『電脳なをさん』とわたくし
1994年のことですからもう16年も前の1月、わたし書店で「EYE-COM 」という月二回刊の雑誌を手に取りました。現在の「週刊アスキー」の前身となる雑誌です。
お笑い系パソコン雑誌、とも呼ばれたこの雑誌、なかなか多彩なマンガが掲載されてましたが、わたしがいちばん喜んだのは唐沢なをき『電脳なをさん』が連載されてたこと。
そのとき読んだのが「総天然色漫画」の回。ごつい顔の応援団が上は学生服、下はパンツいっちょでセーラームーンのコスプレをするマンガね。
いやもう原典を踏みにじる容赦ない下品さがなんともいえずステキ。読者はまんまるちい「かわいい」絵にだまされそうになりますが、この黒さはタダモノではない。
掲載誌が月二回刊で1ページ連載、となりますと原稿が100ページたまるのにも4年かかる計算。しかもカラー。これはもう単行本化されることはあるまい、と考えて、以後「EYE-COM 」を毎号買って『電脳なをさん』の切り抜きを集め始めました。初期の極悪ブーフーウーはひどかったなあ。
ところがそのうち連載が2ページになりモノクロになり、1996年にはまさかの単行本化。しかも1ないし2年ごとにきちんと単行本が刊行されるようになったじゃないですか。めでたしめでたし。
いつしか切り抜きもやめちゃって、月二回刊から週刊化された「週刊アスキー」も買うのをやめてしまいました。だって週刊誌ってちょっと気を抜くとすぐたまってしまうじゃないですか。記事を全部読まないと捨てない、というタイプのわたしなどには、週刊誌は鬼門なのです。
単行本になったとききちんと読めばいいしー、そっちはカラーだしー、とか考えて立ち読みだけ続けてました(←すみません)。
ところがっ。
2004年に『新・電脳なをさん』1巻が刊行されて以後、待てど暮らせど単行本化されなくなっちゃった。そもそも『新・電脳なをさん』がハードカバーからソフトカバーに変更されモノクロで刊行されたのも、出版不況のせいだったといいますから、これはもう社会的構造的な問題、だったのか。
で、6年ぶりに発売されたのがこれ。
●唐沢なをき『電脳なをさん ver.1.0 』(2010年アスキー・メディアワークス、980円+税、amazon、kinokuniya)
6年ぶりの続編となる本書は、いやもうあいかわらず、すべてがお下劣この上ないパロディとくりかえしギャグ。
16年以上の連載がすべてパロディ、というのもおそらく空前です。しかもモトネタをだれも知らなくてもかまわない。読者がついてこられるかどうかはまったく気にしない、さらに誰が何といおうと極悪ネタやシモネタでつっぱるつっぱる。
孤高にして通俗を恐れず、洗練と下品が同居するという奇跡。すばらしい。
満久道雄とエロ野茂のエロ道一直線を描いた神をも恐れぬ名作、「まっく道」もまだまだ道半ばです。このまま20年、30年と続けてください。
前巻と本書との欠落部分が連載178回分=356ページ存在する計算になります。本書が売れたらその部分も単行本化されるかもしれないそうですが、アスキー・メディアワークスは自分とこの看板連載でかつ日本マンガのタカラなんだから、欠落分をちゃんと刊行するように。
Comments
ちなみに『EYE‐COM』という雑誌、惜しいほど、よかったです。月刊『SNOOPY』くらい。(そりゃ言いすぎ?!)
Posted by: woody-aware | July 30, 2010 08:23 PM
そうですか…其の昔、“週刊少年ジャンプ”のとりいかずよし先生の「トイレット博士」の“メタクソ団”ぶりに入れ込んで居た“自分の過去”を何処か恥じて居る今の私なんて、まだまだナンデスね…。orz アァァ
Posted by: woody-aware | July 30, 2010 08:20 PM