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August 27, 2010

バルダツィーニのセックス・ファンタジー

 マンガとエロは親和性が高い、というわけではなくて、エロというのはどのようなメディアやジャンルにかかわらず、あらゆるものと親和性が高いものです。マンガ方面でも近代マンガ以前、カリカチュアと呼ばれていた18世紀のころから、エロを扱うマンガが存在しました。もちろん現代でも日本だけじゃなく、世界中にエロをテーマとしたマンガがあります。

 たとえばイタリアでは、1960年代にフュメッティ・セクシー・タスカビーリ(ポケット版成人マンガ)と呼ばれるエログロマンガが大流行しました。これらはいわゆる「俗悪」で安価なマンガでしたが、これに対抗して洗練されたエロ描写を追求するイタリア人マンガ家も登場するようになります。

 代表的なのはグィド・クレパクス Guido Crepax 。日本でも『ヴァレンティーナ』『ビアンカ』『O嬢の物語』などが邦訳されています。

O嬢の物語〈1〉 O嬢の物語〈2〉
(↑現在邦訳が発売中の『O嬢の物語』、書影クリックで日本アマゾンに飛びます)

 クレパクスの絵を知りたいかたはグーグル画像検索で「CREPAX」をどうぞ【エロ注意】(以下エロ方面の検索は、検索オプションのフィルタリングをはずしますと検索結果が少し変わります)。クレパクスはスタイリッシュかつ芸術的すぎて、あまりエロくはないかな。

 邦訳はありませんが、セルピエリ Paolo Eleuteri Serpieri もイタリアのビッグネーム。宇宙を舞台にしたSF、ドルーナ・シリーズが有名です。【追記:とか書いてたら、セルピエリはエロ以外で邦訳があるぞとツイッターで教えていただきました。地元の図書館が所蔵してるみたいなので、週末に読んできます】

 セルピエリの画像検索はこちら【エロ注意】。たいへん肉感的な女性を描くひとで、クレパクスと違ってエロ度高し。自身のサイトのギャラリーなどを見ればわかりますが、女性のお尻ばっかり描いてますな。

 さて、欧米ではそれなりに有名だけどおそらく日本ではほとんど知られていない、わたしが好きなイタリア人マンガ家、ロベルト・バルダツィーニ Roberto Baldazzini をご紹介しましょう。とか書いてますが、その筋のヒト(どの筋だ?)にはひそかに有名だったりして。

 とりあえず画像検索で【エロ注意】。 

 ひとつひとつの画像をよく見ていただくとわかりますが、彼女たちの多くは、一見女性のように見えても下半身にちんちんを持ってる。そう、バルダツィーニのエロマンガにはトランスジェンダーばかりが登場するのです。

 もっとも有名なのは「CASA HOWHARD」シリーズ。日本でもアメリカアマゾンから英語版、フランスアマゾンからフランス語版を取り寄せることができます。現在4巻まで刊行されていて、この秋には5巻が発売予定。

Casa Howhard Casa Howhard Volume 2 Casa Howhard Casa Howhard, Volume 4 CASA HOWHARD, Vol. 5
(左上から順に1巻から5巻、書影クリックでアメリカアマゾンに飛びます)

 「CASA HOWHARD」というのはアパートの名前。ここに住んでいるのは全員、おっぱいとちんちんを持ったトランスジェンダーたち。

 日本のエロマンガにも「ふたなり」モノがありますが、そこに登場する多くのふたなり娘たちは、おっぱいを持つ女性体型でありながらなぜか陰茎と膣と肛門を持ってる(じつはよく知らないのですが、わたしの読んだことあるのはそんなのが多かった)。

 でもいわゆるほんとのシーメールのかたたちは、膣はなくてそこにあるのは陰茎と睾丸と肛門ですよね。バルダツィーニの描くトランスジェンダーたちもそのタイプです。

 主人公は「CASA HOWHARD」の住人のひとりアンジェラ。彼女は体型も思考も女性そのものですが、ただし下半身だけは男性です。このアパートに住んでいるのは全員が同じタイプの若いトランスジェンダーばかり(えーと13人くらい?)。リーダー格のリズおばさんを中心に、彼女たちの生活、じゃなくてセックスが描かれます。

