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November 27, 2012

キンドルでマンガを読む

 買っちゃいましたよ、Kindle Paperwhite。ハヤリモノに弱くてすみません。ネットでは予約してなかったのですが、ご近所のケーズデンキに行くと、ソニーの電子書籍リーダーと並んでフツーに売ってました。

 やっぱ「E Ink」はそうとうなスグレモノ。PCやiPadの液晶画面でマンガや文章をけっこう読んできましたが、いやーキンドルペイパーホワイト楽だわ。液晶とちがって目はまったく疲れないし、暗いとこでも明るいとこでも平気という点は、紙の印刷物よりすぐれてるかも。

 実際ここしばらく、キンドルでずっと小説を読んでましたが(冲方丁『光圀伝』ね。中巻が終わって下巻にはいったところ)、ほんとすらすら読めちゃいます。それになんつっても物理的に軽いのが楽。寝っ転がって片手で持っててもまったく苦になりません。読めない字やわからない単語があれば、そこを指で押さえて反転させれば「デジタル大辞泉」がたちあがってたちどころに読みや意味がわかる! とくに時代小説みたいに難しい言葉が出てくるときにはありがたい機能です。

光圀伝 電子特別版 (上) (角川書店単行本) 光圀伝 電子特別版 (中) (角川書店単行本) 光圀伝 電子特別版 (下) (角川書店単行本)

 ただしこの本に関しての問題点は、紙の本が全一巻で1995円。キンドル版が600円、700円、700円の全三巻で計2000円。なんと電子書籍のほうがお高くなるという、一般常識とはちょっとずれた価格設定。おそらくわたしのような物好きしか買わないのじゃないか。カドカワ、売る気あるのか。まあ出版社の思惑がいろいろあるのでしょう。

 ほかの電子書籍書店と比してアマゾン/キンドルが有利なのは、洋書の充実であることはまちがいないところ。というわけで洋書も買ってみました。

●David Kunzle『Father of the Comic Strip: Rodolphe Töpffer』→amazon

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 近代マンガの祖、ロドルフ・テプフェールの研究書です。もともとはミシシッピ州の大学が共同して設立した出版社から刊行された本で、アチラではこういう学術書もキンドル本として流通してるんですね。

 英文のときも単語を指で押さえると「プログレッシブ英和中辞典」がすぐ立ち上がってくれる。いやー快適、と言えるくらい英語がすらすら読めればいいのですが、それでも読んでみよう、という意欲は出ますね。

 ただしこの本、図版がけっこう多いのですが、これはもうまったくダメ。キンドル上では図版の拡大がちょっとだけしかできないので、ほとんど何やらわかりません。

 アマゾンで買ったキンドル本はクラウド上に保存され、iPadやiPhoneからもキンドルアプリを使用して読むことが可能です。これはすごく簡単で手間がほとんどかからないのが便利。

 そこでテプフェールの図版をiPadから見てみましたが、こっちもひどい。「マンガ」ですから絵と文字からできてるわけです。iPadなら図版の拡大はいくらでもできますが、あまりに画像が粗くて、絵のほうは何が描いてあるかよくわからないし、字はまったく読めない。紙の本を見てないので比較できませんが、いくらなんでもここまでひどい図版ではなかろう。キンドル本にするとき、そうとうに画像を圧縮してるようです。

 キンドル、文字はオッケーですが絵に難あり。

 というわけで、マンガも何冊か買って読んでみました。

●ゆうきまさみ『機動警察パトレイバー番外編 運用マニュアル12章』Kindle版
●荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 第8部 モノクロ版』1巻Kindle版
●郷田マモラ『モリのアサガオ』1巻Kindle版

機動警察パトレイバー番外編 運用マニュアル12章 (カドカワデジタルコミックス) ジョジョの奇妙な冒険 第8部 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) モリのアサガオ: 1 (ACTION COMICS)

 角川、集英社、双葉社、各一冊ずつ。

 まず、文字ではあまり気にならなかったのですが、モノクロのコントラストがちょっと不満。マンガの絵ならもっとはっきりくっきりしてほしいのですね。このあたりは紙の本や液晶と比較すると、キンドルが明らかに劣っているのがわかります。

