後衛はこれだ『恐怖博士の研究室』
マンガにしても何にしても、前衛ばかりが注目されるようではいけません。どんな分野にも後衛というのがあるわけで、おそらく商業マンガでもっとも後衛を歩んでると思わせる作品がこれ。
●根本尚『恐怖博士の研究室 あやしい1コマ漫画屋がやってきた!』(2011年秋田書店、714円+税、amazon)
えー書影で軽く笑いをとってます。秋田書店サンデーコミックスは、書店でこそあまり見かけなくなりましたが、今も現役で新品が買えます。すごいですねー。本書のデザインはそのサンデーコミックスのフォーマット。ただし新書判じゃなくてA5判ですけど。
すみません、このマンガ、買ってくるまでその存在も知りませんでした。オビの紹介文より。
この作品は「ミステリーボニータ」という少女まんが雑誌に10年以上連載されていた物です。読者人気はおおむね14位。「どこがおもしろいかわからない」などという厳しいご意見をいただくこともありますが、ごく一部の方の熱烈な支持により続いてまいりました。
というわけで、連載11年目にして初単行本化。おめでとうございます。
作品は「○○の恐怖」と「恐怖博士のドンとこい人生相談」の二本立て。ヒトコママンガというのとは微妙にちがう、ラジオの投稿コーナーを絵解きした感じのマンガ。
たとえば「夏の恐怖」。「プールに鼻水が浮いている」というキャプションでヒトコマ。「まちがえて黄色いスイカを買ってしまった」でヒトコマ。「朝のアニメ再放送を見のがす」でヒトコマ。
たとえば「家庭の恐怖」。「テスト後 猛勉強を始める兄」「母が小さくなった石けんを固める」。
笑いというか何というか、脱力を目的にしてますか? これがえんえんと続くわけです。
「人生相談」のほうはこんな感じ。
Q/授業中に屁が出てしまいました クラス中の突き刺さるような視線を浴びています(小6・男)
A/イスの脚を鳴らしてごまかすのだQ/「兄弟みたいに仲がいい」とか言いますけど兄弟って仲悪いですよ(19歳・学生)
A/それもそうだな
ジャンプ放送局の読者が怒ってきそうです。
一発芸じゃなくて、これを10年以上続けているのですから「ミステリーボニータ」はえらい。ある種、ひらきなおった伝統芸能みたいなものでしょうか。それが証拠に10年間のうちには同じネタの使いまわしがあって、これって、落語でそのマクラ、前にも聞いたぞ、というのに似た感じなのかしら。
絵は古賀新一(←黒井ミサの作者ね)を劣化させたような感じで、いかにも古い。21世紀とか平成とかから遠く離れたどこか別次元のマンガです。
もっともうしろを走ってるのはまちがいないのですが、それが周回遅れで先頭に出てるような気がしてくるから不思議です。
Comments
引っ越し大変でしたでしょう。移転先ものぞかせてもらっております。お体を大切に。
Posted by: 漫棚通信 | February 07, 2012 09:57 PM
こんばんは。
ブログ引越ましたので、お忙しい中恐縮ですがリンク先変更、お願いいたします。
こちらになります
白取特急検車場【闘病バージョン】
http://shiratorichikao.blog.fc2.com/
それにしても、満棚さんを読ませていただくと、読みたいマンガが増えて困るんです。本当に、困るんですよ…
Posted by: 白取千夏雄 | February 05, 2012 12:45 AM