舗の書店員にアンケートしたもの。数千の単位ですから「ダ・ヴィンチ」に負けてません。

 これがちょっと他のものとはちがった結果になってます。一位『暗殺教室』、二位『かくかくしかじか』、三位『マギ』。メジャーだけど、ちょっと裏メニュー的な作品、という感じなのでしょうか。これも書店員さんたちの「これを売りたい」と思う気持ちの反映か。

     ◆

 こういうベストテンは、まず権威となるものがあって、それに対するカウンターとして出てきたものがおもしろい。映画なら「キネマ旬報」ベストテンに対抗する「映画芸術」ベストテンとか(今なら「映画秘宝」ベストテンのほうが有名なのかしら)。

 「このミステリーがすごい!」も最初は、権威となってた「週刊文春」のベストテンに対抗して始まったんだっけ。「本屋大賞」も反「直木賞」で始まったらしいですね。

 でも反権威もいつもまにか権威に変容していくのも世の流れ。今では「このミス」も「文春」も似たような作品を選んでるし、「本屋大賞」もすでに人気がある作品、映像化しやすい作品ばかりが賞をとって、あまりとんがった作品が選ばれない、という批判もあるようです。

 マンガのベストテンも、もともとは出版社主催の漫画賞に対するカウンターとして登場したのだと思います。ただし宝島社が「このマンガがすごい!」で参入したときには、すでに「このミステリーがすごい!」ブランドがばっちり確立されていました。ですから「このマンガがすごい!」はむしろ最初から権威化していて、商売・販促として利用できるものでした。

 このあたりが、おそらく「日の当たらないマンガに愛の手を!」という精神で始まったであろうフリースタイル「このマンガを読め!」とちがうところ、なのじゃないかしら(出版の意図は別にして、その影響や利用のされかたがちがう、と言う意味です為念)。

 ほんとは「このマンガを読め!」のほうが「このマンガがすごい!」より少しだけ古いパイオニアなんですけどね。

     ◆

 さて、とくに今年感じたのですが、マンガのベストテンって今や書店員さんたち抜きでは成立しない、くらいになってるのね。現在その影響はでかい。

 「オトナファミ」のベストテンは書店員ばかりのアンケートですが、3000店舗というのがすごい。おそらく無報酬だと思いますが、みなさんきちんと協力してるんですね。

 フリースタイル「このマンガを読め!」で書店関係者は50人中7人、14%ですが、「このマンガがすごい!」になりますとオトコ編が99人中24人で24%、オンナ編が76人中24人で32%とそうとうな高率を占めてます。

 実際、今年の「このマンガがすごい!」で『テラフォーマーズ』がオトコ編トップになったのは、書店員さん票のおかげであることはまちがいありません。

 「ダ・ヴィンチ」も内訳は公表されていませんが、書店員さんへのアンケートが施行されています。

 さらにここ数年、大きく報道されるようになった「マンガ大賞」も、選者は書店員中心であると公表されています。これはこの賞が「本屋大賞」を参考につくられた、という経緯もあるのでしょう。

 つまり、現在の日本マンガベストテンの多くが、書店員の手の平の上で踊っている…… いやいやいや、陰謀や談合や組織票や秘密結社を疑っているわけではありません。書店員さんたちはもっともマンガに接する人たちであることはまちがいないし、彼らのマンガに対する見識がしっかりしていれば、何の問題もありません。

 賞やベストテンがマンガの売り上げに影響を与えるのは確かなので、書店としての協力は当然のことですね。

 ただし将来への問題点がひとつ。今後さらに電子書籍化が進んでいくと、紙としては単行本化されないけど電子書籍としてはまとまって読める、というマンガも増えてくるのじゃないか。現実にそういう作品も存在しました。

 現状、上記四つのベストテンのうち、対象として電子書籍が含まれているのは、フリースタイル「このマンガを読め!」だけ。多くのベストテンや賞は電子書籍を含んでいません。

 そりゃま、電子書籍に賞をあげても、書店の売り上げにはなんら寄与しませんから。むしろ書店にとって電子書籍は敵。実際にわたしがキンドル本を買えば、ご近所でのその本の売り上げが一冊減るわけですし。

 今後、各種マンガベストテンは対象としての電子書籍を無視することを続けるのか? もし対象にするにしても、選者の書店員さんたちは、完全に敵であるところの電子書籍に投票するのかどうか?

