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July 08, 2011

白土三平の人物像『白土三平伝』

 毛利甚八『白土三平伝 カムイ伝の真実』(2011年小学館、1500円+税、amazon)読みました。

白土三平伝-カムイ伝の真実

 書影デザインがちょっと……なのですが、内容はすごくいい。

 著者は『家裁の人』『裁判員の女神』などのシナリオで有名なマンガ原作者。古いところでは谷口ジローと組んだ『ニューヨークの弁慶』がありますし、ノンフィクションの著書も多いかたです。

 著者は1980年代なかばより千葉の白土邸に出入りしており、白土の「野外生活科目の弟子」。本書は白土三平へのインタビューなどをもとにして書かれた評伝です。『決定版カムイ伝全集』の巻末に収録された「白土伝」や、雑誌掲載記事を加筆修正したもの。一部はわたしも読んだことがありました。

 著者と白土の関係や本書の成立経緯からもわかるように、著者が出会った白土三平という「人物」から、白土作品群にアプローチする、という形のものになっています。

 そのために著者は白土が住んだ大阪や長野の土地を実際に訪れ、街や風景をレポートします。そして白土の房総での「漁師」生活を活写する。白土三平を読んで理解するには、まずその人となりを知るべし、という正しい方法論ですね。

 著者の見た白土三平は驚嘆すべき人物で一種の超人。その人物に傾倒する著者と白土の関係は、読んでいて感動的ですらあります。

 しかも本書は白土自身によって校正されてるので、ある種「公式」の伝記です。ただしそこが長所でもあり、欠点でもあり。

 本書は「伝」ではありますが、白土の膨大な作品群に比べて総分量はかなり少ない。白土三平自身や著者があまり興味を持ってなさそうな、子ども向けの『サスケ』や『ワタリ』への言及はちょっとだけ。両者の熱心な読者だったわたしなどには残念。それに白土作品の「絵」についても、もっと知りたかった。

 すでに四方田犬彦『白土三平論』という長編の論考がありますから、それに対してあくまで副読本という位置づけになるでしょうか。

 しかし貴重な証言や指摘が多数詰まった本。今後白土三平作品を読むには必携の参考書であります。

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Comments

たしかに表紙、私は以前の「カムイ伝講義」(2008年)のほうが良いと感じましたね。

ただ基本的にごちゃごちゃこまごましているよりもこういうミニマルなデザイン好きです(^^

Posted by: くもり | July 09, 2011 01:48 AM

買おうかどうか迷っていたんですが、このレビューで買うことを決心。

Posted by: 紙屋研究所 | July 10, 2011 12:34 AM

関連して、TBにある本を読みました。読んでいただけたらうれしいです。ただし、楽天ブログは理不尽にもTBを受け付けていません。申し訳ありません。

Posted by: kuma0504 | November 19, 2011 11:51 AM

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