手塚治虫のアダムス・パロディ
前回、チャールズ・アダムスについて書いたところ、ツイッターで指摘していただきました。そうそう、手塚治虫が描いたアダムス・ファミリー・パロディがあったんだ。
漫画サンデー1969年12月3日号掲載の『怪談雪隠館』。雪隠は「せっちん」と読みます。最近はあまり聞かない言葉になっちゃいましたがトイレのこと、さらには逃げ場のない所という意味もあります。将棋の雪隠詰めとか。
マンガ家・手塚治虫は雪山でタクシーから降ろされてしまい、山中の旅館に泊まるはめになります。そこにはどこかで見たような顔の一家が住んでいて、手塚をいろいろと恐がらせる。
そして手塚は気づきます。「あいつら どっかで見た顔だと思った 思いだした 思いだした」「チャールズ・アダムズというマンガ家の『おばけ一家』ってやつにそっくりだ」
(図版は講談社版手塚治虫全集「雑巾と宝石」より)
子どもたちが手塚の部屋をコンクリで塗り込めようとする、なんてネタは本家作品そのまま。
その後、どんでん返しに次ぐどんでん返しがあって……という短編です。
本作がメジャー雑誌にフツーに掲載されてたってことはいろんなことを示しています。手塚はパロディ好きだった(これは他の作品からもわかります)。日本雑誌はパロディ作品に寛容だった(同時に著作権についてはきびしく考えていなかった)。当時の読者にとってアダムス作品はあたりまえに知られていた。などなどですね。
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