廃墟とラブコメ『地球の放課後』
日本のあちこちに遍在している「○○と美少女」というのは日本マンガ/アニメが獲得した大きなアドバンテージだと感じるわけです。○○のところには何が入ってもOKで、「国際社会と美少女」「数学と美少女」「建築と美少女」「忍者と美少女」、なんでもあり。エヴァだって「ロボットと美少女」ですし、もちろん日本マンガの古典的題材となってきたのが「SFと美少女」ですね。
●吉富昭仁『地球の放課後』1・2巻(2010年秋田書店552円+税、amazon)
つい最近、2巻が発売されました。
書影カバーがステキです。1巻は水没した街でくったくなさそうに遊ぶ三人の美少女とひとりの少年。2巻はアスファルトを突き抜けてはえたヒマワリに水やりをする少女。この静かで楽しげなイメージどおりのマンガ。
この世界では謎の怪物「ファントム」の襲撃により、全人類が消えてしまっています。残されたのが、ひとりの少年と三人の少女。
自分たち以外、無人になった都会の生活とは。こういうのはこれまでもどこかで見てきたようなイメージですね。映画「うる星やつらビューティフルドリーマー」もそうだったし、最近の映画「アイ・アム・レジェンド」もそうか。
この状況、いかにもサバイバルものになりそうです。まあ怖いのは、ケガと病気、不潔な環境、野生化した動物、火事や洪水、人間関係のあつれき、などいくらでも考えられます。
しかしこのマンガ、そういうのはわかっててスルー。四人ともよくできた性格で、ケンカしない、男の子をとりあわない。煮炊きはカセットコンロがあるし、風呂はドラム缶。クルマで海水浴に出かけ、街にあふれる洪水化した水は「循環作用」でとてもきれい。菜園でキュウリやトマトつくってます。
淡い恋のさやあてがあって、もちろんあざとい入浴シーンやパンチラもありで、いやもうサバイバルじゃなくてラブコメのハーレムの楽園の、なわけです。
ところが。この世界ではところどころ時間のずれみたいなものが発生するし、やはり奇妙な「ファントム」が出没する。「ファントム」とは何か、消えた人類はどこへ行ったか、こういう大きなSF設定がお話をひっぱってて、2巻でもまだ謎が提出されてるだけ。こりゃ最後まで読まないわけにはいかんでしょう。
静かな無人の街=廃墟の描写がいいですね。「無人」や「廃墟」が少年少女にとって楽園=ラブコメとして描かれるというアクロバティックな作品。
Comments
あらこれはお恥ずかしい。修正しました。
Posted by: 漫棚通信 | September 23, 2010 10:10 PM
いつも愛読させていただいてます。ところで、「アドバンテージ」では……。
Posted by: うかつくん | September 23, 2010 12:33 PM