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October 25, 2012

ホント雑談ですみません

 ネットで長くブログやってますと、過去記事に多くのひとが来訪することがあります。

 多くはTVがらみでして、ウチならば映画「20世紀少年」シリーズがTVで放映されるたびに来訪者がどっと増えます。TVを見てネット検索したみなさんがウチの「カツマタ君て、だれっ」というエントリにたどりつかれるみたいです。

 『20世紀少年』が終わってもう5年なのかー。それにしても連載中の『BILLY BAT』のどうでもいい感ってなんなんだろ。新刊が発売されるたびに残念な気持ちになってきます。

 わたしにとって最大の不満は、作中に書かれてるアメリカのコミックスが、まったくそれらしく見えないところ。文法も絵も完全に日本マンガ、しかも現代のそれであるところ。アメリカの昔のマンガってこんなのじゃないと思うけど。

 いつも『BILLY BAT』の新刊をぷんぷんしながら読んでます。だったら買うのをやめろという話ではあるのですが、なかなかそうはいかないのがマンガ読みのサガでしょうか。

     ◆

 もひとつ。TVで映画「スパイダーマン」が放映されるたびに、ウチの「なぜキルスティン・ダンストがスパイダーマンのヒロインなのか」というエントリへの来訪者が増えます。

 日本人の目からは、キルスティン・ダンストってあんまり美人じゃないように見えるのに、なぜアチラではあんなに人気があるのか。それは彼女のキャリアや実生活と関連してるらしい、というお話です。

 もしかしたら映画のヒロインっていつもそんな感じで選ばれてるのかも。と思ったのは、本年公開の映画「アメイジング・スパイダーマン」のヒロイン、グウェン・ステイシー役にエマ・ストーンが選ばれたから。目がすっごく大きな女優さんで、わたし大好きです。

 エマ・ストーンって「スーパーバッド 童貞ウォーズ」ではデブの童貞ボンクラ男にやさしくする天使のような女性だったし、「ゾンビランド」でも童貞主人公を包み込む天使を演じてたんだよねー。これがあってこそ「スパイダーマン」のヒロインなわけです。誰かいまのうちに「なぜエマ・ストーンがスパイダーマンのヒロインなのか」という文章を書いてくんないかしら。

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 いつもお世話になってるミニコミ誌「漫画の手帖」の次号、64号に寄稿させていただいたのは、アメリカ1920年代から流通していたエロパロ、というかエロ系二次創作マンガである「Tijuana Bible」についての文章。

 「Tijuana Bible」と呼ばれる、ポパイやブロンディやミッキーやドナルドが痴情のかぎりをつくす下品でイリーガルなマンガこそ、現代日本コミケにおける状況の源流である、という趣旨の文章です。

 ところがちょっと困ったことがあって、「Tijuana Bible」の「Tijuana」ってメキシコの都市名で、スペイン語で「ティフアーナ」、英語では「ティワーナ」に近い発音。ですから日本語では「ティワナ・バイブル」と書くべきか、あるいは「ティフアナ・バイブル」と書くべきか。

 Wikipediaでは「ティファナ・バイブル」の表記ですが、これってちょっと違うんじゃないかと思って「漫画の手帖」では「ティワナ・バイブル」の表記を使用しました。外国語表記はいつも難しいっす。有力な先例があればいつもそれに従うのですけど。

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 ついにiPad mini 発表、と思えば翌日には日本版キンドルの発売が発表。いやもうどうすればいいんだよう、という状況です。

 二年前の発売日に予約して買った初代iPad、じつはボタンがヘタれてきて、そろそろ買い換えかなーと思っていたところなのですよ。iPad が家庭内でどういう役割を果たすか、この二年間の経験で言いますと、スマホもそうかもしれませんが、やっぱ辞書としてばんばん使える。世界に開かれた百科事典としてのiPad。これを一度手にしてしまうと、あまりの便利さに手放すことはできません。

 ただし、iPad 重い。しかも液晶って長時間の読書にはどうかと思ってしまう。iPad の大きさはB6判の青年マンガ単行本とほぼ同じで、これ以上小さくするのはちょっと、と思いますし、いろいろと不満があるわけです。なんつっても読みやすさは紙のマンガが明らかにまさっている。

 本日は妻のためにニューiPod nano をご近所の電器店に買いに行ったついでに、発売中の現行iPad をながめてきました。軽くなったし画質も良くなってる。ところが、もひとつオドロキがない。

 いやいやぜいたくな迷いで、ワガママ言ってるのは承知なのですが、二台目買うよりはキンドルか?

