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October 15, 2012

「シャーロック」マンガ化

 世間一般ではまだまだマイナーな話題だと思いますが、英BBC制作のTVドラマ「シャーロック」が一部で大人気です。

 コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズはヴィクトリア時代から第一次大戦後にかけて書かれました。現代にいたるまで大人気のキャラクターで、この時代を書くフィクションにはどうしてもホームズを登場させたくなる。最近の日本作品なら伊藤計劃/円城塔「屍者の帝国」とかね。

 ホームズは史上もっとも多く映像化されたキャラクターと言われてます。誰も数えてませんがきっと世界中のマンガ作品にもたくさん登場してるに違いない。わたしが今ぱっと思いつくのは、萩尾望都「ポーの一族」シリーズの『ホームズの帽子』。出てくるのはホームズ自身じゃありませんが彼と同時代の人物です。

 ホームズは登場する作品によっては「その時代の」探偵であることもありました。ホームズ役者として超有名なベイジル・ラズボーン主演映画の多くは、1940年代前後の「現代」が舞台だったりします。

 で、今回映像化されたBBC版「シャーロック」。舞台は21世紀現代のイギリス。ここで描かれるホームズはメールやインターネットを駆使する名探偵であり、マスコミやパパラッチに追われる存在、道化でありスター、かつドイルの描いた探偵そのままの天才であり、友人としてつきあうにはかんべんしてほしいようなヤなやつ、なわけです。

 現代版「シャーロック」は2010年に本国で第一シーズンが放映されると同時に、すっごい評判になりました。もちろん作品そのもののチカラが大きいのですが、キャラクター人気もありました。

 シャーロックを演じたベネディクト・カンバーバッチが世界中でカワイー、かつカッコイーと評判になり、一気に有名人に。現在製作中の新作映画「スタートレック」では悪役カーン役を撮影済みだそうです。たしかに宇宙人っぽい顔とも言えるかな。

 ワトソン役のマーティン・フリーマンは映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」などで知られるコメディアンですが、今後は映画「ホビットの冒険」の主役ビルボ・バギンズで有名になる、はずです。

●BBC「シャーロック」のサイトはコチラ

 現代のワトソンはシャーロックの活躍をブログに書いている、という設定なので、ここからワトソンのブログに飛べたりします。そこにはシャーロックがコメント寄せたりしてて、稚気あふれてて楽しい。

 日本では「シャーロック」第一シーズン三作が2011年にNHKBSプレミアムで放映されると、カンバーバッチ人気がその筋(どの筋?)でイッキに盛り上がり、本年夏に第二シーズン三作が放映されたときには、すでに一部でビッグネームになってました。

 早川書房「ミステリマガジン」は2012年9月号で「シャーロック」を特集しましたが、かなりしょぼい内容でファンには不評。おもしろかったのが腹肉ツヤ子のマンガ『顔の長い男』だけというのはどうよ。

ミステリマガジン 2012年 09月号 [雑誌]

 日本ではごく最近、2012年10月5日に第二シーズンDVDとブルーレイ(3枚組)が発売されましたが、Amazonでは発売日当日にDVD、ブルーレイともに一瞬で品切れになったのをわたし確認しました。ウチは予約してたのでオッケーでしたけど(えっへん)。シリーズ最高傑作「ベルグレービアの醜聞」をあらためて鑑賞しましたが、アイリーン・アドラー役のララ・パルヴァー、いやーえっちでいいですな。

SHERLOCK / シャーロック [Blu-ray] SHERLOCK/シャーロック シーズン2 [Blu-ray]

 この「シャーロック」、日本の雑誌でマンガ化されました。角川書店「ヤングエース」で2012年11月号から第一話「ピンク色の研究」が連載開始。

ヤングエース 2012年 11月号 [雑誌] Img_4

 画像右は「シャーロック2」ブルーレイに挿入されてたチラシね。

 日本よりも海外のファンサイトで評判になってるらしいです。わたしがこの作品の存在を最初に知ったのもドイツの情報源から。いかにこの話題がワールドワイドであるか。

 ヤングエース2012年11月号を買ってきたのですが、クレジットは「脚本:スティーヴン・モファット、マーク・ゲイティス」とTV版と同じ。「漫画:Jay.」という作画担当のかたは存じ上げませんでした、すみません。BL方面のかたかな。

 さて世界(の一部のファン)が注目してるマンガ版「シャーロック」について。

 セリフは脚本どおり、というかBSプレミアムで放映された日本語吹き替え版とほぼ同じ。邦訳は訳すひとによってずいぶん変わっちゃうので、ちょっとは独自に翻訳してるかと期待してんたんですが、そういうことはありませんでした。

 人物はカンバーバッチやマーティン・フリーマンそっくりに似せてます。ここまで似せたうえでマンガのキャラクターとして動かせるのはお見事。よくできてます。さらに登場する風景、小物のデザインや、構図までテレビ版にそっくり。

 最初の見せ場となるシャーロックの初登場シーン、遺体が納められた袋を開けるシャーロックの顔が下からのカメラで上下逆に描写されるところなど、オリジナルTVどおりです。

