水木しげるの少女マンガ
NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」見てますか? わたし皆勤賞です。けっこう楽しんで見てますよ。
先週は富田書房(=兎月書房)がついに倒産。えらいこっちゃの最中に長女誕生。というお話でした。あくまでもフィクションなので時空がゆがみまくってる「ゲゲゲ」ですが、これはほぼ史実どおりですね。1962年末のことです。
1964年に「ガロ」創刊、1965年には「少年マガジン」デビューですから、極貧生活もあと少しだ。がんばれ、ゲゲゲ。
さて、テレビでは水木しげるが「水木洋子」名義で少女マンガを描き、奥さんがそれを知って衝撃を受ける、というエピソードがありましたが、水木しげるが少女マンガを描いてたのはホントです。ただしテレビとは年代がずれてます。
山口信二『水木しげる貸本漫画のすべて』(2007年YMブックス/やのまん、2000円+税、amazon、bk1)というたいへんすばらしい本がありまして。amazonでは品切れですが、もしかしたらbk1では手にはいるかもしんない。
これによりますと、水木しげるが描いた少女マンガは三作。
●『雪のワルツ』24ページ、東眞一郎名義
○中村書店「バレエ4」(1959年)に収録
ゲゲゲの奥さんが見てびっくりしたのはこの原稿ですね。ただし、描かれたのは1959年ですから結婚より前です。あとペンネームも「水木洋子」じゃなくて「東眞一郎」。
ストーリー紹介によりますと、母が生き別れの娘をさがして全国を歩く、という母娘もの。しかも娘が花形バレリーナなので、バレエものであります。娘にはつぎつぎと不幸が訪れ、結局母は娘に会うことができずに終わります。
母娘もの+バレエもの+おそいかかる不幸、という典型的貸本マンガ作品のストーリー。およそ水木カラーとはほど遠い感じ。
このとき水木しげるは貸本業界に参入して二年目。前年には、スーパーマンそっくりの『ロケットマン』を描いたり、プラスチックマンそっくりの『プラスチックマン』(←そのままですが)を描いたり、トムとジェリーやバックス・バニーそっくりのギャグマンガを描いたりしてたころ。二年目になってやっと「戦記もの」という方向性が定まりつつありました。
ちなみに単行本の表紙を描いてるのは高橋真琴。
●『かなしみの道』24ページ、東眞一郎名義
○中村書店「バレエ6」(1959年4月30日発行)に収録
中村書店でもうひとつ。これも東眞一郎名義の作品で、単行本表紙を描いてるのは高橋真琴です。
こちらは終戦直後、満州から六人家族が引き揚げてくるときの不幸を描いた作品。家族がつぎつぎと亡くなり、日本にたどりついたのはひとりだけ。バレエとは関係ないお話のようです。
●『二人』25ページ、水木洋子名義
○兎月書房「夕やけ人形」(1962年)に収録
金持ちの家庭のお話。ガンを宣告された母は、わがままな娘・のり子を一人残すのが心配で、養子として素直なけい子をひきとります。母の死後、わがままなのり子はけい子をいじめますが、いろいろあって仲直り。
水木先生、数年で少女マンガ能力がアップしてる、ような気がします。ただしこういう作品では水木しげるが本領を発揮できるわけもありません。
水木洋子名義なのはこの作品。兎月書房の末期に出された単行本ですから、水木先生のところには原稿料払われてないかも。
(図版は『水木しげる貸本漫画のすべて』から)
Comments
いや、この頃は貸本マンガに描いてる時代だから、手塚治虫なんか多分、水木しげるの中に存在すらしてない状態で、ただ生きるために少女マンガを描いてたんだと思うよ。
とにかく売れる(描かせてもらえる)マンガならなんでも良かったんじゃないかね。
Posted by: 通りすがり | February 08, 2015 12:21 AM
水木しげるが、少女マンガ??
知りませんでした。
水木しげるは、こんなタッチの絵も描けるんですね。驚きました。
水木しげるのマンガといえば
非常に個性的な、おどろおどろしい絵ばかりを、見慣れていたからです。
ライバルだった手塚治虫が
「リボンの騎士」という名作少女マンガを描いてますが、
そのことも意識しての少女マンガだったんでしょうか?
Posted by: 厳選ニュース | June 12, 2013 06:12 PM
アッキーナは「時間がない」と言いだしたから、やはりつりたくにこさんをヒントにしているんですね。
しかし、佐藤まさあきとか、白土三平は全くいないことになっているようですね。
Posted by: natunohi69 | June 30, 2010 09:06 AM
いつも、更新されるのを楽しみにしています。
紹介された
山口信二『水木しげる貸本漫画のすべて』
本日、楽天ブックスから無事届きました。
こんな、凄い本を買いそびれるところでした。
ありがとうございました。
Posted by: クニ | June 21, 2010 09:57 PM
「ゲゲゲの女房」は気になってるのですがまだ未見
ところで久しぶりにお便りするのが「少女まんが」関連だから
水木さんが描いていたとは知らなかった
62年のものがいいかな
「雪のワルツ」右頁3段抜き立ち姿は「少女」1957年12月号高橋真琴さんの「のろわれたコッペリア」そのままでした
Posted by: toppy | June 10, 2010 08:52 PM
このドラマに関して
いろんなマンガ家さん達の感想が聞いてみたいですよ。
ちなみに、「パリの迷い方」作者じゃんぽ〜る西さんは...
http://lostinparis.jugem.jp/?day=20100530
Posted by: ぬ | June 08, 2010 10:30 AM