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May 30, 2010

iPad でマンガを読む(初級編)

 初級も何もわたしが初心者なだけですが。

 iPad がわが家にやってきて今日で三日目。日曜の朝に紅茶を飲みながらiPad で今日の産経新聞を読んでます。なかなか未来的な光景で、新聞はけっこうストレスなく読めますね。画面拡大が指で一瞬にできますから、とくに老眼の人間にとってはいいかもしんない。

 さて、わたしがもっとも気にしてるところはiPad が電子書籍リーダーとして実用に耐えるか、とくにマンガをストレスなく読むことができるか、という点です。

 読んでる途中で画面を縦にしても横にしてもOK、というiPad の特徴を使ったマンガの読みかた、読ませかたが誕生するのか。

 iPadの画面は、縦置きにするならA5判よりちょっと小さくてB6判よりちょっと大きい。縦置きなら日本マンガを読むには十分な大きさです。問題は横置きにしたときで、上下は文庫本とほぼ同じですが左右は文庫本を見開きにしたときよりすこし狭い。

 文庫化したマンガと同じなんだからこれでいいじゃないかと思われるかもしれませんが、やっぱ文庫はマンガにとっては小さい。ですから印刷される文庫のマンガは他の判型のものより、いわゆる内枠、基準枠ができるだけ大きくなるようにしてあります。枠の外の余白が少なめになってる。

 ところが電子書籍の原稿データはそういうことをあまり考えてないので、余白が広め。しかも最近のマンガは基準枠より外にはみ出すことが多いので、そこを読むのも楽しみ。つまりどうしても電子書籍リーダーでは絵が小さくなります。

 というわけでiPad を横にして、見開き2ページずつを表示させながらマンガを読むのはかなりつらいものがあります。iPad およびその他の電子書籍リーダーでマンガを読むには、やっぱ見開きをどうするかが大きな問題のようです。

 さてiPad でいくつかマンガを読んでみました。

●まずは無料で提供されてる、Webooks Inc. の松本大洋『吾 ナンバーファイブ 第一話』。データ+アプリケーションという両者が一緒になった形で提供されてるので、他の電子書籍リーダーで読むことはできません。

 1ページめだけはカラーで縦長の表紙イラスト。ここは当然iPad を縦に持って読んでます。ページをめくると、ここからはこの作品、見開き2ページがひとつのデータとなってます。

 単行本ではこの部分カラーなのに、モノクロデータかよー、というのはともかく。

 おそらくiPad に共通した仕様として、まず「その方向の画面で見られる最大の画像」を表示することになってるらしく、縦画面に見開き2ページがはいりますから、こりゃ絵が小さい。

※とりあえずこの文章中では、この「その方向の画面で見られる最大の画像」を「等倍画像」と表現させていただきます。

 だもんでiPad を横にして、横画面で見開き2ページを見ることになります。

 一応は読めるのですが、松本大洋のあの絵を文庫本サイズで読むのはつらいので、読者は当然拡大して読むことになります。拡大して読むならばということで縦画面に戻す。拡大は指で簡単にできますからそれで読み進み、さて次の2ページ、というところになって、行けない。

 なんとこのアプリケーションでは、「等倍画像」に戻さないと次の2ページに移れないのですね。いちいち画像を小さくしてからページをめくらなきゃならない。こんなことができるかっ。というわけでこのアプリまともに読めません。

 しかも拡大縮小をくり返してると動作が不安定になって、突然落ちます。無料アプリとしても完成度低すぎ。


●次はアメコミ。「Marvel Comics 」とComiXology の「Comics 」は基本的に同じアメコミ用のリーダーです。利用者登録も共有してます。両方とも無料でダウンロードできますし、無料で読めるアメコミもけっこう多い。

 アメコミはもともと細かく描き込んだB5判が基本で、しかもセリフやキャプションの描き文字が小さい。1ページを縦長画面に表示させて、読めないことはないのですけどね。

 当然拡大させながらふつうに読むこともできるのですが、このアプリケーション、読者を誘導するモードも持っていて、むしろそっちが主流。

 画面のあるコマをダブルタップするとそのコマが拡大されて表示されます。基本1コマが表示され、その他の部分は真っ白か真っ黒。横長のコマだったりすると画面内のはしっこは無視されてしまったり、あるいは2コマ表示されたりもします。画面の右端をタップすると次のコマへ、戻るときは左端をタップ。