 わずかに違うのは、ワトソンの心の声、かな。このあたりオリジナル脚本にはない、マンガ独自の部分です。しかし全体に見ると、脚本、キャラクター、構図すべてTV版どおり。堅実な仕上がりですね。

 これでマンガになるのかというと、これがけっこうマンガとして読ませるのですね。すぐれた脚本があって、さらにお手本となる映像があれば、マンガは成立してしまう。

 この作品にはじめて接する読者はそれなりにおもしろく感じるでしょう。しかしTV版をすでに見た読者には視聴体験をくりかえすだけで新しい発見はありません。

 でもまあ、同じ素材でマンガと映像の両方が楽しめるのは、それぞれ別の脚色があるからですよね。

 つまり、「アニメ←原作小説→マンガ」ならアニメやマンガそれぞれの脚色が見どころ、なわけです。しかし「脚本→映像作品→マンガ」となると、どうしたってマンガは映像に引きずられてしまう。

 わたし現代のメディアミックスにくわしくありませんが、完成したアニメや映画が先行してて、マンガがあとからつくられる場合、「シャーロック」と同じようになっちゃうのかもしれません。

 だってそこにビデオないしDVDがあるんだもんね。静止画にすればそれを見ながら、そっくりの絵を描けてしまう。

 かつてはこういうことってありませんでした。映画やアニメの「コミカライズ」は、映画を見て、記憶して、演出や構図を自身の脳内で再構成した上で描かれてたのです。じつはそっちのほうが、脚色の自由度が高かった。昔は良かった、といってもしょうがない。

 「シャーロック」でも、びっくりするような演出上の工夫は困難としても、三頭身化するとか、ギャグいっぱい入れるとか、極端にBL化しちゃうとか。海外に著作権が存在する作品で、ないものねだりであるのはわかってるのですが、そこまで期待するのは無理なのかなあ。腹肉ツヤ子の六ページマンガに負けてちゃダメでしょ。

 マンガが関係したメディアミックスで、最近の世界的話題といえばステファニ・メイヤーによるアメリカ版ラノベ、女の子とハンサム吸血鬼のロマンス「トワイライト」でしょう。映画版はご存じのとおり大ヒットだし、キム・ヨンの描いたグラフィックノヴェルもアチラでは絶賛発売中(ソフトバンクから出た邦訳はみごとにコケたみたいですが、下巻の発売はどうした)。

 日本マンガ版「シャーロック」もデキによっては世界をマーケットにできるはずなんですけどね。がんばってほしいなあ。

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Comments

もとのマーケット規模にやや差があるでしょうが、森田崇が忠実にルパンものを漫画化した「アバンチュリエ」も、もう少し海外で騒がれてもいいと思うんですがね。

日本だけの「著作権50年で消滅」規定に基づいて漫画にしたから、ルブランの権利が生きている他国では簡単に手が出せない、ということもあるのでしょうが・・・

最近、twitterで「連載打ち切りが決まったが、移籍先を公開で探したい!」と表明し話題になりました。
http://togetter.com/t/%E6%A3%AE%E7%94%B0%E5%B4%87

Posted by: Gryphon | October 15, 2012 08:42 PM

「アバンチュリエ」好きだったので残念です。ルパンものってホームズと違ってみんなきちんと読んでないんですよね。創元は今も「リュパン」なんだよ、みんな知ってるか-?

Posted by: 漫棚通信 | October 15, 2012 08:55 PM

はてさて。
シャーロキアンはルパン嫌いが多いかな?
・・・三世は除いて。

Posted by: トロ~ロ | October 16, 2012 08:42 PM

>現代のメディアミックス…

アニメ版とちょっとでもイメージが違うと
amazonレビューでボロクソにたたかれるみたい
ですよ。

Posted by: 完全防水 | October 16, 2012 11:31 PM

同じ原作で、ラノベ(イラスト?)、コミック、コミックのアンソロジー、アニメ(TV版・劇場版)とメディアを変えて出るのが現代版メディア・ミックスですが、コミックが原作である場合以外は、コミックが比較的不利なようです。

ラノベ、コミックは古典的な意味では「時間芸術」ですが、アニメは「総合芸術」。音楽にBGMに声にアクションにと訴求力が違います(金もかかっているし)。小説形態は読者の想像力に「おまかせ」できるのが強みですね。

キャラクターの同一性はコミックの作家が一番苦労するところらしく「とある魔術の禁書目録・とある科学の電磁砲」のコミックの折り返しで「ときどきキャラクター設定を見返して顔や絵の補正を行う。自分のクセが出てしまうから」のような記述がありました。

この夏のアニメではかなり面白かった「人退」のコミカライズはなんと2種類あって、大きく脚色したバージョンの方が「コミックとしての出来」が良いのです。オビに「1冊で終わるのが惜しい」という原作者・山田ロミオ氏のコメントがあったり。

Posted by: トロ~ロ | October 18, 2012 01:35 AM

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Tracked on October 15, 2012 08:37 PM

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