 今回は手にしたことがないキンドルを買ってしまいそうな感じ。でも、モノクロのキンドル・ペイパーホワイトかカラーのキンドル・ファイアHDのどちらを選ぶかべきか。

 モノクロのキンドルがすぐれているのは知ってるのですが、大きさがねー。マンガ好きとしては、その機器で漫画が読めるのか、というのが大きな問題。今後の電子書籍時代のマンガはきっとカラーになるだろうしなー。でもカラーのキンドルはiPad と同じようなものじゃないのか? いやー迷う迷う。

 日本の電子出版の話題って、マンガこそ、その中心にあるのじゃないのかしら。いよいよ来年末には、マンガをめぐる状況ががらっと変わっちゃってるかもしれません。

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October 15, 2012

「シャーロック」マンガ化

 世間一般ではまだまだマイナーな話題だと思いますが、英BBC制作のTVドラマ「シャーロック」が一部で大人気です。

 コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズはヴィクトリア時代から第一次大戦後にかけて書かれました。現代にいたるまで大人気のキャラクターで、この時代を書くフィクションにはどうしてもホームズを登場させたくなる。最近の日本作品なら伊藤計劃/円城塔「屍者の帝国」とかね。

 ホームズは史上もっとも多く映像化されたキャラクターと言われてます。誰も数えてませんがきっと世界中のマンガ作品にもたくさん登場してるに違いない。わたしが今ぱっと思いつくのは、萩尾望都「ポーの一族」シリーズの『ホームズの帽子』。出てくるのはホームズ自身じゃありませんが彼と同時代の人物です。

 ホームズは登場する作品によっては「その時代の」探偵であることもありました。ホームズ役者として超有名なベイジル・ラズボーン主演映画の多くは、1940年代前後の「現代」が舞台だったりします。

 で、今回映像化されたBBC版「シャーロック」。舞台は21世紀現代のイギリス。ここで描かれるホームズはメールやインターネットを駆使する名探偵であり、マスコミやパパラッチに追われる存在、道化でありスター、かつドイルの描いた探偵そのままの天才であり、友人としてつきあうにはかんべんしてほしいようなヤなやつ、なわけです。

 現代版「シャーロック」は2010年に本国で第一シーズンが放映されると同時に、すっごい評判になりました。もちろん作品そのもののチカラが大きいのですが、キャラクター人気もありました。

 シャーロックを演じたベネディクト・カンバーバッチが世界中でカワイー、かつカッコイーと評判になり、一気に有名人に。現在製作中の新作映画「スタートレック」では悪役カーン役を撮影済みだそうです。たしかに宇宙人っぽい顔とも言えるかな。

 ワトソン役のマーティン・フリーマンは映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」などで知られるコメディアンですが、今後は映画「ホビットの冒険」の主役ビルボ・バギンズで有名になる、はずです。

●BBC「シャーロック」のサイトはコチラ

 現代のワトソンはシャーロックの活躍をブログに書いている、という設定なので、ここからワトソンのブログに飛べたりします。そこにはシャーロックがコメント寄せたりしてて、稚気あふれてて楽しい。

 日本では「シャーロック」第一シーズン三作が2011年にNHKBSプレミアムで放映されると、カンバーバッチ人気がその筋(どの筋?)でイッキに盛り上がり、本年夏に第二シーズン三作が放映されたときには、すでに一部でビッグネームになってました。

 早川書房「ミステリマガジン」は2012年9月号で「シャーロック」を特集しましたが、かなりしょぼい内容でファンには不評。おもしろかったのが腹肉ツヤ子のマンガ『顔の長い男』だけというのはどうよ。

ミステリマガジン 2012年 09月号 [雑誌]

 日本ではごく最近、2012年10月5日に第二シーズンDVDとブルーレイ(3枚組)が発売されましたが、Amazonでは発売日当日にDVD、ブルーレイともに一瞬で品切れになったのをわたし確認しました。ウチは予約してたのでオッケーでしたけど(えっへん)。シリーズ最高傑作「ベルグレービアの醜聞」をあらためて鑑賞しましたが、アイリーン・アドラー役のララ・パルヴァー、いやーえっちでいいですな。