 とか書いておったところ。昨日ご近所の書店に行ってみると、書店で電子書籍の販売をしていた。最近はそんなサービスも始まってるのね。街の本屋さんはたいへんだ。出版の将来はどうなる。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

December 24, 2012

クリスマス・イブ日記

 本日はクリスマス・イブで休日。朝に妻のお供でケーキ屋さんに予約注文していたクリスマスケーキを取りに行く。

 その後最近購入したDVD、ビリー・ワイルダー「シャーロック・ホームズの冒険」を鑑賞。ワトソン役のコリン・ブレイクリーに大笑い。マイクロフト役のクリストファー・リーかっこいい。

 ごろごろマンガ読み進む。昨日買ってきて読んだ『げんしけん 二代目の四』をもういちど。なんか時代もマンガも6年前に戻ってて、これでいいのかとちょっと悩む。

 年末の楽しみのひとつは、各種ベストテンに推薦されてたけど読みのがしてたマンガを読むこと。冬川智子『マスタード・チョコレート』がわたしの考えるところの「少女マンガ」ぽくっていい。ちなみにわたしの考える少女マンガってのは、めんどくさい少女たちがめんどくさい思考をしながらめんどくさい人間関係を生きるというものです。

 録画していたラグビー・トップリーグ、神鋼対パナソニック見る。神鋼は惜敗だったけど、ジャック・フーリーその他ケガで休んでる外国人が多くて、ちょっと勝てる気がしなかった。

 その後、ためこんであったアメコミを読み進む。『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』は今年の邦訳中最もびっくりした作品で、その続編で新展開となる 『スパイダーマン:ブランニュー・デイ』1巻も楽しめた。安定してるね。DCに移って『ジャスティス・リーグ:誕生』も読了。『ブランニュー・デイ』と同様に、『フラッシュポイント』以後のリニューアル新世界のお話。スーパーマンのパンツの色が気にくわない。その後『アルティメッツ』を読み始める。まだ冒頭だけだけどわくわくする展開。

 イブの夕食はチキンとカナッペとスパゲッティ。ワインは白とロゼのスパークリング一本ずつ。

 さて今年の年末年始はアルゼンチンのマンガ、ヘクター・オスターヘルド/フランシスコ・ソラノ・ロペス『EL ETERNAUTA』というSFマンガを読む予定。当然ながらスペイン語作品。わたしスペイン語読めませんので、グーグル翻訳のスペイン語→英語をフル活用することになるでしょう。

 オスターヘルドはアルゼンチンでは有名なマンガ原作者で、1977年、ときの政府に暗殺されたと言われています。政府がマンガ家を暗殺するってのはどういう社会やねん。というのと、政府ににらまれるSFマンガがどんなものか知りたい。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

December 19, 2012

四十年前の投稿マンガ

 最近、顔から火が出るような体験をしたのでちょっと書いておきます。

 先日、実家の母から電話があったとき、「ヘンな葉書がきてるで」と。「なんやマンガがどうのこうのと」

 出版社から献本をいただくこともあるのですが、だからといってわたしの実家の住所が世間に知られているはずもなく。頭上にクエスチョンマークを浮かべながら、「また今度行ったとき渡して」としばらく放置していました。

