吉川ロカ全曲集(改)
●「吉川ロカ全曲集」というタイトルのエントリ(2012年3月31日)でYouTubeで聞けるファドを紹介していたのですが、著作権問題でいくつかの曲とリンクできなくなっておりました。『文藝別冊総特集いしいひさいち』で、ちらっと当ブログが紹介されたのをきっかけに記事を修正していたら、ミスでエントリをまるまる消しちゃったみたいです(泣)。というわけで、記事をあらためて本日2012年6月18日づけでアップしなおしておきます。→その後、過去にさかのぼって2012/3/31にもほぼ同じ記事をアップしました。何やってんだか、どうもすみません。
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朝日新聞連載四コママンガ、いしいひさいち『ののちゃん』の人気キャラ、吉川ロカのシリーズ、ついに終わっちゃいましたねー。そこでロカちゃんファンのわたしが、吉川ロカ史を語りましょう。
実はマンガには彼女より先にバックバンド、というかギターデュオのふたりが早く登場しています。2009年3月のこと。ひとりはギター、もうひとりはギターラを手にしていました。ギターラというのは丸っこいポルトガルのギターのこと。まだバンド名も決まっていない状態で路上で演奏していたふたり。聞いているのはののちゃんだけ。歌ってるのも男の子ふたりです。
わたしたちの愛はろう細工のようにくずれ ああ不吉な春よ ああ不吉な春よ あの日ふたりそろって死ねるように
何と陰気な歌詞でしょうか。モトウタはファド(ポルトガル民謡)の「Primavera(春)」です。
もう少しで「コインロックス」というデュオ名になりそうでしたが、のちに「コインブロッカ」と名のるようになります。
その後2009年4月になって吉川ロカ初登場。
ギターデュオを従えて三人で路上ライブ。これも聞いてるのはキクチ食堂のばあちゃんだけ。ロカちゃんが歌い上げてるのも「Primavera」です。
ロカちゃんもこのころは日本語で歌ってました。観客が少ないので「えーん」と泣き出すロカちゃん。そこへキクチ食堂のばあちゃんの的確な批評が。
『モウラーリア』は走りすぎじゃが『アルファーマ』はよぉ歌いこんどる。
「モウラーリア Mouraria」とはこの歌。
そして「アルファーマ Alfama」はこういう歌ですね。タイトルは両方ともリスボンの地名だそうです。
その後、ロカちゃんはキクチ食堂でバイトをすることになります。定休日に食堂でライブをさせてもらう約束。もちろん勝手にこれを決めたのは、ばあちゃん。
最初のころは注文はまちがうし、「ゲロゲロ」とイマドキの高校生らしく言葉づかいがなってなかったこともありました。
そのうちに彼女はたまのの南高校に在学中の高校生三年生で、名前がロカであると明かされます。この名はリスボンにあるユーラシア大陸最西端のロカ(Roca)岬からとられてます。まさに生まれながらにファド歌手になることが定められてる?
キクチ食堂での初ライブは2009年6月。
彼女が熱唱したのは「Fado Amália(ファド・アマリア)」。ポルトガルの国民的歌手、アマリア・ロドリゲスが自身の名前そのものをタイトルにした歌。観客の反応は「おおお よくわからんがスゴイ!」
ロカちゃんはキクチ食堂以外のところでもライブをやってます。あやしげな風貌、正体不明のヒゲの中村サンが近寄ってきてチケットを買いたたこうとしますが、なぜか中村さん、ポスター貼りを協力することに。ロカちゃんの人徳ですなあ。
2009年11月の南高文化祭では事前に服装チェックがありました。ここで彼女が歌ってるのは、得意にしてるレパートリー「Primavera」です。つきそってくれたのは親友の柴ちゃんこと高一を三回やったという柴島美乃。
文化祭には路上ライブで彼女に興味を持った地元FM局、内海FMのおじさんが聞きに来ます。
その後も地道な活動は続き、キクチ食堂で昼時に流してた曲は彼女の「Beijo de Saudade(望郷のキス) 」。
ライブで歌ったのは「Estranha Forma de Vida(流れ者の人生)」
FM局に紹介された連絡フェリーの船上ライブで歌うはずだったのが「暗いはしけ Barco Negro」。フェリーが岸に着いちゃったのでお客さんみんな降りちゃいましたが。
「暗いはしけ」は海で遭難した夫を懐かしむ歌らしいので、ロカちゃん、船上ライブには選曲がちょっとまずいぞ。