 画面の右端をタップすると次のコマの人物のアップへ。その画面の右端をタップするとカメラが上方へティルト・アップしてその人物のフキダシが現れセリフが読めるようになる。無音→セリフというマンガになかった時間要素を組み込んだ「演出」つきなのです。つまり日本のケータイマンガの読ませかたと同じです。

 ただしケータイより画面はずいぶん大きいですし、コマ移動はカメラ(=読者の目)が移動するようなアニメーションつきで、次ページに移るときはオーバーラップ。臨場感はケータイマンガよりずいぶんあると見たがどうでしょうか。

 アメコミにも見開き2ページが1コマというような大きな絵がありますが、たとえば『Witchblade #80 』(無料)あたりではこれを5分割して見せ、さらに最後に全体像、計6回かけて1コマを見せるような演出もしてます。
 
 それと英語が得意じゃない読者にとっては、一気にどわっとローマ字が押し寄せてくるより、コマごとに少しずつ読むべき文章が現れてくるほうが読みやすい。

 思わずジャック・カービー御大のふっるい「ファンタスティック・フォー」とか買ってしまいました。


●さて、iPad に期待してたことのひとつとして、「手塚治虫大全集DVD-ROM 」、これをなんとか活用できないか、ということがありました。

 講談社から出版された講談社全集版400巻をDVD8枚におさめたもの。2001年発行で何と12万円もしました。1巻あたりになおすと300円ですから安いといえば安い。

 いやところがこれがね、椅子に座ってPC画面でもってマンガを読むという行為にはなかなか無理がありましてね。手塚のエッセイとかを引用するときに引っぱり出して見るくらい。死蔵してるとはいいません。いいませんが、12万円ぶんは読んでません。

 そこでnagisa の電子書籍リーダー「i文庫HD 」(現在700円)。

 「i文庫HD 」にはサンプルとして『アニマル★ミラクル』という数ページのマンガがはいっています。ただしこれは横向き画面にして見開き2ページを表示して読めるように、余白をできるだけ少なくする、という微妙なテクニックを使ってるのが気になります。

 これで手塚全集を読んでみよう。

 まずDVD のPDF ファイルをPC にコピー。次にiPad とPC をUSB ケーブル経由で同期させ、iTunesを使って「i文庫HD 」にファイルを転送しました。

 おお、まずは本棚にずらっと並んだ書影が壮観。横画面にして見開き2ページを表示させると、ページめくりのアニメーションも問題なく、どんどん読めるじゃないですか。

 ただし気になるのはやはり絵の大きさ。余白が大きくて文庫サイズではきびしい。そこで縦画面にして、1ページがちょうど画面にはいるように画像を2倍に拡大。PDF ファイルのせいか拡大して「ピントが合う」まで数秒かかるのがちょっと難です。

 そして見開き2ページを読み終わって次のページへ。ここで困ったことに次の画面では、縦画面に見開き2ページがすべて表示されるよう小さな「等倍画像」に戻ってしまうのですね。

 つまり縦画面で読み続けるには、2ページごとに画像を拡大しなきゃならない。これは手間です。

 アプリケーションとしては安定していて本棚も美しくてステキなのでもったいない。なんとか拡大画像のままページめくりができる仕様を追加してくれないかなあ。


●他の電子書籍リーダーも試してみよう。というわけで次は「CloudReaders 」(無料)。

 これも「i文庫HD 」と同様の方法でファイルをiPad に転送します。こちらは本棚には画像はなく、ファイル名が並ぶだけであっさりしたもの。手塚全集のPDF ファイル名は数字だけですので、転送前に自分でタイトル書きかえておかないと何やらわからなくなりそう。

 こちらも横画面では見開き2ページが表示されます。これは「i文庫HD 」と同じ。ただし「CloudReaders 」のほうではファイルの上下長が最適化され画面に合わされていて、左右は少しだけ切れます。プリセットでは左開きですが、これは簡単に右開きに変更できます。

 縦画面にするとどうかというと、おお、こっちでも上下長が最適化されているので、画面にマンガの1ページが表示される。そしてページめくりをしていっても、拡大縮小の手間いらず。これだよわたしが求めていたものは。

 ただし動作がやや不安定で、ページめくりのときにブラックアウトして、次の画像が出るまでに時間がかかることがあります。あと見開き2ページ1コマが登場したときは回転させ横画面にして読むことになりますが、この回転のアニメーションが他ソフトに比べなめらかじゃなくて、ちょっと気持ち悪いかな。

 望む安定化。しかしとりあえずは「CloudReaders 」で手塚全集を持ち歩くことにしました。いずれにしても手塚全集、iPad 上で10年目の復活なるか?

