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February 13, 2012

対極のアメコミ入門『DCスーパーヒーローズ』と『マーベルゾンビーズ』

 ここ数年、BDを含むオルタナティブ系の海外マンガの邦訳が盛んになってますが、アメコミの「メインストリーム」と呼ばれるスーパーヒーローものも着実に邦訳出版されてます。

 ただし、日本人読者にとってスーパーヒーロー・コミックスの敷居がちょっと高いのは、どの作品も数十年の歴史を持っているから、かもしれません。

 シリーズを最初から読む、なんてのは現実的には不可能。まあ言ってみれば『ワンピース』を途中から読むみたいな感じなので、今さらなあ、という気分になるのもしょうがないところではあります。

 ただしそこを乗り越えると、重層的なストーリー展開がやみつきになっちゃうんですけどね。

 アメコミ、しかもメインストリーム・シリーズを読み始めるには、まずあんまりよく知らないキャラクターとなじみにならなきゃいけない。で、入門編としてこういうのはどうか。

●ポール・ディニ/アレックス・ロス『DCスーパーヒーローズ』(石川裕人・秋友克也・沢田京子訳、2011年小学館集英社プロダクション、3200円+税、amazon

DCスーパーヒーローズ (ShoPro Books)

 出版社よりご恵投いただきました。ありがとうございます。過去に邦訳されてたものの再発売になります。

 原著は1998年から2005年にかけて全六巻で発売されたもの。すっごく大きな本でB4判よりちょっと小さいぐらい。アレックス・ロスをでかい判型で読めるというのがうれしくて、わたしも原著でこのうち五冊をそろえています(なぜ最後の一冊を持っていないかというと、原著を買うより先に邦訳が出ちゃったからですな。あいかわらずコレクターとしては詰めが甘い)。

 このうち邦訳は、2000年に小学館プロダクションから『バットマン ウォー・オン・クライム/スーパーマン ピース・オン・アース』が二冊セットで発売。2005年にはジャイブから『JLA リバティ&ジャスティス』のタイトルで「JLA:リバティ&ジャスティス」と「JLA:シークレット・オリジン」を収録して発売されました。両方とも原著ほどじゃないけどそうとう大きな本です。

 今回、未邦訳だった「シャザム!:パワー・オブ・ホープ」と「ワンダーウーマン:スピリット・オブ・トゥルース」を加えて完全版として発売されたのが本書『DCスーパーヒーローズ』です。本書はB5判より少し大きい判型で発売されましたが、ハードカバーの一巻本としてはこの大きさで必要十分じゃないか。これ以上大きいと重くて持てません。

 登場するのはスーパーマン、バットマン、キャプテン・マーベル、ワンダーウーマン、ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカのみなさんがた。彼らの出自を簡単に描いたページもあって、アメコミ入門にぴったりじゃないかしら。

 まずはアレックス・ロスの超絶絵を楽しむべきでしょう。わたしがいちばん好きなのが「ワンダーウーマン」の表紙イラストなので、その書影を。

Wonder Woman: Spirit of Truth (Wonder Woman (Graphic Novels))

 ロスの絵は眺めてるだけで至福ですなあ。

 そして本書でヒーローたちが戦う敵は、いつものヴィランではありません。彼らは、貧困と飢え、病、国際紛争と戦うことになります。わたしたち人間がそうであるように、彼らの多くもこの戦いに敗れることになります。しかしラストでけっして希望を捨てないポール・ディニのシナリオがすばらしい。

 メインストリームのアメコミの、もっとも良質な部分を表現した作品だと思うのですよ。


 で、もひとつ。

●ロバート・カークマン/ショーン・フィリップス『マーベルゾンビーズ』(市川裕文・石川裕人・御代しおり訳、2012年ヴィレッジブックス、2700円+税、amazon

Marvel Zombies

 これを入門編として紹介すると怒られるかも。いやもうすっごい変化球、というかゲテモノ。

 日本マンガもゾンビ・ブームみたいですが、本家アメリカではもっと大流行してて、小説も映画もTVもアメコミも、あふれるほど出てるそうです。本書はタイトルどおり、マーヴェルのスーパーヒーローたちがゾンビになる、という出オチみたいな作品。

 本書のアイデアは、マーク・ミラー(『キック・アス』のひとね)が考えついたらしいのですが、シナリオ担当がゾンビ大好き、『ウォーキング・デッド』のロバート・カークマン。

 舞台はどこか別の宇宙にある地球。ゾンビ・ウイルスの流行のため、地球にいるのはゾンビ化したスーパーヒーローたちばっかりとなっています。彼らは食い物となる人間を食べ尽くしてしまったため、空腹でたまりません。本書の前日譚で、ゾンビ化したファンタスティック・フォーは異次元の地球を侵略しようとするのですが、それを阻止したのがただひとりゾンビ化していないマグニートー。

 本書はこのエピソードの直後から始まります。

 最初っから世界は荒廃してて、足のちぎれかけたスパイダーマン、脳みそをこぼしてるキャプテン・アメリカ、胸に大穴のあいたデアデビルたちがマグニートーを追いかけ回した上、食っちゃう(!)のがオープニング。

 いやもうグロいったら。スパイダーマンなんか、ちょっとお腹がふくれて理性が戻ると、メリージェーンとおばさんを食べちゃったことをグチってばかりいます。ギャグですか? きっとギャグです。

 ついに食べるものがなくなったスーパーヒーローたちの次の獲物は……!? これがもう、ある程度アメコミキャラを知ってるひとなら大笑いの展開。

 モダン・ゾンビものって、生きながら食われる恐怖とか、集団に襲われる恐怖とか、愛するひとがゾンビと化す恐怖とか、生き残った人間のほうが実はこわいとか、定番の展開があるじゃないですか。ところが本書ではそういうところはすべてすっとばして、ゾンビものの新しい魅力を見せてるんですね。グロで悪趣味だけど。

 ショーン・フィリップスのシャープな絵はおそろしくもかっこいいです。アーサー・スイダムのカバーイラストも絶品。

 本編を知らないひとにパロディをおすすめするのもアレですが、登場するヒーローが多くてお得感があるし、アメコミになれてない日本人読者でもあっさり読めちゃうのがいいですね。アメコミ入門編としてこういうのもありかな、と。

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Comments

第16回手塚治虫文化賞の「マンガ大賞」候補作品が決まっていたのですね。

『 I 【アイ】』  いがらしみきお(小学館)
『あの日からのマンガ』  しりあがり寿(エンターブレイン)
『3月のライオン』  羽海野チカ(白泉社)
『進撃の巨人』  諫山創(講談社)
『ちはやふる』  末次由紀(講談社)
『ヒストリエ』  岩明均(講談社)

いやあ、どれもこれもナカナカ。
皆さんの予想はいかがですか?

Posted by: トロ~ロ | February 20, 2012 at 11:30 PM

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