上品で怖い『夢みごこち』
フジモトマサルの新刊が出ました。
●フジモトマサル『夢みごこち』(2011年平凡社、1400円+税、amazon)
著者は週刊ポストでのイラストのお仕事とか、一昨年だったっけ、朝日新聞に連載された森見登美彦の小説『ぽんぽこ仮面』、じゃなくてえーと『聖なる怠け者の冒険』の挿絵などで有名。あの挿絵はステキでしたね。
著者のマンガとしては以前に『二週間の休暇』という作品を紹介したことがあります。
本書もマンガです。ハードカバーで二色刷。造本もオシャレ。
今回登場するキャラクターはヒトではなくて、すべて動物。カモノハシだったりウサギだったりイヌだったりヒツジだったりが、二本足で歩いたりしゃべったりします。フジモトマサルの絵で動物ですから、これはもうカワイー、となるはずなのですが、これがとんでもない。本書は悪夢を描いたマンガなのです。
主人公がある夢から目覚めます。そこで彼はある事件に出会うのですが、それもまた夢。彼はさらに別の人格として夢から目覚めます。これがえんえんとくり返される。
7~8ページのショートストーリーが連続しますが、それぞれのお話はぜんぜん別のもの、と思っていたらじつは……
たんたんと語られててしかも著者の端正な絵柄でごまかされそうになりますが、そうとうにブラックな話が多い。この奇妙なバランスはほかでは見たことがない独自の世界ですね。WEB上で連載されたものですが、マンガ誌にはまず掲載されることのない大人のマンガ。
Comments