BDの対極が「コミPo!」
スランプです。
いや-、マンガについて何か書こうとするのですが、いつものパターンで何かマエフリというかマクラというか、そこを書く段階でもう震災やら原発のことが頭に浮かんできてしまう。半径数メートルのことしか描いてない少女マンガを読んでても、この世界で震災は? とか考えちゃって。
ダメですね、つくづく自分はアマチュアだなあと感じてしまいます。プロのひとたちはこういう気分をふりきって、さらさらっと文章書いちゃうんでしょうね。
マンガ出版における今年最大の事件も、もちろん「震災」ということになっちゃいました。
まず出版・流通の問題。震災をきっかけにジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオンがネットで無料配信されましたし、さらに今後予測される紙不足は、マンガの出版形態を変えてしまうかもしれません。
さらに震災は、マンガのテーマや表現に影響を与える、ことになるだろうと思ってますが、これがはっきりしてくるのはいつのことになるでしょうか。
じつは震災が起こる以前に、これは新しい驚きの事件だなあと思っていたことがふたつありました。ひとつはオルタナティブ系海外コミックの邦訳ラッシュ。
ラッシュは大げさかもしれませんが、こんなに一度に読めるようになるとは。これらの作品に接すると、「マンガ」というものがいかに多彩な表現ができるのかを思い知りますねえ。
もひとつは「コミPo!」の発売です。
わたしも昨年発売当日にダウンロード購入しました。その後もちゃくちゃくとバージョンアップが進んでて、今や首が傾けられるようになってるし、色相、明度、彩度まで自由に変えられるようになってます。ここまでくると「筆」だけがないフォトショップみたいですね。
「コミPo!」関連の書籍もいくつか発売されてますが、そのうちのひとつ。
●『コミPo! マンガ入門』(2011年太田出版、1900円+税、amazon)
出版社からご恵投いただきました。ありがとうございます。
本書はリファンレンスブックではありません。いやそういう部分も少しはあります。まずはいろんなひとがつくった作例。書影を見ていただければわかりますが、豪華なメンバーが参加してます。なかでも驚愕したのが、いまざきいつきの作品。
ネットでも作品が見られますけど、本書に掲載されてるのはちょっとすごいよ。夜のクラブで殺戮がおこる、という作品ですが、光と影の演出がすごい。「コミPo!」だけでここまでの表現が可能であるとは。
そして本書では各氏が「コミPo!」について語ることで、それぞれがマンガ論になってるのですね。この部分は長嶋有のがなかなかおもしろかった。さらに「コミPo!」作者の田中圭一は、あのお下劣な作風からは信じられないくらい、マンガ表現の構造について考えてるひとで(以前に松山で講演を聞いたときにおどろいた)、本書でもその一部を開陳しています。ここも読みどころ。
「コミPo!」の発売は、マンガが記号の集積であることをあらためて明らかにしました。いっぽうで、BDみたいに絵にこだわったマンガもちゃんと存在します。いっぽうのはしっこが「コミPo!」、その逆のはしっこがエマニュエル・ギベール『アランの戦争』。これが同居しているのが今年。
「コミPo!」で描かれたマンガを是とするかどうか、各人で意見が異なるでしょうが、それも含めてマンガというのは大きな世界を持っているのです。
Comments
それはスランプではなく、普通の人なら当然の生理現象なのではないでしょうか。
Posted by: けおら | April 19, 2011 04:26 PM