ブルーレイで「タンタン」
昨年の12月、スピルバーグ監督の「タンタンの冒険」を映画館に見に行きました。3D日本語吹替版ね。
それがですね、田舎のシネコン、平日の昼間とはいえ、200数席の劇場に観客はわたしと妻のふたりだけ。いやー、さびしいというか豪華というか、貴重な体験でした。それほど日本ではタンタンの知名度がないのか。
まあ原作マンガを知ってると知らないのでは、楽しめるレベルが天地ほども違う作品ではありますが。
さて、ブルーレイが発売されたので入手しました。
●「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」ブルーレイ&DVDセット(2012年角川書店、4700円+税、amazon)
映画はこまかい小道具などにこっていて、これは劇場ではさらっと流れていってしまいますし、DVDの画質でもわからないほど小さな文字も出てきます。新聞の文字などをじっくり読むにはどうしてもブルーレイが必要なわけですな。
もともとそういうことを気にするような観客(←わたしだ)も想定して作られた作品なのでしょう。タンタンの部屋の壁に飾られた各国の新聞には、これまでのタンタンの冒険の記事が掲載されています。
「THE AFRICAN」紙1931年1月28日号に『タンタンのコンゴ探検』、「THE DAILY PAPYRUS」紙1934年4月26日号に『ファラオの葉巻』、「THE SAN THEODOROS TRIBUNE」紙1937年3月11日号に『かけた耳』、「SYLDAVIA」紙1939年11月4日号に『オトカル王の杖』事件のてんまつが掲載。
あと日付は読み取れませんが、「THE DAILY REPORTER」紙に「黒い島のひみつ」、「THE SHANGHAI NEWS」紙に「青い蓮」事件のことが載っています。
タンタンって記者のくせに文章書かずに、他のひとが書く記事の主人公になるだけなんだよなあ。タイプライターのコレクションはしてるのにね。
新聞の日付はエルジェが描いた「タンタン」の実際の初出に限りなく近い日になっています。芸が細かい。またこれらの事件はすべて、タンタンとハドック船長が出会う前のもの。この映画でふたりが初めて顔を合わすのですから、当然といえば当然。
そのころの事件でタンタンの部屋に新聞記事が見当たらないのは、『タンタンソビエトへ』と『タンタンアメリカへ』ですが、いっぽうの壁に事件を解決してシカゴをパレードするタンタンの写真と大きなカギが飾ってある。これがアメリカ事件の記念ですね。どうやらタンタンはシカゴの名誉市民になったらしい。
もひとつのソビエト事件の記念品についてはよくわかりませんでした。もしかするとこの世界ではソビエト旅行はなかったことになってるのかもしれません。
さて英語版で映画タンタンを見てると、いちばんの違和感がタンタンの名前。英語だとティンティンの発音ですからね。ただしハドック船長だけが「タンタン」に近い発音をしてるのはどうしてだろ。スコットランドなまり?
あとデュポン&デュボンは英語版ではトムソン&トンプソンです。日本語字幕とずれまくってます。
映画のタンタンがくりかえし使う言葉に、「グレイト・スネイクス! Great Snakes!」があります。オーマイガッ、くらいの意味でしょうか。
これって映画だけじゃなくて、英語版マンガのタンタンもよく使う言葉だそうです。もともとのフランス語版にはこんな決まり言葉はなく、英訳のときこれがタンタンの決まり言葉に選ばれたらしい。
こういうのって英語圏のマンガキャラクターの習慣なのかしら。たとえば、ミュージカル「アニー」の原作マンガ『小さな孤児アニー』の決まり言葉は「リーピン・リザーズ! Leaping Lizardz!(跳んでるトカゲ!)」でした。なぜ蛇とかトカゲが出てくるのか。
有名どころではスーパーマン。「グレイト・クリプトン! Great Krypton!」 スーパーマンだけじゃなくてクリプトン星出身のスーパーガールも使います。
これを「びっクリプトン!」と訳したのは1978年に創刊された「月刊スーパーマン」。この脱力訳は当時の読者に大ウケ。
日本の「月刊スーパーマン」読者は、スーパーマンといえば「びっクリプトン!」、というふうに覚えちゃってますが、英語圏タンタンの読者も、タンタン=「Great Snakes!」と記憶してるかも。
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