2010年10月の南高文化祭。ここでは「マリア・リスボア Maria Lisboa」。
ライブハウス「みたいなもん」のオーディションでスタッフに大ウケだったのは「Laurindinha」(←よう発音しません)。
ライブハウスの初ライブのリハーサルで歌ったのは「Rosa Branca(白いバラ、別タイトルはRosa Ao Peito)」。
2011年5月11日には、吉川ロカと柴島美乃の関係が明らかにされました。→「ののちゃんと震災:漫棚通信ブログ版」
そして台風の日のライブでロカちゃん、ついに中央の事務所から注目されることに。このとき歌ってのが「Minh'Alma(わたしの魂)」。
2011年10月、南校文化祭に出演予定だった彼女は、「いろいろあって」出演を取り消します。
キクチ食堂のライブでは「Dona Rosa(ドナ・ロサ)」を歌ってポルトガルの船員さんからも大絶賛。
そして2012年になってロカちゃんにアニメの主題歌の話が舞い込みます。
2012年1月30日、キクチ食堂でのサヨナラ・ライブ。彼女が歌った「海の歌 Canção do Mar」はこれ。
「Solidão(孤独)」はこういう歌。
聞いていただければわかりますが、同じ曲で歌詞がちがいます。なんとマニアックな。
吉川ロカちゃんは高校を中退して上京。厳しいレッスンのすえ、2012年3月24日ついにデビューをはたします。
連載内連載を終えた作者からのコメント。→「(笑)いしい商店新着マンガ No.006 ROCA」
朝日新聞のコアな読者にはたいへん評判がわるかった連載内連載、いわゆる吉川ロカシリーズは3月24日付朝刊の漫画をもって終了しました。シンプルなハッピーエンドを描こうとしたのですが、確信犯とはいえ場所をまちがっていました。
これからウェブサイトで新聞ではやりにくかった部分を順不動で埋めていきたいと思います。どうぞよろしく。
いえいえ。ロカちゃんほど読者に愛されたキャラクターはなかったと思いますよ。
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Comments
ロカちゃんのことひそかに気になっていた一読者でした。無事デビューしたコマをこちらで拝見できて感無量です。
大振りのろか先輩も、同じくロカ半島から名前を取ったんですよね。
曲の中身について全然知らなかったのでコレを機に聴いてみようと思います。
Posted by: nns | June 20, 2012 10:22 AM
富田月子さんは、ロカちゃんが登場する直前にのぼるくんにお別れを言うために登場してましたね。
Posted by: 漫棚通信 | April 11, 2012 05:22 PM
もっと不評だったのは、のぼる君の幽霊ガールフレンドでしょう。いつの間にか見なくなりましたが。
Posted by: orubhatra | April 11, 2012 12:43 AM
高石ともやとナターシャセブン、上田正樹とサウストゥサウス、なんちて。
Posted by: 漫棚通信 | April 05, 2012 10:25 PM
連投すみません。
ギター・デュオで思い出すのは、ゴンチチ。
あちらはガット・ギターとフォーク・ギターなので、コイン・ブロッカとは異なりますが、いしい氏的にはモトネタになりえたかも。
ゴンチチ、いしいひさいち、ひさうちみちお、中島らも、キッチュと並べたら、まるで関西サブカル全盛時代ですねぇ。
Posted by: トロ~ロ | April 03, 2012 11:54 PM
嗚呼、またこうして漫棚漫画ウィルスに感染してしまう・・・・
本が増える、金は減る。
本棚は足りぬ、つみあげられてゆく。
いつか、私は倒れた本に埋もれて人生を終えるだろう。
そのとき、人々は知る。
その本はすべてマンガなのだと。
方向性を間違えた愛は命取りなのさ。
お粗末。
そういえば「大振り」にも「呂佳先輩」という登場人物が出てました。
Posted by: トロ~ロ | April 01, 2012 01:09 AM
新聞連載時にロカちゃんが歌ってた横文字歌詞の元ネタがわかってすっきりしました。
「朝日新聞のコアな読者にはたいへん評判がわるかった」だそうですが、私は↑にある3月24日付朝刊掲載作の最後のコマを読んだときに、感極まってちょっと涙がこぼれそうになりました。
Posted by: みさいる | April 01, 2012 01:04 AM