「非実在犯罪規制条例案」だヨ!全員集合
東京都が性懲りもなく本年6月に否決された「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改正案を、修正した上で再度提出してるわけですが。
前回は珍妙な「非実在青少年」という新語が有名になりました。今回はそれにもましてまさに「非実在犯罪規制条例案」となってます。
なかでも規制対象が「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)」てのはなんやねん、とあちこちで評判になってますね。石原慎太郎東京都知事の書いた小説とそれを原作にした映画を除くための文言である、との評判がもっぱら。
しかしマンガの表現規制は昨日今日始まったものではありません。ネット上にはこういうのもあります。ただしこれでは細かいことはよくわからない。書籍なら橋本健午『有害図書と青少年問題』(2002年明石書店)という労作がありますが、微妙に古くなっちゃった。そこでこれ。
●長岡義幸『マンガはなぜ規制されるのか 「有害」をめぐる半世紀の攻防』(2010年平凡社新書、780円+税、amazon)
良書です。勉強になるなあ。東京都は今回の条例改正案を単なるゾーニングの問題であると矮小化しようとしてますが、本書を読めばそんなはずはないことがよくわかります。
章立てとしては、『第一章:ドキュメント「非実在青少年」規制問題』で本年春の騒動の総括(けっこう知らないことも多かった)。『第二章:規制の論理とその仕組み』では現状でいかにマンガは自主規制されているかのルポ(けっこうみんなきちんとしてるじゃないか)。
第三章と第四章が『マンガ規制の歴史』で、本書の半分以上を占めてます。ここが読ませどころで、手塚治虫らが批判された「悪書追放運動」や永井豪『ハレンチ学園』などが有害図書に指定された事件に始まり、90年代の「ポルノコミック」規制から現在にいたるまでマンガ表現規制がいかになされてきたか。簡潔かつわかりやすい記述がなされてます。
著者はマンガ規制問題を長く追っかけてきたジャーナリストですが、記述は意外なほど冷静。
いやーあれですな、表現規制は一見、保護者や消費者運動のように見えても、じつは警察が深く関与してるんだなあと。そしてマンガ表現規制にはマスコミ(新聞、週刊誌、TV)が大きな役割を果たすのですが、彼らは表現問題について少しはマジメに考えてるのか、ほんとにどうしようもないなあと。
表現規制というのはたいてい警察主導で警察関係の団体が投書かなんかして、その後マスコミが追従して騒ぎになってるのですね。
本書を読みますと(1)表現規制で性犯罪が増えるか減るかの実証はどうでもいいと考えているひとがどれほど多いか。(2)自分の不快な表現を規制するためには「表現の自由」はどうでもいいと考えているひとがどれほど多いか。
「規制をしたいひと」というのは何がどうあっても規制をしたいのであって、理屈とか論理とか通じない(のじゃないか)のがよくわかりました。エンドレスの戦いは続くのです。
Comments
感情的な発言をしている人に 統計資料を見せて 理論的に説得しようと言うのが そもそも無理なんで もっと相手の琴線に触れる一言が大事だと最近つくづく思う
Posted by: かんばせ | December 06, 2010 09:10 PM