SHERLOCK / シャーロック [Blu-ray] SHERLOCK/シャーロック シーズン2 [Blu-ray]

 この「シャーロック」、日本の雑誌でマンガ化されました。角川書店「ヤングエース」で2012年11月号から第一話「ピンク色の研究」が連載開始。

ヤングエース 2012年 11月号 [雑誌] Img_4

 画像右は「シャーロック2」ブルーレイに挿入されてたチラシね。

 日本よりも海外のファンサイトで評判になってるらしいです。わたしがこの作品の存在を最初に知ったのもドイツの情報源から。いかにこの話題がワールドワイドであるか。

 ヤングエース2012年11月号を買ってきたのですが、クレジットは「脚本:スティーヴン・モファット、マーク・ゲイティス」とTV版と同じ。「漫画:Jay.」という作画担当のかたは存じ上げませんでした、すみません。BL方面のかたかな。

 さて世界(の一部のファン)が注目してるマンガ版「シャーロック」について。

 セリフは脚本どおり、というかBSプレミアムで放映された日本語吹き替え版とほぼ同じ。邦訳は訳すひとによってずいぶん変わっちゃうので、ちょっとは独自に翻訳してるかと期待してんたんですが、そういうことはありませんでした。

 人物はカンバーバッチやマーティン・フリーマンそっくりに似せてます。ここまで似せたうえでマンガのキャラクターとして動かせるのはお見事。よくできてます。さらに登場する風景、小物のデザインや、構図までテレビ版にそっくり。

 最初の見せ場となるシャーロックの初登場シーン、遺体が納められた袋を開けるシャーロックの顔が下からのカメラで上下逆に描写されるところなど、オリジナルTVどおりです。

 わずかに違うのは、ワトソンの心の声、かな。このあたりオリジナル脚本にはない、マンガ独自の部分です。しかし全体に見ると、脚本、キャラクター、構図すべてTV版どおり。堅実な仕上がりですね。

 これでマンガになるのかというと、これがけっこうマンガとして読ませるのですね。すぐれた脚本があって、さらにお手本となる映像があれば、マンガは成立してしまう。

 この作品にはじめて接する読者はそれなりにおもしろく感じるでしょう。しかしTV版をすでに見た読者には視聴体験をくりかえすだけで新しい発見はありません。

 でもまあ、同じ素材でマンガと映像の両方が楽しめるのは、それぞれ別の脚色があるからですよね。

 つまり、「アニメ←原作小説→マンガ」ならアニメやマンガそれぞれの脚色が見どころ、なわけです。しかし「脚本→映像作品→マンガ」となると、どうしたってマンガは映像に引きずられてしまう。

 わたし現代のメディアミックスにくわしくありませんが、完成したアニメや映画が先行してて、マンガがあとからつくられる場合、「シャーロック」と同じようになっちゃうのかもしれません。

 だってそこにビデオないしDVDがあるんだもんね。静止画にすればそれを見ながら、そっくりの絵を描けてしまう。

 かつてはこういうことってありませんでした。映画やアニメの「コミカライズ」は、映画を見て、記憶して、演出や構図を自身の脳内で再構成した上で描かれてたのです。じつはそっちのほうが、脚色の自由度が高かった。昔は良かった、といってもしょうがない。

 「シャーロック」でも、びっくりするような演出上の工夫は困難としても、三頭身化するとか、ギャグいっぱい入れるとか、極端にBL化しちゃうとか。海外に著作権が存在する作品で、ないものねだりであるのはわかってるのですが、そこまで期待するのは無理なのかなあ。腹肉ツヤ子の六ページマンガに負けてちゃダメでしょ。

 マンガが関係したメディアミックスで、最近の世界的話題といえばステファニ・メイヤーによるアメリカ版ラノベ、女の子とハンサム吸血鬼のロマンス「トワイライト」でしょう。映画版はご存じのとおり大ヒットだし、キム・ヨンの描いたグラフィックノヴェルもアチラでは絶賛発売中(ソフトバンクから出た邦訳はみごとにコケたみたいですが、下巻の発売はどうした)。