 で、先週末にこの葉書を受け取ったのですが、この内容にぶっ飛んだ。葉書はかつて「ぐら・こん」関西支部長だった中島隆氏からのものでした。

 四十年前、虫プロが発行していた「COM」という雑誌があって、手塚治虫『火の鳥』などが連載されていました。そこのマンガ読者投稿欄のタイトルが「ぐら・こん」。この投稿欄からは多くのプロマンガ家が誕生したことで知られています。

 中島隆氏からの葉書によると、かつてわたしが「ぐら・こん」に投稿したマンガ原稿が返却されずに残っていると。でもって「ぐら・こん」ホームページというところに、その原稿のタイトルページ画像を掲載しているので連絡してくれ、とのことでした。

 どしぇー。

 いやいやいや、わたしもマンガ好きなので、そりゃ小学生時代にはつけペンで絵を描いたりしたこともありました。つけペンでは画用紙もモゾウ紙もケント紙も、すべて描きにくいことも知ってます。枠線を引くとけっしてまっすぐは引けないし、三回に一回は定規の下にインクが流れ込むことも経験してます。高校時代には同人誌(肉筆の時代ですな)にアメコミの模写イラストで参加したこともありました。

 ただし根性がないから、ストーリーマンガはすべて途中で投げ出してきました。お話をラストまで完成させたことは一回もないっ、と自信を持ってこれまで断言してきたのです。

 そんなわたしが「COM」に投稿していた? そんなバカな…… と「ぐら・こん」ホームページをのぞいてみると。

 いやー、全身から汗が吹き出た。顔から火が出た。いつ投稿したかまったく覚えてない。内容もまったくわからない。でもこれはわたしの絵だよ。

 恥を忍んで当該ページにリンクしておきます。

 投稿時期を計算すると、中学生のころか? 中二病という言葉があるように、中学生男子は人生でいちばんバカ、ということになっています。ですからわたしもまちがいなくバカでした。

 なんでしょこの「雪」とか「月」を使ったペンネームは。恥ずかしー。タイトルが地味すぎ。タイトルページの絵にまったく動きがなくてダメ。どう考えても多彩なエピソードにいろどられた楽しい作品のはずはなく、自意識過剰の観念的(しかも中学生が考えるカンネンテキね)なじとーっとした作品に違いない。恥ずかしー。内容ぜんぜん覚えてないけど。

 こんなものとは再会したくなかった。破って捨ててしまいたいっ。

 しかし多くのひとが関わって、わたしに原稿を返却してくれようとしているわけで、そういうわけにはいきません。ありがたいことなのです。

 葉書を出してくださった中島隆氏、「ぐら・こん」ホームページの主催者、さいとうてるひこ氏、霜月たかなか氏に連絡を取りました。

 霜月たかなか氏によりますと、わたしの原稿は、作品評を依頼されたあるマンガ家から「COM」が終了したのち編集部に返却されたものだそうです。元「COM」編集長の石井文男氏が長く保管されていたものを、「ぐら・こん」ホームページの好意で「たずねびと」欄に掲載していただいた、という経緯。

 原稿には当時のわたしの住所が記載されていたので、葉書で連絡を取ることができた、とのこと。みなさま、本当にありがとうございます。

 ご親切のおかげで過去の自分と対面することができます。破って捨ててしまいたいなんて言っててはいけませんね。

 しかしこの作品について、ここまで記憶がないとは。よほど忘れてしまいたい何か秘密でも隠されてるのかしら? じつを言いますと、なつかしい、うれしい、楽しみ、という感情よりも、見るのがこわい、恥ずかしい、どこかに隠れてしまいたい、という気持ちでいっぱいなのです。

 もうすぐ原稿とご対面できることになっていますが、そうなったらホントに破って捨ててしまいそうなので、見ないうちにこの文章をアップしておきます。あー。

     ◆

 さて「COM」についての本がまた出版されています。

●『ガロ/COM 漫画名作選 1巻 1964-1970』
●『ガロ/COM 漫画名作選 2巻 1968-1971』
(2012年講談社、各1280円+税、amazon

