今年はBDの年でした
2010年の話題、ビッグニュースは何じゃろかと考えますと、まずは出版不況、マンガ不況。でもって電子出版のプラットフォームがつぎつぎと販売されましたけど、電子書籍ビジネスそのものはまだまだ試行錯誤が続いています。
そして「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案」が可決されました。マンガ表現規制はひとつレベルがあがったわけで、電子出版における表現規制とか児ポ法改正とかもからんで、今後も目が離せません。
身近なところでは「ゲゲゲの女房」のTV化と「コミPo!」の発売がありますね。「コミPo!」は遊びはじめるときりがないおもしろいソフトで、いろんな使い道がありそう。
また本年は、海外マンガ、とくに多くのBDが日本に紹介されたことでも記憶されるでしょう。
数年前から「ユーロマンガ」が不定期ながら雑誌としてBD紹介を続けていましたが、この年末になって各社から一斉に単行本が発売。ニコラ・ド・クレシーが飛鳥新社と小学館集英社プロダクションから。国書刊行会からはモノクロBDがシリーズとして刊行。さらにメビウスの『アンカル』ですよあなた。
●ニコラ・ド・クレシー『天空のビバンドム』(2010年飛鳥新社、2700円+税、amazon)
●ニコラ・ド・クレシー『氷河期』(2010年小学館集英社プロダクション、3000円+税、amazon)
●パスカル・ラパテ『イビクス ネヴローゾフの数奇な運命』(2010年国書刊行会、2500円+税、amazon)
●クリストフ・シャブテ『ひとりぼっち』(2010年国書刊行会、2500円+税、amazon)
●メビウス/アレハンドロ・ホドロフスキー『アンカル』(2010年小学館集英社プロダクション、3800円+税、amazon)
『天空のビバンドム』は「ユーロマンガ」連載中に何度も読んでました。だって「ユーロマンガ」は発売間隔が長いから前のストーリー忘れちゃうし、作品そのものがもともと難解。
「ユーロマンガ」が発売されるたびにくり返し読んだはずですが、ストーリーが理解できてるかどうか今も自信がありません。しかしド・クレシーの美麗な絵は、日本マンガになれてしまってる読者にはまさに衝撃です。
対して『氷河期』はお話が(比較的)わかりやすいのがいいです。絵や彫刻という「美術」が忘れ去られた未来。ある探検隊が雪と氷に覆われたルーブル美術館を発見します。封印を解かれたルーブルで幻想と現実が出会う……
ルーブル美術館からの依頼で、ルーブルそのものを題材にした作品。ルーブルの収蔵品を紹介しながらおもしろいお話を語る、というすっごく特殊な学習マンガみたいな作品。
で、ついに出た『アンカル』。名のみ高いメビウスですが、雑誌での紹介は別にして単行本としての邦訳はほんの少し。『アンカル』の原著は全6巻で、1986年に1巻だけ講談社から邦訳されたことがありますが、それっきり。
わたしも仏語版で数冊持ってますが、フランス語、ぜんぜん読めませんし。絵をながめてただけです。
今回の邦訳は全6巻を一冊にまとめたハードカバー、330ページ、オールカラー。330ページったって、日本マンガじゃないですからね。りっぱな大長編であります。
惜しいのは、邦訳の判型がB5判に近いものになっちゃったこと。原著はでかいからなあ。「ユーロマンガ」よりさらに大きく、福音館書店版タンタンよりもっと大きい。
あとカラリングは古いバージョンのものを採用してて、最近フランスで発売されてるコンピュータ彩色のものより単調で、絵の印象がかなりちがいます。ま、これはこれで味があるんですが。
いずれにしても、連載開始が1980年、6巻が発売され完結したのが1988年。メビウスの代表作として世界中で評判になったのはご存じのとおり。その作品が20年以上たってやっと邦訳されたわけです。ただただ、めでたい。
Comments