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May 02, 2011

第15回手塚治虫文化賞

 本日の朝日新聞朝刊で第15回手塚治虫文化賞が発表されました。

●マンガ大賞:『JIN -仁-』村上もとか、『竹光侍』松本大洋/永福一成
●新生賞:荒川弘『鋼の錬金術師』
●短編賞:山科けいすけ『C級さらりーまん講座』『パパはなんだかわからない』などサラリーマンを描いた一連の作品に対して

 大賞は作品に、新生/短編賞はひとに授与されるみたい。今回は完結した長編が賞をもらってるのが特徴ですね。ハガレンのどこが新生かというのはさておき、受賞作にとって今年は最後のチャンスだったわけです。

 大賞の二作はともに時代劇でした。『竹光侍』は、わたしの昨年度ベストワン。娯楽性と芸術性がともにきわめて高いレベルで同居している傑作。日本マンガが到達した頂点みたいな作品なので、みんな読んだほうがいいです。

 『竹光侍』はその華麗な絵やテクニックで読者をねじふせてしまうのですが、『JIN -仁-』はその対極みたいな作品です。

 わたしの思うところ、『仁』は感動作とかそういうのじゃなくて、すごく古典的マンガらしいマンガ、プリミティブな魅力を持った作品です。

 だって江戸時代に当時の技術でもってペニシリンを作ろう、っていうのですから。しかも主人公は臨床が専門の脳外科医。そりゃ、あなた無理だわ。おまえどこのスーパーマンだよ。

 ところがそこがマンガ。どうにかこうにかやりとげてしまうのですね。つまり絶対に不可能と思われるミッションを、知恵をふりしぼって、読者に不自然と思われるかどうかぎりぎりの線でもって、なんとか成功させる。

 『仁』のお話は基本この連続です。そのぎりぎりの線というのがクセモノで、読者の反応としては(1)よくやった、すごい。(2)そんなアホな。(3)バカバカしいけど、そこがおもしろい。という三種類が想定できるわけです。ここがいかにも昔ながらのマンガでしょ。マンガの成り立ちもそうだし、受け入れられかたもそう。

 世間的にはおおむね(1)という評価なんでしょうけど、ウチの妻あたりは(2)であると強く主張します。ヒネた読者であるわたしとしては(3)ですね。

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