世界中のナチュラリストのために、戦え!『マリファナマン』
近年のアメコミ邦訳は、小学館集英社プロダクションとヴィレッジブックスが地道にがんばってくれてます。とくにアメコミ・ヒーロー映画が公開されたときは、二社から競うように邦訳が出版されてます。
映画「マイティ・ソー」のときは、ヴィレッジブックスから『ソー:マイティ・アベンジャー』。小プロからはなんとお懐かしや、ジャック・カービー画の『マイティ・ソー:アスガルドの伝説』。
映画「グリーンランタン」のときは、ヴィレッジブックスから『グリーンランタン:リバース』と『グリーンランタン:シークレット・オリジン』。小プロからはこれも古典だ、日本のマンガ家がいっぱい模写したと言われてるニール・アダムス画の『グリーンランタン/グリーンアロー』が発売。
そして明日公開の映画「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」では、ヴィレッジブックスから『キャプテン・アメリカ:ニューディール』と小プロから『キャプテンアメリカ:ウィンター・ソルジャー』。
(それぞれ書影クリックでアマゾンに飛びます)
これら以外にも、今年は二社からアメコミ邦訳がいっぱい出てます。やっぱりかつての小学館プロダクションとメディアワークスのときみたいに、アメコミ出版を二社が競ってるという状態のほうが活気があってよろしいですな。
さて、そういう二社寡占のアメコミ邦訳に殴り込みをかける、今年いちばんの珍品をご紹介。
●ジギー・マーリー/ジム・マーフード/ジョー・ケイシー『マリファナマン』(2011年明窓出版、2476円+税、amazon)
スーパーヒーロー・コミックスで「マリファナマン」ですからね。あちらの人はどうか知りませんが、日本人読者はタイトルでずっこけます。
主人公は宇宙人セドナ。地球人そっくりの外見ですが、その細胞にはDNAじゃなくて大麻の成分が含まれています。生まれ故郷の星の大麻が枯渇しつつあるため、彼は星よりの使者としてロケットで銀河を越え、大麻が豊富な地球を訪れました。
ちょうど地球では、ひとびとの精神を骨抜きにしてしまうドラッグを作る悪の製薬会社と、大麻を信奉する正義のコミューンが争っていました。女戦士にひきいられたゲリラたちが製薬工場を襲撃すると、彼らを待ち受けていたのは製薬会社にやとわれた凶悪な用心棒、キャッシュ・マネー(わかりやすいネーミングですねー)。
あやうし、ゲリラたち。そこへ現れたのが宇宙人セドナ。
胸に輝くマリファナのマーク! 彼はハッパをキメると、無敵のスーパーヒーロー、緑のコスチュームを着たマリファナマンに変身するのだった!
大麻はあらゆる工業製品に加工できるし、食べても栄養豊富、医薬品として使用できる。大麻こそ世界を救う。本書は娯楽作品であり、かつ啓蒙の書です。
日本でも大麻解禁を主張されるひとがいて、彼らの主張にかなりの理があるのは知ってます。ただしそういうかたたちってスピリチュアル系だったり、トンデモ系だったり、超地球人のかたであったりするので、わたしなどはちょっとひいてしまいます。了見が狭くてすみませんね。
原案のジギー・マーリーはボブ・マーリーの息子。なるほどー。邦訳も大マジメ。オビには「これは資本主義の象徴たる悪の製薬会社と、自由を求め正義と平和、そして自然への回帰を望む人々の最後の聖戦が生み出す境地と、世界の行方を描く物語である」とあります。
マリファナのケムリで変身する、というのに笑っちゃいました。戦いを望んでいない、戦いは終わりにしたい、と言いながら敵の腕を引っこ抜いて振り回すマリファナマンがおちゃめ。彼は世界中のナチュラリストのために戦い続けるのです。
厚い紙を使って束をかせいでますが、50ページで2600円なのであまりおすすめしません。そっち系がお好きなかただけどうぞ。YouTubeで見られる予告編はこちら→(※)。
Comments