 日本マンガ版「シャーロック」もデキによっては世界をマーケットにできるはずなんですけどね。がんばってほしいなあ。

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October 10, 2012

のんびりゆったり『いとしのムーコ』『ほどほど日記』

 どちらかというとマンガは真剣に気合い入れて読むほうです。だからなのか、ゆるゆるのいやし系マンガというのが、じつは苦手。最近はやりのネコマンガとか。いやそれなりにかわいいんですけどね。

 でもなぜかコイツにはやられた。

●みずしな孝之『いとしのムーコ』1・2巻(2012年講談社、各562円+税、amazon

いとしのムーコ(1) (イブニングKC) いとしのムーコ(2) (イブニングKC)

 えー、ゆるゆるのイヌマンガです。山奥のガラス工房で飼われてるムーコ(雑種にまちがいなし!)と飼い主のこまつさんの日常がゆるーく描かれます。

 ムーコは元気いっぱい。こまつさんがで好きで好きでたまらない。ひとり遊びを発明するのが得意。お鼻がつやつやなのが自慢(カバーイラストもお鼻つやつや仕様になってます)。

 おもしろいのが、ムーコの心の声。マンガ内でムーコは「わんわん」とは鳴きません。いつも大声で叫んでいる。「わー! こまつさーん!」「わー! しっぽ! しっぽ!」「たのしみ! たのしみー!」

 もちろんこれはまわりの人間には理解されません。イヌがしゃべるタイプのマンガだけど、その言葉はヒトには通じず、知性は幼児レベル。この手法こそが本作成功のカギだと思います。

 自分の内面をつねに大声で世界に発してる。ムーコはなんて自由で幸せそうなんでしょう。

 ほんとイヌはかわいいっ。


 同じ作者でもう一冊。

●『みずしな孝之のほどほど日記』(2012年デジタル・コンテンツ・パブリッシング/星雲社、905円+税、amazon

みずしな孝之のほどほど日記 (ドパミンコミックス)

 こちらは出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。

 ゆるゆるの四コマ日常エッセイマンガ。Webに連載されたものでオールカラーです。

 ご家庭やご近所のちょっとしたことがネタになってて、作者はエッセイマンガをいっぱい描いてるはずなのに、よくもまあいろいろと描きわけられるものだ。

 大爆笑したものはひとつもありません。でも作者も読者もそんなことは求めていない。ゆるゆるに身をまかせる快楽。

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October 09, 2012

ほのぼのしんみりだけじゃない『ペコロスの母に会いに行く』

 書店ではマンガの棚じゃないところに置いてありました。

●岡野雄一『ペコロスの母に会いに行く』(2012年西日本新聞社、1200円+税、amazon

ペコロスの母に会いに行く

 予備知識がまったくなく、ぱらぱらと立ち読みをしてから購入。シュリンクしてなかったのでありがたかった。

 まずタイトルで「?」ですが、ペコロスとは著者のペンネーム。書影イラスト右のハゲたおっさんですね。そして左のばあちゃんが著者のお母さん。老いた母が老いた息子のハゲアタマをなでている図です。

 「会いに行く」とは著者の母が認知症となりグループホームに入所しているから。

 長崎のタウン誌に連載されたのち自費出版され、評判となって大手から出版されたそうです。

 著者は長崎在住のフリーライター62歳。母は夫が亡くなってからゆっくりと認知症の症状を悪化させていきます。物忘れ、幻覚、妄想…… 

 最初のほうは母の見せる老いと認知症を描いた日常エッセイマンガ。一篇が二ページ八コマ、あるいは数ページからなる小品が集められています。

 認知症の悲惨で残酷な部分をあえて避けて、ゆるく暖かく、ユーモアをもって描かれてます。かわいいまんまるの人物の絵柄もあって読後感はとてもいい。

 そして読んでいてやさしい気分になれる長崎弁もいい味出してます。母のところに死んだはずの夫が訪ねてくるエピソードがくり返し描かれますが、こういうのを読むとほんと、しんみりかつほのぼのしちゃうなあ。

 ところが後半の展開はちがいます。エッセイから離れて、母の人生や家族史が描かれるようになると、マンガ作品としてどんどん深化していく。キャラクターは現在と過去を自在に移動してそれぞれ数ページの小品ながら演出のテクニックが駆使され、しかもそれが読者の心を揺さぶる。