「ガロ」「COM」漫画名作選1 1964-1970 「ガロ」「COM」漫画名作選2 1968-1971

 「ガロ」と「COM」、同時代にライバルだった雑誌、両方から作品を選んだアンソロジー。1巻は大御所作家中心、2巻は(当時の)新進作家作品がずらっと並んでます。どちらも豪華なラインナップ。

 特筆すべきは、本書は雑誌から復刻されたものなので、マンガだけじゃなくて記事やコラム、出版広告なども見ることができるのです。当時の雰囲気がそのまま伝わるものになっていて、これは楽しい。みんながあの頃の雑誌を手に取れるわけじゃないので、歴史的にも意味があります。

 マンガがこれから勃興していこうという時代。その時代の匂いがわかる本になってます。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

December 10, 2012

『このマンガがすごい! 2013』雑感

 買ってきましたよ、年末恒例のこれ。

●『このマンガがすごい! 2013』(2012年宝島社、476円+税、amazon

このマンガがすごい! 2013

 発売前にアマゾンの書影で結果がわかってしまう! というのがここ数年の恒例でしたが、今年の宝島社は発売開始するまでアマゾンにはダミーの書影を掲載するという慎重さ。こうでなくちゃね。

 さてオトコ編、オンナ編の一位は書影でわかっちゃうし、コミックナタリーでも記事にしてたから、バラしてもいいでしょ。オンナ編一位のアルコ/河原和音『俺物語!!』とオンナ編二位のアレは、わたしの予想どおり。えっへん。

 少女マンガをあまり読まないわたしですらこの二作は買って読んでたものですから、当たったとはいってもあまり自慢にはなりません。

 しかしびっくりしたのはオトコ編一位の貴家悠/橘賢一『テラフォーマーズ』だっ。まったくノーマークでした。

 じつはわたしの中では『テラフォーマーズ』って、田中圭一の『昆虫物語 ピースケの冒険』と同じようなマンガとして分類されてたので。いや『ピースケの冒険』はお下劣で傑作なんですけど、これをベストテンに推すひとはまあいないでしょ。

 オンナ編の『俺物語!!』が334ポイント(二位が129ポイント)でぶっちぎり一位だったのに比べ、『テラフォーマーズ』は111ポイントですからオトコ編はずいぶんと接戦でした。

 『テラフォーマーズ』がなぜ一位になったかを見てみましょう。今回の「このマンガがすごい!」は選者が五作を挙げてそれぞれ10、9、8、7、6点を割りふるアンケート方式。「有名人」「雑誌編集部」「大学漫研」「各界マンガ好き」の計52名中、『テラフォーマーズ』を挙げたのが6名。一位にしたのはひとりでした。これで44点。

 しかしこの作品、「書店」で強かった。書店員24名中7名が『テラフォーマーズ』に投票しており、一位にしたのが4名。書店員のなかではオトコ編トップの64点をかせいでいます(ちなみに『俺物語!!』も書店員さんからオンナ編ぶっちぎりトップの153点を得てます)。

 『テラフォーマーズ』はこれで計108ポイント。のこり3ポイントは大学生、専門学校生、中学生、小学生のアンケート1147票(投票人数は不明)のうち、1票1点として3票の投票があったわけですね。

 というわけで本年はとくに書店員さんの票、強し。という結果になりました。『テラフォーマーズ』はなぜか女性の書店員さんに受けてるみたいです。不思議だ。

 このほかにも『このマンガがすごい!』や雑誌「ダ・ヴィンチ」のランキングでおどろいたことがいくつかあるのですが、そういう話はまたいずれ。

 ちなみにわたしがアンケートに参加させていただいてる雑誌「フリースタイル」の『このマンガを読め!』のランキングは、きっとまったく違う結果になるでしょう。もうすぐ発売されると思いますので、そちらもよろしくお願いします。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

« November 2012 | Main | January 2013 »