 さらにあたりまえですが、キンドル画面でマンガ1ページは小さすぎる。キンドルペイパーホワイトは文庫本と同じぐらいの大きさなので、大丈夫かな、と思ったのですがちょっと甘かった。マンガはやっぱ大きい画面のほうがいい。

 しかしそういう欠点があるものの、キンドルには上に書いたような利点やさらなる工夫も多い。

 キンドルペイパーホワイトでマンガを読むためのツールのひとつに「横画面モード」があります。これなら見開きもオッケー、なのですが、なんせ画面が小さすぎる。これで見る見開き二ページはほとんど豆本レベル。作者が気合い入れて描いてる絵を豆本で読まなきゃならないのはつらい。

 次に「スクリーンフィット」があります。これをONにすると余白をできるだけなくした画像になり、マンガでは余白が切られ画面に合わせて大きく表示されますので便利。

 ただし縦横比が狂います。多くは横長画像に変換されちゃって、文字も人物もけっこう太ってしまうのが難点。というか、本来の絵じゃないものを読むのもなあ。

 よく使うのが拡大機能。キンドルペイパーホワイトでマンガを読んでるとき画像や文字が小さすぎてよく見えなくなると、画面をダブルタップすると画面が拡大されます。

 ただし任意の部分が大きくなるのじゃなくて、1ページが四分割され拡大され、その四か所を画面タップで移動できる方式。四分割された画面はダブっている部分がかなり広く、それぞれを移動することで1ページの全体像を理解することが可能。って、いやいやいや、これでマンガを読むのはそうとうな特殊能力が必要。

 さて実際にマンガを読んでみますと、古典的コマ構成、少年誌らしく線が比較的単純で絵が大きい『パトレイバー』はキンドルでじゅうぶん読めました。見開きは一回だけだったし。

 見開き二ページを一単位として派手なコマ構成を多用する『ジョジョ』をキンドルで読むのはきついわー、というかほとんど不可能。とかいいながらなんとか一巻分読みとおしましたけど、さらに二巻めを読む気はおきません。

 『モリのアサガオ』はコマ構成は古典的でこれもじゅうぶん読めます。ただし作者の特徴であるふるえるような微妙な描線が、キンドル画面ではまったく見えません。これでいいのか、と思いながら読んでました。

 結局わたしの意見としましては、現在のところキンドルペイパーホワイトでマンガを読むのは不可能ではないが推奨しない、というところでしょうか。

 2012年末の日本で、電子書籍としてマンガを読むにはキンドルよりもPCあるいはiPadなどの液晶タブレットのほうがいいみたいです。今後のデバイスとしてはカラーの E ink 待ちかな。

 ただし現状で残念なのは、いろんなところから発売されてるマンガ電子書籍のファイルサイズと画質がもうひとつなことです。iPadサイズ以上に拡大すると、とても読めなくなってしまうことが多い。せめて多くの作品のオリジナルであるB5判でもじゅうぶんに読めるようになればいいのですが。

 このあたりかつてDVDで発売された「手塚治虫漫画大全集」などはそうとう拡大しても問題なく画像が美しく、むしろ現代の電子書籍のほうが劣化してたりするのですね。

 しかしこれ以上蔵書を増やしたくないわたしとしましては、今後旧作マンガはできるだけ電子書籍として買い、iPadで読む方向にシフトしていきたいと思っております。とりあえずはiPadのキンドルアプリの使い勝手がいいのでキンドルストア/アマゾンでの買い物が多くなりそうな気が。

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Comments

早川書店から出ている沖方丁のSF作品にも、文庫本三冊の合計価格より、単行本一冊の方が、わずかに安いものがありました。

沖方丁は、SFから本格時代小説までモノにして、文章力もあって、直木賞を獲れたら、平成の半村良と呼ばれるでしょうか。

Posted by: トロ~ロ | November 30, 2012 09:18 PM

なるほどです
購入はもう少し待ってみようかなと。
電子書籍になると、読み終わって、手元に置かなくてもいい本は古本屋に売り払って次の本代にということは無くなるのが残念。

Posted by: とりとり | November 28, 2012 07:22 PM

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