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Comments

> 中国製とかインド製が中心に成ったりなんかして。(苦笑)

iPadは中国製ですよ。
http://www.47news.jp/CN/201006/CN2010060301000370.html
たぶん他の電子ブックもそうでしょう。

Posted by: かくた | June 06, 2010 02:12 PM

 うーん、全然iPadには関心が無かったんですけど、色々可能性が有りそうなんですねぇ…。
 んな世界、何時頃庶民の手に届く事に成るのかなぁ。

 1979年に開発当初500万円もした「日本語ワープロ機」が其れから10年もしないかする内に10万円クラスに成った事を思い出しますが…。(一番安い日本語ワープロ専用機って小窓の付いた¥29800円だったような記憶が有る。)
 アイパッド系の形式のブックリーダーとか多目的端末が一番安く成るのはどの位の価格帯なのかしらん…其れも何時頃?

 中国製とかインド製が中心に成ったりなんかして。(苦笑)

Posted by: woody-aware | June 04, 2010 08:28 PM

iPadを早々に入手して「使い勝手の初心者レビュー」なんて「羨ましいにも程がある」エントリをアップなどされちゃったら、悪気はないのに、つい意地悪したくなっちゃう、じゃないでしょうか~~~~~。

嗚呼、うらやましいったら、もう。

ネクスト・レビュー、待ってなんかいないんだから!!

Posted by: トロ~ロ | June 03, 2010 10:25 PM

すいません 笑。

Posted by: はんてふ | June 02, 2010 08:13 AM

買ったばかりなのにフラッシュメモリの寿命の話なんかしないでくださいよ~。

Posted by: 漫棚通信 | May 31, 2010 10:08 PM

>寿命を減らせて(保存して)書籍を持ち歩くよりは、書籍が閲覧できる状況(ネット環境)が常に快適である必要がありますね。

実際は不明ですが、ネット接続はsafariとしても
閲覧のたびにキャッシュを作成するから(デフォ設定)
どうなんでしょうね。

保存してノロノロ読んでいるのと、
頻繁にネットを見てキャッシュを作るのと、
どちらがフラッシュメモリを消耗させるんだろう。

Posted by: はんてふ | May 31, 2010 09:51 PM

iPadはフラッシュメモリを使用しているので、寿命を減らせて(保存して)書籍を持ち歩くよりは、書籍が閲覧できる状況(ネット環境)が常に快適である必要がありますね。解像度が1024×768なので、本を読むだけなら実際のデータ転送量は少なくてすむかもしれません。

そういえばJeff Millsの新譜「The Occurrence」の解説書に手塚「火の鳥」の絵が使われています。このCD、ラベル面がアナログレコードになっていることでも話題です。

Posted by: くもり | May 31, 2010 02:59 PM

他に漫画があるところでは、
Amazonのキンドルショップ、
ebookJapanなどかな。

ebookJapanで、男の星座、漫画家残酷物語を
購入。
ebookはブラウザはiPhone用ですが、
解像度問題なし。

Posted by: はんてふ | May 30, 2010 08:40 PM

このブログを読んだ出版社の編集者達が、古典的な漫画作家の旧作全集@DVD(BD?)の出版(配信?)企画書をいっせいに作成していることでしょう。
あと、マンガ・リーダーの開発企画も、どこかの誰かが行っているかもしれません。出版各社が雑誌の紙を統一化したみたいに統一ソフトで開発するのが良いのですが。
それから、日本の白黒マンガに色をつけよう、コンテストなんて素敵かも。PCで色彩加工して投稿して、最優秀者には著者または著作権者お墨付きで売り上げの05%~1.0%が入るとかで。おお、色彩設計専門作家@ipadですな。

流行りモノにも福がある、になるかも。

Posted by: トロ~ロ | May 30, 2010 07:49 PM

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