のんびり待ちます中村明日美子
中村明日美子の新作が二冊連続して発売されたわけですが、ほぼ同時に著者は活動休止を公表。今はもう自身のサイトも閉鎖されてます。
ところがこの二作、おもしろいんだ。
●中村明日美子『ウツボラ』1巻(2010年太田出版、680円+税、amazon)
●中村明日美子『呼出し一(はじめ)』1巻(2010年講談社、562円+税、amazon)
BLで有名な著者ですが、わたしはそっち方面が苦手なものでうちにあるのは白泉社の比較的ライトな少女マンガ短編集『片恋の日記少女』『曲がり角のボクら』あたり。
今回はかたや耽美系ミステリ、かたや青年誌連載のラブコメです。
『ウツボラ』はある少女の転落死から始まります。そこに双子の妹を名のるもうひとりの少女が登場。彼女たちにからむのが少女の投稿小説を盗作していたらしい有名作家。
顔のない死体、一人二役あるいは二人一役、盗作、とミステリとしては古典的材料がそろってて、お耽美な語り口、雰囲気がいい。どのようにも転がせそうなストーリーで、もっと先が読みたくなりますね。
タイトルの意味がよくわかんない。「ウツボ」の複数形で「ウツボラ」? まさかね。
『呼出し一(はじめ)』は、相撲の呼出しになる(であろう)少年の話。高校生のハジメくんは相撲好きの両親から、呼出しに就職することを提案されます。
もちろんイマドキの若者ですからそういうのはちょっと…… という主人公ですが、両国に相撲を見に行き、すっかり魅せられてしまう。というところまで。
異形の巨人たちによる演武であるところの相撲の魅力がうまく描かれてて、相撲が好きになっちゃいそう。しかも「呼出し」というだれもがよく知らない特殊職業もの。いいところに目をつけました。
ただし大相撲存続の危機といわれてるこの時期の連載とはタイミング悪かった。相撲のダークサイドを描かなきゃ「今」のマンガとはいえないでしょう。ところがそういう方向性のマンガじゃなさそうなのがちょっとつらい。
しかし中村明日美子は耽美系だけじゃないのね。主人公が相撲を夢中で見ている。読者全員が、これはもうデートの時間に遅れるな、と思ってるとまさにそのとおりになっちゃうのですが、そこからの展開がうまくて読後感もいい。なんでも描けるひとだなあ。
二作ともぜひ続きが読みたくなりますが、残念ながらの活動休止。のんびりと待たせていただきます。
Comments
こんばんは。
漫棚さんのこの記事で中村明日美子の活動停止を知りました。「呼出し一」が面白くなりそうだっただけに残念です。
あわせて漫棚さんには、「ウツボラ」を手にするきっかけを与えていただき感謝しています。
>タイトルの意味がよくわかんない。「ウツボ」の複数形で「ウツボラ」?
私もよくわかんなくて、ふと思いついた言葉が「ウツボカズラ」。なんとなく"引き込まれたら抜け出せない感"があるかと思ったんだけど、やっぱムリがありそうですね。
あらためて考えてみて、これはいわゆる古語なんじゃないかと。
「うつほ」って言葉があって、「中がからっぽ」って意味だそうです。
http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=%E3%81%86%E3%81%A4&match=&itemid=01747900
で、「うつほら」というのは「空洞」を指すらしい。
http://bin.ti-da.net/e447572.html
「ウツボラ」=「うつほら」だとしたら、"空虚"ってことを指しているんじゃないでしょうか?(何が?誰が?)
ちなみに魚の「ウツボ」もそういう空洞に住むからうつぼと呼ばれたという説もあるそうですよ。
http://202.254.165.145/~murotogyoshi/sakana15.html
Posted by: 赤ガエル | August 24, 2010 11:53 PM
きゃい~~ん♪
Posted by: トロ~ロ | August 07, 2010 03:17 PM