青木朋の奇妙な味『三国志ジョーカー』
最近のお気に入り、青木朋について。
著者の作品としては2002年にスピリッツに連載された『机上の九龍』があります。続編が幻冬舎の雑誌で連載されましたが突然の終了。さらに続きが新潮社が運営するネット上で連載され2009年にやっと完結、現在は全三巻で単行本化されてます。
●青木朋/長崎尚志『真・机上の九龍』全三巻(2009年新潮社、各600円+税、amazon)
いや苦労なさってますなあ。原作脚本は「空論創作委員会」こと長崎尚志。じつはまだ読んでません。
青木朋作品は、先日、昨年夏に発売された『幇間探偵しゃろく』というのを読んだのですが、これがなかなかおもしろかったのですよ。
●青木朋/上季一郎『幇間探偵しゃろく』1巻(2010年小学館、524円+税、amazon)
原作脚本は謎の人物ですが、きっと長崎尚志なんじゃないかな。
ときは昭和二年、たよりない若旦那が花街で出会う小事件を、飲んだくれの幇間=たいこ持ちの「しゃろく」さんが快刀乱麻を断つごとく解決する、という軽めの連作。
絵が少女マンガタッチなのに服装や背景の時代考証が的確で感心しました。オヤジマンガ読者はこういうのにひかれちゃうのです。
で、調べてみると著者の主戦場はどうも中国モノ+ちょっとBL+ミステリらしく、こんなものを描いてらっしゃる。
●青木朋『ふしぎ道士伝 八卦の空』全五巻(2006年~2008年秋田書店、各514円+税、amazon)
●青木朋『龍陽君始末記』全三巻(2009年~2010年秋田書店、各400円+税、amazon)
前者は三国時代、後者は清の時代を舞台にしたミステリ連作。原作つきじゃなくても、堅実なストーリーと考証でおもしろい作品になってます。で、最近出た著者の新作がこれ。
●青木朋『三国志ジョーカー』1巻(2010年秋田書店、400円+税、amazon、
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えっとですね、中国モノ+ちょっとBL+ミステリというのはいつものとおりで、今回の主人公は三国志でおなじみ、司馬仲達です。でもねー、書影を見ていただくとわかりますが、三つ揃いを着たお兄ちゃんが紙巻きタバコを吸ってます。なんぞこれは。
本作がじつに珍作でありまして、この背広を着てるのが主人公の司馬仲達。彼が魏の曹操陣営に参加して、政治的背景のある小事件を解決してゆく……のかと思ったら、敵役に登場するのが未来人(!)の諸葛孔明。
三国志、司馬仲達と諸葛孔明の戦いのウラに、じつは歴史改変SFが展開していたという、なにがなにやらの作品であります。本作でも堅実な時代考証が健在、さらにメガネっ娘やBL風味が加わって、まったく先が読めないストーリー。今後が楽しみ。
Comments
青木朋のいいところは、まずはキャラクター。次に描写力。そして見のがせないのが題材への愛ですね。だから中国モノのほうが楽しい。
Posted by: 漫棚通信 | January 09, 2011 08:40 PM
青木朋は私も注目している作家の一人ですがなかなか紹介することができませんでした。『机上の九龍』よりも、『八卦の空』のような中国モノの方が断然いいと思います。
デビューのきっかけとなった短編も読んだことがありますが、やはり中国ものでした。この人は机田九的な「カッコいい人」を描こうとするより、古代中国の知識を背景に「笑話」「機知や頓知の話」に近い雰囲気のものを積み重ねていってもらったほうが、断然よくなると思います。
Posted by: 紙屋研究所 | January 09, 2011 03:57 AM