このまんが道は邪道だ『描かないマンガ家』
邪道のまんが道を歩むマンガ家マンガ、2巻が発売。
●えりちん『描かないマンガ家』1・2巻(2010~2011年白泉社、各648円+税、amazon)
主人公はマンガ系専門学校に通う26歳ブサメン童貞、器根田刃(きねだやいば)先生(もちろんペンネーム)です。
刃先生は夢を、そしてマンガを熱く語る熱血のひと。でも描かない。課題も描かない。ネームも描かない。1ページも描かない。その彼が、才能あふれる同級生たちと切磋琢磨してプロのマンガ家をめざす現代のまんが道! 描かないけど。
描かないくせにエラソーで、口ばっかりポーズばっかりの主人公です。
1巻の最初のほうでは、ダメダメ男のあるあるネタが中心でしたので、ちょっと微妙な感じでした。だって主人公、まるきり唐沢なをき『まんが極道』に出てきそうなキャラじゃないですか。
唐沢マンガなら短編ネタですよ。ラストでは、まわりからギッタギタにやられて終わりか、思いっきり零落して終わり、のはず。
ところが本作品ではお話が進むにつれて印象が変わってきます。刃先生、けっこう人望があるのですね。描かないけど。
万引きを捕まえて改心させる。マンガを描くのに反対する友人の親を説得する。枕営業しようとする友人を救う。彼のひとことがみんなに希望を与えるのです。
刃先生の言葉には、ひとを感動させる何かがある、というわけではなさそうで、刃先生の適当な言葉に対し、みんなが何かしら深遠なものを発見してしまいます。
結果、刃先生はいろいろな問題を解決。すべてがハッピーにおさまります。
ダメダメな人間が主人公なのに、ほのぼのしたオチ。なんてすばらしいんでしょ。刃先生は、他の登場人物たちにとっても読者にとっても、ある種の超人であり理想像であり救いであったりするのです。描かないけど。
Comments
小生も、長いこと描かないマンガ家!でした。
でも描きたい!にはかわりがありません。
で、3月の震災を理由に描き出した。
72ページ。現在、トーン貼りです。
専門学校マンガ・コースの非常勤講師としては
「どうだ!!お前ら、夏休み描いたか~~」
って言いたい(笑)
ぼくは、原作シナリオを宿題で出していますが…。
Posted by: 長谷邦夫 | August 05, 2011 01:15 PM
島本和彦「アオイホノオ」6巻以降は庵野・山賀の活躍がでてきそうですが、庵野に描かせるだけで自分は描かない、それでいて自信たっぷりなプロデューサー山賀氏的な存在に刃先生はなっていくのでしょうか。
Posted by: madi | August 04, 2011 10:57 PM