 そしてラスト、母の人生が現代史と交錯する一篇には驚愕のひとこと。

 作品全体のバランスを崩すほど重いこの一篇があってこそ、本書は傑作になりました。

 老いと認知症を描いた先行作には、高野文子『田辺のつる』、ひさうちみちお『精G』、パコ・ロカ『皺』などがありますが、本書も肩を並べますね。

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October 01, 2012

幸福で不幸な『鉄腕バーディー』完結

 ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』終わっちゃいましたねー。

●ゆうきまさみ『鉄腕バーディー EVOLUTION』13巻(2012年小学館、524円+税、amazon

鉄腕バーディー EVOLUTION 13 (ビッグ コミックス)

 『鉄腕バーディー』が全20巻。タイトルを変えた続編『鉄腕バーディー EVOLUTION』が全13巻。連載期間は10年におよびます。

 12巻が発売されたときに全巻読み直して、最終13巻を読んだ上でもう一回全巻読み直し。いやーつくづく傑作だった。最終13巻の第3話までは。

 一部ではジャンプのバトルものを少年マンガの「王道」と呼ぶ向きもあるようですが、歴史的にはバーディーのほうがよほど王道でしょう。

 手塚石森以来のSFである。探偵対怪盗という古典的な構造をもち、正義対悪の戦いである。明朗活劇で、ストーリーとギャグのバランスが抜群。ちょっとエッチでオタク要素もはいってる。ほらほら王道じゃないか!

 銀河連邦の女性捜査官バーディーが、地球に潜伏中の天才テロリストを追って捜査中、地球人の少年つとむを死なせてしまう。バーディーは少年に自分の肉体を提供して、ひとつの体にふたりの意識が同居したまま、昼間はつとむ、夜はバーディーに変身し、テロリストが計画する宇宙連邦をまきこむ陰謀の謎を追う……!

 多数のエピソードやキャラクターがからみあっての複雑な展開、政治や陰謀も描かれてまさに圧巻。さらにSFの大ネタが仕掛けてあるという豪華さ。

 テーマは大きく、正義とは何か、です。ゆうきまさみはパトレイバーでもこのテーマを扱ってましたが、本作でも主人公の考える正義、銀河連邦の考える正義、そして反逆者の考える正義が対立します。普遍の問題であり、悩める主人公もマンガの王道でしょ。

 物語は大きな謎がいっぱい提出され、最近の展開ではそれぞれの伏線が回収されていってました。戦争の危機を回避するべく地球と銀河連邦の外交交渉が続くなか、各機関の思惑が入り乱れて……!? となっていよいよ佳境。すごくおもしろくなってきたところでした。

 そこへもうすぐ最終回というアナウンス。ムチャしよるなー、というのは読者全員が感じたところ。

 で、最終13巻が発売。その第3話のラストでついに星間戦争の戦端が開かれそうになる。そこからエピローグを含めて計6話で全編の終了。ラスボスの正体があばかれ、人間発祥の謎が解かれ、銀河連邦成立の経緯が明らかとなり、バーディーの活躍(?)で銀河連邦と地球の未来が決められる。

 これだけページ数でなんとここまでのオチにもってくるか、という名人芸を見せてもらいましたが、やっぱさすがにムチャ。捨てられたエピソードも多く、表現もあっさり。物語内で数十年かけての深謀遠慮の結果、敵アジトへの突入方法がこれ、というのはちょっとなあ。作者の歯ぎしりが聞こえてきそうです。

 『鉄腕バーディー』は日本のモノクロ週刊誌連載でこそ可能となった大長編エンタメ作品です。ストーリー、表現ともに現代日本マンガの頂点ともいうべきレベルに達している名作でした。皮肉なことにそのモノクロ週刊誌連載という形式が、作品のしめくくりをこういうものにしてしまいました。

 編集方針や売り上げを理由にした非情な打ち切りはこれまでも他の作品で見てきた光景ではあります。OVA化やTVアニメ化されたほどの人気作品にして大長編が、クライマックスに向けて収束しつつある時期に終わらなきゃならない。

 日本マンガの幸福と不幸が凝縮されているような最終巻でした。やるせないですね。

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