 ストーリーは、はっきりいいますが、ないっ。彼女たちの美しい姿態といろんなセックスをながめる「だけ」のマンガです。

 バルダツィーニの特徴は、そのシンプルな線です。日本のエロマンガは動線と擬音と叫びと汗と汁で成立していますが、バルダツィーニのマンガはむしろ静的でデザイン画のよう。

 第1巻はモノクロですが2巻からはカラーで発売されてます。現在アメリカアマゾンでは(出版元でも)英語版の1巻だけ品切れで、古書にむちゃ高価な値付けがされてますが、おそらくそのうち1巻もカラー化されて再発売されると思います。

 2巻はアンジェラたちがナンバーワン・トランスジェンダー・チームを決めるTV番組に出る話。3巻はアンジェラのおっぱいと乳首が巨大になってさあたいへん、という話。なんだろね。

 お話はどんどんファンタジー化していって、4巻になるとジャングルで失踪した友人を捜す探検に出かける「CASA HOWHARD」のみなさん。わたしはこの作品がもっとも好きで、ジャングルに未知の動植物や部族が登場しますがこれがみんなトランスジェンダー、というとんでもないもの。アンジェラたちがジャングルを進むときの服装も、手袋とブーツは身につけてても、必ずちんちんとお尻はほり出してるんだからなあ。

 秋に発売される5巻も表紙イラストを見ると、日本マンガふうの妖精(?)が登場してて、ますますファンタジー度が増してるようです。

 バルダツィーニにはもう一つ有名なシリーズがあって、そちらは「ベイバ Bayba」(フランス語では「Beba」)。

Bayba: The 110 Bj's Bayba, Domina in Red Bayba: Lady Brown
(左から1巻から3巻、書影クリックでアメリカアマゾンに飛びます)

 主人公のベイバもトランスジェンダー。小さなおっぱいと小さなちんちんを持った赤毛で魅力的な彼女は、娼館で男たちに縛られたり鞭打たれたりアレされたりコレされたりしてます。彼女は1巻のなかばでおっぱいを大きくして、ちんちんを切って完全な女性体型になっちゃったあと、110人の男を24時間でイカせるという新記録に挑戦する、というお話。

 野暮を承知で書きますが、1巻のサブタイトルの「The 110 bj 's 」の「bj 」てのは「Blow Job 」のことじゃないかと。ハンドジョブが手でナニすることで、ブロウジョブは口でナニすることね。

 「ベイバ」は全編これ緊縛と過激なSMとセックスシーンの連続です。

 ベイバのシリーズはより強くデフォルメされた絵柄。そして男性はすべて醜悪なブタとして描かれてます。ですからまるでアメリカのTVカートゥーンみたいな感じ。これでビザールで過激なSM世界がくりひろげられるのですね。

 1巻で完全な女性体型を得たはずのベイバですが、続く2巻と3巻で描かれるのは1巻の前日譚。おそらく作者は女性体型のベイバにはあまり興味がなくて、トランスジェンダー体型がすごく好きなんでしょう。

 続巻では男性読者にとってはさらに痛そうな(なんせベイバは下半身は男性ですので、陰茎と睾丸がおもいっきり縛られ引き延ばされつぶされそうになるわ、ちんちんには棒が突っ込まれるわ、肛門に巨大なものが挿入されるわ)シーンが連続します。

 もひとつ。少し古い作品ですが「キアラ・ローゼンバーグ」。これにはトランスジェンダーは登場しません。フランス語版は「Chiara Rosenberg: La Double Vie d'une dominatrice」、英語版は「She Dom: The Awakening Of Chiara Rosenberg」。

She Dom: The Awakening Of Chiara Rosenberg
(↑これは英語版書影。フランス語版書影はコチラ。フランスアマゾンに飛びます)

 英語版の古書には腰が抜けるほどの値段がついてますが(90ドル以上ってどうよ)、カラリングされ新たなページが描き足され、ごく最近ファイナルエディションとして発売されたのが上記リンクのフランス語版です。

