ドラえもんリスペクト『ぼくらのよあけ』
今井哲也『ぼくらのよあけ』が全二巻で完結。
●今井哲也『ぼくらのよあけ』1・2巻(2011年講談社、各619円+税、amazon)
月刊誌連載10回分できっちりと終わり。こういうのは気持ちがいいですね。
小学生が主人公のSFです。昔の言葉でいうとジュヴナイルSFですな。時代は近未来の2038年、舞台は日本の「団地」です。
2038年の子どもたちはけっこう窮屈な人生を送っています。教科書はタブレット型端末になりケータイは今より格段に進歩していますが、子どもたちは現代以上に「空気を読む」能力が求められ、イジメは相変わらず。
著者はこのあたりをねちっこく描写します。子ども社会はいつの時代もけっして楽園じゃないんだよね。そこを逃げずに描いてる。ここ、うまいなあ。
主人公は小学四年生男子・ゆうま。家にはお手伝いロボットのナナコがいます。夏のある日、ナナコが故障? ヘンになってしまったナナコに連れられ、団地の屋上に登ったゆうまとその友人たちが出会ったものは。
そこにあったのは28年前に墜落した宇宙船。地球を訪れていたのは宇宙人じゃなくて人工知能でした。事故で動けなくなっていた彼を宇宙に帰すため、いま少年たちのひと夏の冒険が始まる!
さてテーマは、ジュヴナイルらしく「友情」です。
人間同士の友情、ヒトと宇宙からきた人工知能との友情、そしてヒトとロボットの友情。
友情をテーマにした真っ正面からの本格SF。SFガジェットが多く登場するので読みにくいと思うかたもいるでしょうが、内容は直球ど真ん中。ストレートな「子どもマンガ」です。すごくわくわくしながら読みました。
で、この作品って『ドラえもん』なんですよね。
F先生によるマンガ『ドラえもん』そのものというより、『ドラえもん』的世界がベースになってます。つまりドラえもん型ロボットと少年たちの、友情と冒険のSF世界。これってすでに、ある年代以降の日本人にとって、共通の疑似記憶みたいになってるじゃないですか。マンガを読んでなくても、映画を見てなくても、ドラえもん世界はどこか懐かしい。
本作は作者なりの『ドラえもん』リメイク、だと思います。ですから本作のラストでは当然、のび太とドラえもんの別れ、そして再会が描かれることになるのです。
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