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November 12, 2011

タンタンとわたくし(その3)

前回からの続きです)

 初期のタンタンはモノクロで描かれ単行本化されていました。モノクロ単行本が存在するタンタンは、以下の9作です。

●タンタンソビエトへ ●タンタンのコンゴ探検 ●タンタンアメリカへ ●ファラオの葉巻 ●青い蓮 ●かけた耳 ●黒い島のひみつ ●オトカル王の杖 ●金のはさみのカニ

 上記のうち、『タンタンのコンゴ探検』のモノクロ版は前回ご紹介したものです。

 のちにモノクロ単行本は順次カラー版として描き直されカラー版単行本として再発売されます。しかし『タンタンソビエトへ』だけは、カラー版として描き直されることはありませんでした。理由はいろいろあるのでしょうが、反ソビエトの政治的プロパガンダ臭が強すぎたのが大きな要因です。

 ですから『タンタンソビエトへ』は長らくまぼろしの作品となっていて、海賊版がかなり流通したそうです。

 1981年、CASTERMAN社はモノクロ版『タンタンソビエトへ』を復刻販売しました。

●書影左は、1989年にイギリスで発売された『タンタンソビエトへ』の英訳。右は2005年に福音館書店から発売された邦訳です。

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 『タンタンのコンゴ探検』もそうでしたが、『タンタンソビエトへ』が日本語で読める日が来るとは考えもしなかった。

 残る七作、『タンタンアメリカへ』から『金のはさみのカニ』までのモノクロ単行本も、復刻版がCASTERMAN社から発売されています。仏語版は現在でも入手可能ですし、一部は日本語版も発売されました。

●書影は2005年にムーランサールジャパンから発売された、モノクロ単行本の復刻版、その邦訳です。日本では『タンタンアメリカへ』『ファラオの葉巻』『青い蓮』『かけた耳』の四冊が発売されました。

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 ムーランサールジャパンは、日本でタンタングッズの販売をしてるところ。訳者は福音館書店版と同じ川口恵子です。ソフトカバーでB6判、表紙デザインは仏語版とほとんど同じ。

 もちろんカラー版との異同を見るのが楽しいのですが、おもしろいのが翻訳。訳者は全面的に訳を見直しており、同じセリフでも福音館書店版とはかなり違った言い回しになってます。


 さて、わたしタンタンについていろいろ書いてますが、ネタ本があります。

●BENOÎT PEETERS『TINTIN AND THE WORLD OF HERGÉ: AN ILLUSTRATED HISTORY』

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 BENOÎT PEETERSは小説家、BDのシナリオライターとして知られています。日本で活動してるフレデリック・ボワレと組んだ作品もあるみたい。

 この本は1988年に英語で出版されたエルジェの伝記でタンタンの研究書。図版が多く、しかも文章がわかりやすい。タンタンの情報が乏しかったころ、わたし、この本にたいへんお世話になりました。

●もう一冊は、マイクル・ファー/小野耕世訳『タンタンの冒険 その夢と現実』。

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 邦訳が2002年。発行はサンライズライセンシングカンパニーというところですが、発売は上記のムーランサールジャパン。今もそちらの通販(TINTIN NET STORE)で普通に買えます。

 これも図版が多くて、しかもやたらと詳しいタンタンの研究書。4500円+税とお高いですが、タンタンをひととおり読んだひとならすごく楽しめるでしょう。

●セルジュ・ティスロン『タンタンとエルジェの秘密』(青山勝・中村史子訳/2005年人文書院)

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 これはもう純粋に学術書です。著者はラカン派の精神分析家で精神科医、医学博士、心理学博士、大学で教えてるというひと。タンタンの精神分析的批評をおこないつつ、エルジェの出生と創作との関連を解き明かす、というもの。

 さすがに一般向けの本じゃありませんので、万人にお勧めできるものではありません。

 さてこれからタンタンの映画公開に向けて、どんな本や雑誌が出るかな。楽しみに待っているわけであります。

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