 若く美しいローゼンバーグ夫人は、作家である夫と家庭ではドミネーションによるセックス関係にあります。セックス用語のドミネーションてのは日本でいうところのSMでして、彼女は裸で手を縛られてランニングマシンで走らされたり、外出時に浣腸されたり。

 あるパーティーで若いカメラマンと出会ったローゼンバーグ夫人は、彼と不倫関係になります。しかしその関係は家庭とは逆で、彼女は若者に対してセックス上の女王様としてふるまうようになる。三人の関係はどのように変化していくのか……

 とまあ、この作品にはきちんとストーリーがあります。セックス描写は後年の作品のような直接の挿入などは描かれてませんが、それはそれでなかなかオモムキ深いものがあったり。

 バルダツィーニが描くエロは、日本のエロマンガ愛好家にとっては動きや擬音が少なく、マンガを「読む」ひとにはもの足りなく感じるかもしれませんが、ゆっくりとエロい絵を「見て」楽しもうとするひとなら楽しめるのじゃないか。日本だったら、佐伯俊男とか宮西計三とか、かしら。

 バルダツィーニのサイトはコチラ

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August 23, 2010

すみません雑談です

 『もやしもん』のネタ元としても有名な小泉武夫先生、彼の『不味い!』(2003年新潮社)を読んでいたら最近のピーナツがいかに不味いかを書いた文章が載ってました。で、今日スーパーをうろついてたら、100g=500円のピーナツを売ってた。

 安いものなら100g=100円だから、なんと通常の五倍。シャア・アズナブルもびっくりという値段ですが、中国産じゃなくて千葉産の南京豆で、加工は広島、というもの。

 ここは話のタネ、というわけで買ってしまいましたよ、100g=500円。こういうのはすごく思い切りが必要です。買ってからも、違いが全然わからなかったらどうしようと、後悔しながらの帰宅。

 家で食べてみますと、あらこれはたいしたもの、口の中で噛み砕いた後のあと味がちゃんと香ばしい。安物の柿ピーのピーナツと食べ比べてみましたが、これが全然違うんだ。ピーナツは「後を引く」と言われますが、たしかに久しぶりに後を引くピーナツを食べたなあ。

 このおいしいピーナツを食べながら、「唐沢俊一検証blog」の検証班さんが書かれた『唐沢俊一検証本 vol.3 オタク編』と『vol.0 アマチュア編』を読んでたのですが、いやいやあれですな、自分が(あまり)登場しないということもありますが、これはおもしろい。

 プロのライターとしてそれなりの文章量を書いてきた人物が、いかにほら吹きで嘘つきであったか、娯楽読み物として堪能しました。

 わたし自身は一連の事件の当事者でもあるので、自分が登場しますとちょっと冷静になれない部分もあるのですが、今回の検証班さんの本を読んで、唐沢俊一の同時代を彼と似たような趣味を持って生きてきた人間として、反面教師としていろいろと考えさせられることが多かったです。今さらながら検証班さんは文章がうまいなあ。

 で、ここ数日は『スコット・ピルグリム』の原作マンガ(英語版)をずっと読んでます。その間にはイタリアのエロマンガ家、バルダツィーニ作品の英語版とフランス語版(←まったく読めませんが)をじっくり眺めたりして(←家族にはこっそり)。

 英語(あるいはその他の言語)の本を読んでると、数ページごとに意識がとんじゃうのが困ったものです。

 あと先日、兵庫県立美術館の「水木しげる妖怪図鑑」を見てきましたが、大阪の阪神百貨店「ゲゲゲ展」にも行くつもり。

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August 18, 2010

マンガ内の「すごい」

●小畑健/大場つぐみ『バクマン。』9巻(2010年集英社、400円+税、amazon

バクマン。 9 (ジャンプコミックス)

 『バクマン。』にひっかかるところはいろいろあるのですが、まあいちばんの問題は、そこに描かれてる「マンガ内マンガ」、ほんとにおもしろいのか? という点じゃないでしょうか。

 「マンガ内マンガ」の絵柄とかストーリーとか全体の雰囲気はいろいろと説明されているものの、結局読者に提示される評価基準は、(1)読者アンケートで何位だったか、(2)登場人物であるマンガ家や編集者たちによる「すごい」とか「おもしろくない」とかの感想、だけなんですよね。

