混沌たる『あしたのジョー』
『あしたのジョー』実写映画化の影響か、関連書籍(なのかな?)が発売されてます。
●「文藝別冊 ちばてつや 漫画家生活55周年記念号」(2011年河出書房新社、1200円+税、amazon)
●梶原一騎『劇画一代 梶原一騎自伝』(2011年小学館クリエイティブ、1600円+税、amazon)
前者はご存じ文藝別冊のKAWADE夢ムック。これがそうとうに良いデキで(というかちばてつやファンなので単純にうれしい)、全作品リスト、作品解説、ロングインタビュー、などなど。ちばてつやが15歳のときに描いた習作がそうとうにすごい。洋館の吹き抜け二階から一階を見おろした構図なんか、さすが双葉より芳しですな。
この本見てますと、ちばてつやの少女マンガとか、いっぱい読み直したくなります。
後者は1979年に毎日新聞社から刊行されたものの復刊。今回は日暮修一の挿絵がなくなってますが、そのかわりに自筆原稿を写真撮影したものが収録されています(同じものは上記の文藝別冊にも収録されてます)。梶原の自伝にはそうとうにホラが含まれてるので有名。
これではずみがついてしまったので、梶原一騎関連のもの同時進行で読んでます。
●斎藤貴男『梶原一騎伝 夕やけを見ていた男』(2005年文春文庫、わたしの持ってるのは2001年新潮文庫版で、さらに原著は1995年新潮社)
●梶原一騎『地獄からの生還』(1997年幻冬舎アウトロー文庫、原著は1984年ワニブックス「反逆世代への遺言」)
●梶原一騎『懺悔録』(1998年幻冬舎アウトロー文庫、原著は1986年こだま出版)
●真樹日佐夫『兄貴 梶原一騎の夢の残骸』(2000年ちくま文庫、原著は1987年日本文芸社「荒野に一騎咆ゆ」)
これらと『劇画一代』を見比べながら読んでるのですが、梶原一騎の人生は、悲しい。その絶頂のときから、というより『巨人の星』や『あしたのジョー』で頂点に駆け上ろうとしているときからすでに、不穏で何やら悲しいのです。
ご存じのとおり晩年の梶原一騎は虚飾と偽悪の生活ののち破滅に向かいます。日本マンガ史の暗黒面ですね。ちばてつやと梶原一騎が組んだ『あしたのジョー』ってのは、つくづくマンガの裏表、清濁、混沌の象徴なんだなあと。
Comments
近くの図書館に「あさってのジョー」がないのでどうしようかと思っていたら、新潮文庫「日本凡人伝」に収録されてることを知りました。さっそく図書館で探してきます。でも最近の猪瀬直樹は「敵」なんですけどね。
Posted by: 漫棚通信 | February 16, 2011 11:03 PM
梶原最晩年のインタビューが収録されてる、現某都副知事の初期著作「あさってのジョー」もぜひ。
Posted by: かくた | February 14, 2011 10:50 PM