 ここが現実のマンガ史を下敷きにした藤子A先生の『まんが道』と大きく違うところ。

 『まんが道』では実際に描かれた初期藤子作品がそのままのかたちで読めますから、読者は「マンガ内マンガ」がどのようなものか直接知ることができます。

 さらに『まんが道』の読者は手塚治虫作品や藤子不二雄作品がどのようなものかすでに知っている。かりに読んでなくても世間でどのような評価を得ているかを知っている。つまり読者の理解の助けになるような情報が、マンガ外にも存在しているのです。

 ところが純フィクションである『バクマン。』では「マンガ内マンガ」がどのようなものであるのか、読者に「想像」させているだけ、というか「錯覚」させているだけなのです。

 この錯覚の成立に欠かせないものが、(1)ライバルとの相対的関係と、(2)マンガ内での他者からの評価ですね。いかにも強そうなライバルを倒せば「すごい」。マンガ内の評論家や観客、あるいは対決している敵から賞賛されれば「すごい」。

 これは運動部系「すごい」より文化部系「すごい」の場合、さらに顕著になります。

 五感のうち視覚だけにたよっているマンガでは、味覚、嗅覚、聴覚、触覚の「すごい」なんてものは本来描けないはずですが、そこをムリヤリ描いてしまうのもマンガなのです。

 おいしい料理、見事な演奏、さらにとても柔らかいオッパイを、マンガでどのように表現するか。いかにして読者に「すごい」と思わせるか。

 そこに登場するテクニックが(1)対決と(2)登場人物による賞賛です。「味」を扱う『美味しんぼ』や、「演技」を題材にしてる『ガラスの仮面』なんか、全編こればっかですものね。青年誌系のセックス対決→「ああっ、すごい」というのもこのうちか。

 ただし、視覚にうったえて表現するものを題材にするなら、ほんとに「すごい」ものを見せてくれるほうがいいに決まってます。

 河合克敏『とめはねっ!』は、実際に「すごい」と思わせる書道作品を作中に登場させることで説得力あるマンガになってます。片山ユキヲ『空色動画』も作品内アニメのアイデアがなかなか健闘してました。

 「マンガ」を題材にしてる『バクマン。』は、「料理」や「音楽」を扱ってるマンガとは違います。「マンガ内マンガ」を読者に見せることが可能、なはず。対決と賞賛のテクニックだけじゃね。

 マンガ内で登場人物が大絶賛するような「マンガ内マンガ」をほんとに描いて読者に見せてしまうと、ある比率で必ず、おもしろくない、という層が存在するのは避けられません。そういうひとたちにとっては、マンガの展開そのものが納得できなくなってしまうかもしれません。それにほんとに大傑作なら、「マンガ内マンガ」としてより本格的に連載しちゃったほうがいい、という考えかたもあるし。

 しかしそれらを承知の上で、今後『バクマン。』が読者が納得できるような「すごい」「マンガ内マンガ」を読者に提示できるかどうか。注目してます。

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August 16, 2010

七周年

 漫棚通信という名でネット上で文章を書き出して本日でまる7年となりました。たったこれだけの時間であるのに、ネット上で個人が情報を発信するかたちにもいろいろと変化がありましたねえ。

 7年前には個人が「ホームページ」と称する個人サイトを開くのが流行してて、わたしも「ホームページ・ビルダー」なんかを買ったのですが、すぐにトレンドが「ブログ」に移り、それが今では「ツイッター」ですからね。

 わたしもこれまでに「マンガ系ブロガー」とか名のったりしたこともありましたが、最近は「ブロガー」という言葉も死語になりつつあるみたいですし。今後は自称をどうしようかしら。

 いっぽうで当ブログが対象としている「マンガ」をとりまく環境も、激変しています。出版不況とマンガ不況が同時に到来していますし、マンガを電子書籍として買ったり読んだりする時代がすぐそこまでやってきているようです。

 実際にわたしもネット配信されてる、相原コージ『真・異種格闘大戦』と福満しげゆき『うちの妻ってどうでしょう?』はチェックしてたりしてます。もしこれらの作品が「本」の形じゃなくて「電子書籍」だけで販売されるなら、そっちを買うかもしれない。

 最近ブログ更新頻度が減ってますがそこはご容赦ください。今後ものんびりと気負わずに記事を書いていくつもりですので、よろしくお願いします。

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August 13, 2010

お暑うございます

 お盆ですねー。わたしの住んでるとこは一年でいちばん人口が増える時期なので、静かなお盆とは無縁です。

 最近メインマシンとして使ってるノートパソコンが不調。さすがにiPad で文章書くのはTwitter 程度が限界ですので、買いかえる決心をしました。ここしばらく通販ショップの価格をチェックしてましたところ、先週末に9万6000円、今週初めに9万3000円、昨日朝に9万円。ついにがまんできずに注文してしまいました。まだ商品は届いてません。

 で、よせばいいのに本日も価格をチェックしてみますと、さらに1500円下がってる。いやー、なんつーかもう。

 さらにXPからWindows 7に切り替えですので、ソフトもいろいろとそろえたい。少なくともATOK は買わなきゃです。あとアンチウイルスソフトもどれにするか、いろいろと面倒。でもこういうのちょっと楽しみなんですよね。(とか書いてたら、たった今、注文した品が届きました。昨日の注文で今日か。ネット通販、速えー)

 わたし今年のコミケに参加できませんが、いつもお世話になっている「漫画の手帖」59号に短い文章を寄稿させていただきました。ネタは18世紀末のイギリスエロマンガの巨匠、トマス・ローランドソンについて。

 3日目8月15日(日曜日)西館・の-16bで頒布されてますのでよろしくお願いします。

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August 06, 2010

のんびり待ちます中村明日美子

 中村明日美子の新作が二冊連続して発売されたわけですが、ほぼ同時に著者は活動休止を公表。今はもう自身のサイトも閉鎖されてます。

 ところがこの二作、おもしろいんだ。

●中村明日美子『ウツボラ』1巻(2010年太田出版、680円+税、amazon
●中村明日美子『呼出し一(はじめ)』1巻(2010年講談社、562円+税、amazon

ウツボラ(1) (F×COMICS) 呼出し一(1) (モーニングKC)

 BLで有名な著者ですが、わたしはそっち方面が苦手なものでうちにあるのは白泉社の比較的ライトな少女マンガ短編集『片恋の日記少女』『曲がり角のボクら』あたり。

 今回はかたや耽美系ミステリ、かたや青年誌連載のラブコメです。

 『ウツボラ』はある少女の転落死から始まります。そこに双子の妹を名のるもうひとりの少女が登場。彼女たちにからむのが少女の投稿小説を盗作していたらしい有名作家。

 顔のない死体、一人二役あるいは二人一役、盗作、とミステリとしては古典的材料がそろってて、お耽美な語り口、雰囲気がいい。どのようにも転がせそうなストーリーで、もっと先が読みたくなりますね。

 タイトルの意味がよくわかんない。「ウツボ」の複数形で「ウツボラ」? まさかね。

 『呼出し一(はじめ)』は、相撲の呼出しになる(であろう)少年の話。高校生のハジメくんは相撲好きの両親から、呼出しに就職することを提案されます。

 もちろんイマドキの若者ですからそういうのはちょっと…… という主人公ですが、両国に相撲を見に行き、すっかり魅せられてしまう。というところまで。

 異形の巨人たちによる演武であるところの相撲の魅力がうまく描かれてて、相撲が好きになっちゃいそう。しかも「呼出し」というだれもがよく知らない特殊職業もの。いいところに目をつけました。

 ただし大相撲存続の危機といわれてるこの時期の連載とはタイミング悪かった。相撲のダークサイドを描かなきゃ「今」のマンガとはいえないでしょう。ところがそういう方向性のマンガじゃなさそうなのがちょっとつらい。

 しかし中村明日美子は耽美系だけじゃないのね。主人公が相撲を夢中で見ている。読者全員が、これはもうデートの時間に遅れるな、と思ってるとまさにそのとおりになっちゃうのですが、そこからの展開がうまくて読後感もいい。なんでも描けるひとだなあ。

 二作ともぜひ続きが読みたくなりますが、残念ながらの活動休止。のんびりと待たせていただきます。

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